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中間選挙と米国株

(画像=vchalup/stock.adobe.com)

中間選挙とは

 2022年はフランス大統領選挙(4月に実施済み)、日本の参議院議員選挙(7月)、中国共産党大会(秋に実施見込み)など、世界的に重要な政治関連イベントが実施されます。その中で特に注目度が高いのは11月8日に行われる米国の中間選挙でしょう。

 中間選挙とは、4年に1度の大統領選挙の中間の年に行われる連邦議会選挙のことです。中間選挙では、上院の議席の3分の1(2022年選挙は100議席中34議席)、下院の全議席(435議席)が改選されます。現在、バイデン大統領が所属する民主党は上院100議席中50議席(民主党会派に属する独立系議員2名を含む)、下院435議席中220議席と、上院は共和党と拮抗、下院は過半数(218議席)を占めています。上院では、法案の賛否が拮抗した場合に上院議長を務める副大統領(現在は民主党のハリス氏)が票を投じることとなっていますので、上院でも民主党は多数党の地位にあります。

中間選挙では現職大統領が所属する政党が議席を減らす傾向

 今回の中間選挙は連邦議会の勢力図を塗り替えることになりそうです。中間選挙は大統領の信任投票という側面もあり、大統領が所属する政党が議席を減らす傾向があります。全議席が改選される下院でこの傾向が強く、過去にはオバマ元大統領(民主党)のもとで実施された2010年の中間選挙で民主党が下院で63議席を失い、少数党に転落したこともあります。

 今回の中間選挙は、2021年8月末のアフガニスタンから米軍撤退時の混乱や記録的な物価上昇(インフレ)でバイデン大統領の支持率が低迷していることから、民主党は中間選挙で議席数を減らし、上下院のいずれか、あるいは両院で多数党の地位を共和党に明け渡すこともありうるでしょう。また、バイデン大統領と民主党指導部は党内をまとめきれず、2兆ドル規模の人的投資および気候変動対策プラン「ビルド・バック・ベター法案」が頓挫するなど、思うように政策を推し進めることができていません。今回の中間選挙で当選した議員が就任する23年以降、政権運営は厳しさを増すことが予想されます。

米国の株価と選挙の関係

 米国の株価と選挙には、理論的な説明が難しいものの経験則としての株価の動き「アノマリー(anomaly)」が存在することがよく知られています。例えば、大統領選挙の前年は株価が上昇しやすいというものです。これは、現職大統領が翌年の大統領選挙をにらんで景気浮揚に注力するためとされています。実際、1980年~2021年の42年間で米国株(S&P500指数)の年間騰落率をみると、大統領選挙の前年の平均騰落率は+15.7%と42年間の平均+10.7%を上回っています。

 一方、中間選挙の年はどうだったかというと、平均騰落率は+5.6%と42年間の平均を下回り、米国株の上値が重い年とみることができます。はっきりしたことは分かりませんが、大統領が属する政党が中間選挙で議席を減らし、政権の政策推進力が落ちるとの見方が影響したのかもしれません。

 2022年になってからの米国株は、ロシアのウクライナ侵攻や米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締め加速警戒の影響を受け、今のところ中間選挙はさほど材料視されていないようです。とはいえ、中間選挙が行われる11月8日が近づくにつれて、新たな懸念材料として意識される可能性に留意すべきでしょう。

選挙アノマリーでは、2023年の米国株は好パフォーマンスの期待も

 ただ、中間選挙の年におけるS&P500指数の平均推移をみると、10月頃を底に急反発する傾向があることも分かります。要因としては、中間選挙で大統領が属する政党が議席を減らす可能性が10月頃までには株価に織り込まれることなどが考えられます。また、中間選挙の翌年は大統領選挙の前年でもあり、10月頃が景気浮揚策への期待が高まるタイミングなのかもしれません。

 今後の米国株の見通しを考えるうえでは、ウクライナ情勢とインフレに関するニュースだけでなく、米国の中間選挙に関する情報にも目配せすると、相場転換のきっかけをいち早くつかむことができるのではないでしょうか。

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