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追加緩和を見送った日銀

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(写真=PIXTA)

金融市場の期待は高かったが、結果はゼロ回答に

 4月27日~28日開催の日銀金融政策決定会合では、金融政策の現状維持が決定されました(熊本地震の被災地の金融機関を支援するための資金供給を導入することは決定)。

 事前の観測報道では、日銀から金融機関への資金供給に対してマイナス金利を適用するというものもあり、金融市場では追加緩和期待が高まっていました。しかし「ゼロ回答」に終わったことで、会合の結果が発表された後は、急速に株安、円高が進みました。

 今回の決定が現状維持となった背景について、日銀の黒田総裁は記者会見で、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」が実体経済や物価に波及していくにはある程度時間が必要であるため、今回の会合では政策効果の浸透度合いを見極めることが適切と判断したと述べています。

 一方、今回の会合で発表された経済・物価情勢の展望(展望レポート)では、消費者物価の見通しが下方修正されました。また消費者物価の前年比が「物価安定の目標」である2%程度に達する時期は、2017年度中になると予想されるとしています。1月時点の2017年度前半頃という見通しから、さらに後ずれしました。

 これまでは後ずれの理由は「原油価格の下落」であったのが、今回「成長率や賃金上昇率の下振れ」となったことが問題です。

 原油価格の想定は1月時点から変化していません。つまり、日銀が主張する物価の基調の改善ペースがこれまでの見通しほどではないということなのです。こうした理由による見通しの後ずれであれば、本来、追加緩和をしてもおかしくない状況といえます。

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 それにもかかわらず、追加緩和を見送ったことを考えると、前述のように、これまでの政策効果を見極めることに加えて、(1)できるだけ早期に物価目標を達成するという姿勢は崩していないものの、金融政策だけで物価を押し上げることには限界がある、(2)国債買い入れの量的な限界やマイナス金利の副作用が意識されている――などから、なるべく追加緩和は温存しておきたいという意識が日銀に働いている可能性が考えられます。

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