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定年まで働く必要はない!? アーリーリタイアのススメ (前編)

(写真=Getty Images)

長寿社会の日本。1億総活躍が叫ばれ、企業の定年延長や定年後継続雇用の制度が広がる一方で、退職金の割り増し等によって早期退職を促す企業も多くあります。さまざまな理由で会社勤めを切望する、あるいは固執せざるをえないケースを除き、一足早く会社から解放される早期退職は魅力的な制度といえます。とはいえ、ほとんどのサラリーマンには「退職後も生活の豊かさを維持できるか」「年金受給までに必要な資金を確保できるか」等、不安な要素もあります。

2年前に、定年前の早期退職を実行した科学技術ライター・コンサルトの石田克太さんに、当時何を考えて決断したのかを振り返っていただきました。

「うらやましい」「大丈夫?」…友人らの4つの典型的な反応

2016年の3月31日、私は勤めていた会社を退職しました。当時56歳で、定年まで約4年を残しての早期退職。学生生活を終えてすぐの24歳で新聞社に就職し、30歳で出版社に転職して2016年にこの会社を辞めるまで、ちょうど32年間の会社員生活でした。

「早期退職するよ」。そう話した友人や同僚らの反応は、おおよそ次の4パターンに分かれました。

①「うらやましい! 自分も本当は定年まで勤めたくないが、会社をやめられない…」
②「潮時だと思う。余力を残したいい時期に決断したね。自分が辞めるときに、退職時や年金切り替え手続き等について、いろいろ教えてほしい」
③「そんなに早く辞めてどうするの?! 毎日退屈で耐えられないのでは?」
④「年金受給までどうするの? そんなに貯金があるの?」

こうした反応に、私は「ああ、やっぱりその点が気になるよね」と思ったり、「そんなことを心配する人がいるんだ」と少し驚いたり…。

①の反応は、扶養しなければならない家族がいたり、子どもがまだ独立前で学費の援助が必要であったりするケースが多く、独身で扶養家族もいない気楽な身の上の私に対して、一種の羨望もあったようです。

②は内心で「定年前の早期退職」を決意し、タイミング、つまり「会社の辞めどき」を見計らっている人たち。私と同年代の友人はそれより上の世代と比べ「定年まで勤める」という意識が希薄になっています。

③の感想を耳にしたときは少し驚きました。私は比較的多趣味なので、これまでの人生でも「退屈」を感じた時期はまったくありません。それに友人らも、私の「会社を辞める」イコール「仕事を辞める」ではないことは理解しています。おそらく「会社を辞めれば退屈になるのでは?」と感じる人は、仕事を含めた会社員としての生き方が、(内容的にも時間的にも)自分の人生で非常に大きなウエートを占めているのでしょう。そうした生き方は、幸せであることも不幸であることもあるでしょうが、少なくとも私はそういうタイプの人間ではありませんでした。

最後の④が一般的な反応なのかもしれません。「今の会社での仕事に特別強いこだわりがあるわけではない。チャンスがあれば早期退職も考えたい。しかし長寿社会で、将来の年金制度にも不安がある日本で、そんなに早く会社を辞めると、生活のレベルをかなり落とした暮らし方を、何年も強いられるのではないか?」。それはごく自然な不安であり、当時の私もそのように考えていました。

しかし私は早期退職を断行しました。その時に重要な判断材料としたのが「退職後の人生の期待値」という考え方でした。

「期待値」は(「ゲイン(利益)」×確率)の総和で算出する

「期待値」とは、本来数学の確率論の考え方です。専門的には「確率変数の実現値を確率の重みで平均した値」となにやら難しいですが、要するに「ある行動がうまくいく確率を考慮して、平均的にどれくらいのゲイン(利益)が“期待”できるか」ということです。

人生における「行う・行わない」という選択では、多くの人が(意識しているかどうかは別として)、努力や出費などの「行動にともなうコスト」に対して、どれくらいの確率でその行動が成功につながり、成功した場合のゲインがどの程度の大きさかを思い巡らして判断しています。ある人は直感的に、またある人は熟考して、判断のよりどころとしているはずです。

もちろん人生における行動とその結果としての「ゲイン」には複雑な条件・状況が絡み合うので、宝くじを買うときの期待値のように単純な確率計算では推し量れません。「コスト」「ゲイン」として考慮すべき要素も、複雑であったり抽象的であったりするでしょう。

しかし「定年前の早期退職」という行動を考える場合、そしてそれをとりあえず「自分の人生の生きがい・楽しみ」という側面で判断する場合、考慮すべき要素は比較的限られていて、その期待値を推し量ることで有益な判断材料とすることができるはずです。私のケースは最もシンプルでした。考慮すべき主要な要素の変数は、それぞれの「生きがいでの喜び(ゲイン)の大きさ」と「その喜びが得られる確率」であり、これは比較的多くの人にとって「退職後の期待値」を考えるうえで、ベースになると思われます。

ここで重要なことは、2つの変数が状況に応じて刻々と変わっていくことです。その理由は、いうまでもなく人生の残り時間が短くなっていき、最期(死)に向かって確実に老いていくからです。

図 「生きがいでの喜びの大きさ」は「健康」や「お金」の大きさに比例する

50歳になったばかりの頃、私の健康状態は30代、40代の時とそれほど変わりませんでした。当時すでにマスコミ等で長寿社会現象が取り上げられ、70歳、80歳になっても健康そうな高齢者の映像に自分の姿を重ね「長い余生を充実させるために1日でも長く、安定した収入を得られる会社勤めを続けて、老後に備えなければ」という意識を持っていました。しかし…。

53歳を過ぎた頃から、肉体の衰えが急速に進みました。飛蚊症(眼球内にゴミが浮かぶ症状)によって視力の障害が進み、以前から高めだった血糖値はイエローゾーン(境界型糖尿病領域)とレッドゾーン(糖尿病領域)を行ったり来たり。それまではダイエットによる減量によって改善していたさまざまなバイタルの数値も、ほとんど改善しなくなる等、体のレスポンス低下も際立つようになりました。

自分がそれまで漠然と抱いていた「元気な高齢者としての将来像」は崩壊し、“体力・気力がかなり落ちたお年寄り”としての自分の姿がちらつきはじめたときに、余生の「期待値」の最大化を真剣に考えるようになりました。その時、まず行ったのは「生きがい」の“棚卸し”でした。後編では、具体的な「期待値」の“算定”方法から、私が早期退職を決断したことで気づいたことについてお伝えします。

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab.
科学技術ライター・コンサルト 石田克太

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

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