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確定申告で税金の勉強をしながら還付金を手にしよう(前編)

(写真=Thinkstock by Images)

 会社員だからといって、決して確定申告と無関係ではありません。会社員にとっての確定申告のポイントをお教えします。
前編では「医療費控除」や、2017年に新設された「セルフメディケーション税制」でお得になるケースを紹介します。

確定申告は1年間の所得税の精算。でも会社員だから確定申告なんて関係ないと思っていませんか? 確かに給与所得者は年末調整が確定申告の代わりになるので、基本的には確定申告は不要です。
ただ、確定申告により払い過ぎた税金を取り戻せるケースもあります。該当するケースがあれば還付金を得るチャンス到来! 社会保険料の負担等で手取りがなかなか増えない厳しい家計環境のなか、数千円、数万円、場合によっては数十万円の還付金が得られるかもしれないのですから、少々の手間は惜しんでいられません。
還付金がはいったら欲しいものを買ったり、家族で食事に行ったり、楽しみのために使うのも手。会社員は税金が給与から源泉徴収されているため、税金のことにうとくなりがちですが、 税金の勉強をしながらお小遣い稼ぎもできるという感覚で確定申告にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

2017年にこんなことがあった人は確定申告するとお得!

まずは、次の【1】~【10】をチェック。当てはまるものがあれば、確定申告で税金が戻る可能性アリです。

【1】年間にかかった医療費が10万円を超えた
→(1)「医療費控除」へ
☆病院でかかった医療費以外にも控除対象があります。

【2】ドラッグストア等で買った特定の医薬品代が年間1万2000円超かかった
→(2)「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」へ
☆2017年に新設された医療費控除の特例。医療費控除より受けやすいです。

【3】今年、住宅ローンを組んでマイホームを買った。または、住宅ローンを借り換えた
→(3)「住宅ローン控除」へ(後編)
☆住宅ローン控除は転勤しても利用できる場合があります。

【4】ふるさと納税をした
→(4)「寄附金控除」へ(後編)
☆「ワンストップ特例」を利用した人は確定申告が不要。でも、確定申告しないと損をする場合があります。

【5】特定口座(源泉徴収あり)を複数持ち、トータルでは儲かったけれど損失を出した口座もある人
→(5)「損益通算」へ(後編)
☆特定口座(源泉徴収あり)は確定申告不要ですが、しないと損をする場合があります。

【6】特定口座(源泉徴収あり)を持ち、トータルで損をした人
→(6)「損失の繰越控除」へ(後編)
☆確定申告をすると2018年以降の確定申告で得をする場合があります。

【7】年末調整後に結婚した、70歳以上の老親を扶養家族にした
→(7)「年末調整に間に合わなかった控除」へ(後編)
☆2017年10月以降にiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)を始めた場合も確定申告しないと損になります。

(1)医療費控除

《それって何?》
1年間(1月~12月)の医療費の自己負担がおおむね10万円(※1)を超えると受けられる
所得控除(所得から差し引ける金額)。対象になる医療費は、基本的に医師や
歯科医師にかかったときの診療費や治療費、治療に必要な医薬品代などです。
※1 所得が200万円未満の場合、所得金額×5%

【Point 1】歯科の保険外の治療費や不妊治療にかかった費用も対象
歯科で保険適用外の治療を受けると高額な費用がかかる場合がありますが、1本数十万円というインプラントも含めて一般的な治療なら医療費控除の対象になります。
整骨院や鍼灸院、カイロプラクティック等での治療費は、施術者が国家資格(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師等)を持っていれば控除対象。不妊治療や人工授精の費用、海外旅行中にかかった医療費も対象になります。

【Point 2】保険金をもらったときに損をしないためには?
入院して医療費の自己負担が8万円、生保の医療保険の入金給付金が10万円だったとしましょう。医療費8万円から入院給付金10万円を差し引くと、引き切れずに2万円の差額が残ります。これを他の医療費から差し引く必要はありません。もらった給付金等は、その対象となる病気等の医療費だけから差し引けばよいというルールになっているからです。知らずに他の医療費から差し引いてしまうと、それだけ医療費控除額が減ってしまうのでご注意を。

(2)セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)

《それって何?》
1年間(1月~12月)に特定の医薬品(医師の処方薬から市販薬に転用されたスイッチOTC医薬品)を1万2000円超購入した場合に受けられる医療費控除の特例で、2017年分から適用。2021年分までの期間限定措置です。

【Point 1】医療費が10万円超でなくても利用できる
新設のセルフメディケーション税制は、医療費が10万円超かかっていなくても控除が受けられます。「(1)医療費控除」で挙げた原則の医療費控除よりハードルはかなり低めなのでチャレンジを。控除額の計算にはドラッグストア等の領収書(レシート)が必要。対象医薬品の商品名に目印が付いているはずなので、それを基に計算しましょう。

【Point 2】対象の医薬品を年間1万2000円超購入するだけではダメ
セルフメディケーション税制を受けるには、申告をする人が申告対象の年(2017年分なら2017年中)に、健康の保持増進・病気予防を目的とした一定の取り組みをどれか一つしていることも要件です。会社員の場合は勤務先で受ける定期健康診断などがそれに当たります。インフルエンザ予防接種も取り組みに該当します。

Column

原則の医療費控除とセルフメディケーション税制、有利な方を選ぶ目安は?
原則の医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらか一つを選ぶことになっているので、有利な方を選びたいものです。その目安を示したのが下図。医療費が10万円以下ならセルフメディケーション税制、18万8000円超なら原則の医療費控除が有利です。

図 原則の医療費控除とセルフメディケーション税制の選択の目安

A:セルフメディケーション税制の対象医薬品購入費(原則の医療費控除の対象にもなる)
B:(A)以外の医療費

(A)+(B)

どちらの控除を選ぶ?

1万2000円以下

セルフメディケーション税制も原則の医療費控除も適用外

1万2000円超
10万円以下(※2)

セルフメディケーション税制を利用

*ただし(A)のみで1万2000円超であること(原則の医療費控除は適用外)

10万円超
18万8000円以下(※3)

(A)と(B)の比率により有利・不利が異なるので計算のうえ判断

18万8000円超(※4)

原則の医療費控除が有利

所得が200万円未満の場合は以下の通り。

※2 10万円以下ではなく、所得の5%以下。
※3 所得の5%超~所得の5%+8万8000円以下。
※4 所得の5%+8万8000円超。

*取材協力・監修 税理士 望月茂

>> 確定申告で税金の勉強をしながら還付金を手にしよう(後編) に続く

 

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
ライター 萬 真知子

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

 

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