【★基礎からわかる「テクニカル分析」入門5-5】
移動平均線を応用した「ボリンジャーバンド」を使って、売買タイミングを考えてみましょう。
ボリンジャーバンドとは?
ボリンジャーバンドとは、アメリカのジョン・ボリンジャーが考案したテクニカル指標で、
移動平均線に「標準偏差」を盛り込み、上下にかい離させたバンドです。
標準偏差とは、データの散らばり具合をあらわす値のことです。統計学などでよく使われ、単位として「σ(小文字のシグマ)」が一般的に使われます。
同じような値が多いと標準偏差が小さく、ばらつきが大きいと標準偏差(σ)は大きくなります。平均を中心に全体の約68%のデータが入る距離を±1σ、約95%が入る距離を±2σと表します。
これをチャートに置き換えてみると、移動平均線を中心(0)とし、ある期間の約68%の終値が入る距離を±1σ、約95%が入る距離を±2σと考えることができます。
(一般的に中心線となる移動平均線は20~25日線を使い、算出にあたっては「終値」だけでなく、「高値・安値・終値の平均値」を用いる方法もあります。)
通常のチャートでは価格の大半(約95%)が±2σのバンド内で推移し、バンドの域外に出た異常値を、逆張りの指標としています。
一方で、“終値”がバンド(例えば2σ)をブレイクした場合は、トレンド発生とみなし、ブレイクした方向へ順張り(トレンドフォロー)することが有効とされています。
ボリンジャーバンドの特徴
ボリンジャーバンドはレンジ相場では頻繁に売買シグナルが発生しますが、1回当たりの収益は小さくなるといわれています。
しかし、終値がバンドをブレイクした場合、大きなトレンドが発生し、1回当たりの収益は大きいともいわれています。
知らない人が多い!? ボリンジャーバンドの本当の使いかた
価格の大半は標準偏差から算出されたバンド内に収まるとされ、逆張り指標として世の中に広まったボリンジャーバンドですが、実は考案者のジョン・ボリンジャーは前者の逆張り指標ではなく、後者の順張り指標として活用することを推奨しています。
彼いわく、「ボリンジャーバンドに触れたことがシグナルではない」とし、「バンドの外側に終値が位置していることはトレンド発生もしくはトレンド継続とし、反転シグナルではない」とボリンジャーバンドは順張り指標であることを明言しています。
(余談ですが、9年前に彼から頂いた名刺にも、同バンドが順張り指標であることを明記しています)
これをふまえると、ボリンジャーバンドを逆張りの指標としてのみ使用するのではなく、順張りの指標としても併用することが、より有効であるといえるでしょう。ボリンジャーバンドの真価は順張りのときこそ発揮されるのです。
逆張り指標としてのボリンジャーバンド
では、ボリンジャーバンドを逆張りの指標として活用した場合の、ボリンジャーバンドの実例をみてみましょう。
この実例では、中心線を25日線とし、レンジ相場となっています。
標準偏差である±2σは、価格の約95%の範囲を規定する数値です。
そのため、価格の大半はバンド内で推移すると考えられ、-2σを下限(サポートライン)、+2σを上限(レジスタンスライン)ととらえ、逆張り指標とする一般的な活用法です。
順張りの指標としてのボリンジャーバンド
次は、ボリンジャーバンドを順張りの指標として活用した場合の、ボリンジャーバンドの実例です。
今回も中心線を25日線としています。
標準偏差である±2σは、価格の約95%の範囲を規定する数値であることから、バンドを逸脱する確率は約5%(上下に約2.5%ずつ)とします。
この約5%(すなわち20回に1回)の確率で終値がバンドをブレイクするということはまれであり、それゆえ強いトレンドの発生とみなし、バンドがブレイクした方向に順張りする、という活用法です。
前述のとおり、考案者のジョン・ボリンジャーも後者の順張りでの活用を提唱しています。
★このとき注目するポイントは3つ。
【スクイーズ】【エクスパンション】【バンド・ウォーク】です。
①まず、もみ合い(レンジ相場)が続くとバンドは縮小(狭く)していきます。これを「スクイーズ」と呼びます。
これが、“トレンド発生前の予兆”を示唆します。
②次に、終値がバンド(例、2σ)をブレイクすると強いトレンドが発生したシグナルとなり、同時にバンドが拡大します。
これを「エクスパンション」と呼びます。
③さらに、ブレイクした側のバンドに沿って、しばらくトレンドが継続します。これを「バンド・ウォーク」と呼びます。
ここからは、トレンドフォローが有効です。
大きな収益機会をとらえるには
最後は、大きな収益機会をボリンジャーバンドで見つける例です。
一見レンジ相場で有効な逆張り指標にみえるボリンジャーバンドですが、
逆張りで小さな収益機会のみを求めていると、バンド・ウォークの発生に気づかず、大きな収益機会を逃してしまうかもしれません。
終値がバンドをブレイクしてトレンドが発生したのち、バンド・ウォークによってしばらくトレンドが継続する局面で、いかに収益を拡大することが重要なのか、一目瞭然でご理解いただけるかと思います。
したがって、レンジ相場での小さな収益機会よりも、トレンド相場の大きな収益機会をとらえることが重要なポイントです。
ここで注意しなければならないのが、やはりトレンドの有無や強弱となります。
そのため、移動平均線かい離率(エンベロープ)やボリンジャーバンドだけで偏ったアプローチにならないように、トレンドそのものの有無を推し量る方向性指数(DMI)や、トレンドの強弱を推し量るMACDなどを併用して、複数のテクニカル指標をバランスよく併用することが重要となります。各指標についてはまた次回以降、順番に解説していきますのでお楽しみに!
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