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株価急落の“真犯人”は誰? ― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

こんにちは、兜町カタリスト・ストックVOICEキャスターの櫻井英明です。
40年近く株式市場の現場でその動きを眺めてきました。
そんな視点から株式市場で気がついたことや多少のウンチクをお伝えしていこうと考えています。よろしくお願いします。

「格言」

1月から2月初旬にかけての日経平均株価は2週間で約2,500円の下落となりました。
下落率では約13%。日経平均株価が8,000円の時に3週間で1,000円下落したら「急落」といったかどうか。
もちろん下落は下落なのですが結構微妙なレベルのような気がします。
時と場合によって肌感覚は異なるという好例なのでしょう。
表面だけを見ていると市場の課題というのはだいぶ違った印象を残すことになります。

下落相場に遭遇すると脳裏をよぎる格言群があります。
例えば、「危機のときにはいつも、その部屋にいない誰かのせいにされる」。
これは今回も起こりました。
金利の上昇、VIX指数の急騰。
アメリカのインフレ進行やリスクマネーの撤退などがいわれましたが、結局は元の木阿弥チックな展開。
「米10年債利回りが2.75%を超えた」というのが下落当初の理由でしたが、その後2.9%まで上昇しても株価は反発。
株式市場では、ときおりツジツマの合わないことが生じるものです。
大きな流れでは、金利上昇⇒株安の構図はあるのでしょうが、今の水準ではまだそれほどの域でもないのでしょう。
VIX指数も大きく取り上げられましたが、結局、落ち着いてしまいました。
下落の原因をつくった犯人や理由を市場関係者などが類推します。
そして時間が経つとその推理がほとんど間違っていたことに気がつくということは、よくあるものです。
「株価の暴落は、実体価値以上に上げ過ぎていた相場が下げるべくして下げただけ。
きっかけは何でもよかったというケースが少なくない」
これが曖昧ながらも結構うなずける理由でしょう。
「お金は儲けたり失うものではない。手品のように手から手へ渡るだけだ」
そう割り切れば、案外わかりやすいのかもしれません。
「他人の売り買いではなく自分で創れ」というのも重要。
他人シナリオに乗るのではなく自主性を持った自分シナリオの構築こそが必要なのです。

「役者」

米国株の下落に関してのニューヨーク連銀のダドリー総裁のコメントは次の通り。
・株価変動や仮想通貨に投資する金融商品について市場安定へのリスクという点から監視する必要がある。
・1987年のブラックマンデー当時は、ポートフォリオ・インシュアランスと呼ばれる商品が負の連鎖を惹起。
・ 世界的な株安につながった。
・株式市場が過去数日間、やや上下に振れている。
・ボラティリティーが上がることで投資家は株式を売るのかという問題がある。
・もしそれが本当であれば、それは将来においても株価の振れ要因となり得る。
金融機関に対する規制強化は本来はネガティブ要因ですから、これは見逃せなかったのでしょう。
一方で、共和党・民主党両党の指導部は今後2年間の予算方針を巡り超党派で合意。
国防費や一部政府支出の上限引き上げやインフラ整備予算は、すんなり議会を通りました。
もしも株の急落局面でなかったら債務上限期限に向けて議会がここまで努力したかどうかは微妙なところでしょう。
「絶妙のタイミングの急落だった」という声も聞こえました。
トランプ米大統領は「経済が好調なのに株安になるのは大間違い。昔は好材料が伝われば株価は上げた。今では好材料が伝わると株価は下げる。大間違いだ。経済に関してこれだけ良いニュースがあるのに」とコメント。
結構役者という印象が残りました。

「真摯な質問」

先日、福岡で若い男性からの真摯な質問を受けました。
「株式投資のために何の勉強が必要ですか?」
出されたメモには「経済あるいは経済学、チャート、業績、その他」と書かれていて、
経済にはバッテンが付されていました。
経済学もしかり、重要なファクターは、もちろんたくさんあります。
ただし、チャート(罫線)などのテクニカル分析では、シグナル通りに相場が動かないこと(騙し)がありますし、業績といっても将来を見通すことは非常に難しいものです。
「不変のファクターはやはりヒト」であり、「ヒト」に注目することが重要だと答えました。
相場の参加者も投資対象の企業も「ヒト」で構成されています。
市場参加者の心理、つまり市場センチメント(市場心理)をつかむことや「企業は人なり」といわれるように、人を活かすことが企業活動の成否といっても過言ではなく、経営者の想い、マインドが結構重要だと思えるのです。指数やチャート(罫線)のような「具体的抽象さ」よりも人の心理のような「抽象的具体さ」 を求めるべきなのではないでしょうか。
若い男性は妙に納得した顔で帰っていかれました。

多くの市場関係者がとらわれる証明不可能な陰謀論。
ウォール街には「市場は操りで動くというのは、もの知らぬ素人なり」という格言もあります。
「ぼうふらや、蚊になるまえの浮き沈み」(相場川柳)というのは国内のもの。
「慌てない、踊らない、騒がない、諦めない」。
株式相場では、これが大切なことといつも言っています。
雑音に惑わされず、じっと手を見るわけではないですが「他人に惑わされす、己を失わず」。
武者修行のように思えるかもしれませんが、株式市場では重要な言葉でしょう。

株式市場というのは派手な値動きに目を奪われがちな場所。
市場が欲しがるのが「驚き」。
そして二律背反的に求めるのが「安定」。
「意外安」というのは忌み嫌われますが切望されるのは「突飛高」。
これは不変の真理。
そして不動の「心理」。
一方で墨守されるのが「安定」。
さほど動かず、しかも「株価が買値を下回らないこと」も絶対条件視されます。
でも不動に安心しつつも、動かない相場に嘆息する場面にはよく遭遇するもの。
どちらかしか選べないとしたらどちらを優先する投資家さんが多いのでしょうか。
これは結構微妙なところです。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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