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遺言はどうやって作るのか?

遺言のメリットとは?

 今まで円満だった親族が相続をめぐって対立し、「骨肉の争い」を繰り広げるという話は、ドラマや小説だけの話ではありません。子や孫のために残した財産が紛争の元にならないために、被相続人が相続財産の「分配基準」を示すことで、紛争を未然に防ごうという考えが「遺言」です。

 相続では、民法で決められた基準(法定相続分)どおりに分配することは難しいのが現実です。相続財産には「預貯金(現金)」と「不動産(家、土地)」とが混在している場合がほとんどで、特に不動産の割合が高いと、スッキリと法定相続分どおり「何分の一」と分けられることは珍しくなります。その場合、最終的には話し合いで決めることになります。しかし、皆がそれぞれ自分の考えを主張し、収拾がつかなくなる場合も少なくありません。

 このため、家や土地を共同名義にすることが考えられますが、「持分権」という問題が生じます。たとえば、屋根の補修などの保存行為を行おうとした場合、単独つまり一人でできますが、台所をリフォームするといった利用・改良行為の場合には、持分の過半数の賛成、つまり2人以上が賛成しなければなりません。さらに、解体や売却の場合は、全員の同意が必要です。このように不動産が共同名義になることで、その後の手続きはかなり煩雑になります。法定相続分どおりに財産を分けるには、いくつもハードルがあるのです。

 その点、遺言ならば遺言者の意思で、誰にどの割合で財産を分配するか、どの財産を誰に引き継いでほしいかなどを決められます。残された相続人たちも、故人の意思ならば、よほど理不尽でない限り納得してくれるはずです。この点が遺言の最大のメリットです。また、法定相続人以外にお世話になった友人、知人などに財産を渡すこともできます。

遺言を作るうえでの注意点

 遺言は遺言者のメッセージを相続人や友人などに残す役目を果たしますが、注意して作らないと、かえってトラブルを起こすことになります。

 注意したいのは、自分の意思を明確に伝えて、誰もが理解できる内容であることです。「○○は妻に」、「○○は長男と長女に2分の1ずつ」など、相続財産の中のどれを誰に相続させるのか、分配割合はどうかなどをはっきりさせる必要があります。

 次に注意すべきは、後々トラブルが生じない内容であることです。例えば、長男よりも長女に多くの財産を残す内容であった場合に、その内容を伝えるだけでなく、理由もきちんと明記しておけば、他の相続人の理解を得ることができます。

 また、「遺留分」を配慮した内容でなければなりません。これは、一定の範囲の相続人に最低限保証された財産の取り分のことです。もし、この遺留分を侵す内容があれば、遺留分を侵された相続人から不足分を請求されることになり、トラブルに発展する可能性があります。

 最後に注意すべきは、法律的に有効であることです。特に「自筆証書遺言」の場合、遺言者自ら作成できる手軽さがある反面、様式や作成方法が法的に有効でないと、遺言そのものが無効になってしまいます。署名や作成日付、印鑑がないだけですべて無効になってしまうのです。

 遺言は、家族や友人、知人に残せる「最後のメッセージ」です。そこに記した「財産の分配方法」については、遺留分を侵害しない限り、法定相続分よりも優先されます。法律的効果が絶大であるだけに、遺言書の内容、作成方法などは法律で厳格に決められています。せっかく残した「最後のメッセージ」が紛争の種にならないように、遺言書を作成する際には細心の注意が必要です。