オシレータ・RSIの基本から覚えましょう。計算式やチャートの見かたをご紹介。横ばい相場でもタイミングをとらえて収益を積み上げていきましょう。
【★基礎からわかる「テクニカル分析」入門6-1】
オシレータとは?
そもそもオシレータとは、振り子を意味します。
テクニカル分析のなかでは、“横ばい相場(=レンジ相場)で使う逆張り指標の総称”です。
テキストによっては、この「オシレータ」のことを相場の勢いを推し量るという意味から、「モメンタム」とも呼ばれますが、この連載では「オシレータ」で統一します。
このオシレータ系指標は、商品の多様性やマーケットの流動性の向上に加えて、1970年代以降のコンピュータ普及によって分析ツールとして活用されるようになり、世の中に広く普及されることとなりました。
オシレータの使いどころ
一般的にマーケットを時系列にみた場合、そのベクトル(出来高という量をともなう方向)は大きく分けて、上昇・下降・横ばいの3つに分類されます。オシレータ系指標は、トレンドがない横ばい相場で売買タイミングを計るときに役立ちます。
オシレータ系指標は、主観が入りやすい「フォーメーション分析」や「パターン分析」などに比べ、過去の価格推移を数理処理していくため、一定の切り口で客観的にマーケットにアプローチできる点では優れています。
それでは、代表的なオシレータ系の指標をご紹介します。
RSI(相対力指数)とは?
「RSI」とはRelative Strength Indexの略で、「相対力指数」と呼びます。
J.Wells.ワイルダー.Jr.の著書「New Concepts in Technical Trading Systems」(1978年)などにより、広く紹介されてきました。
彼が考案したRSI(相対力指数)、DMI(方向性指数)、パラボリックは優れた分析ツールとして、現在でのオシレータ分析の基本となっています。
RSIを簡単にご説明しますと、「今のマーケットが相対的に強弱どちらに傾いているのか?」を表した指標で、以下の式を使います。
定数のN(=期間)を14日と仮定します。
14日間の終値ベースでの上昇幅合計を同期間の終値ベースでの下落幅合計で割ったものがRSになります。そのRSを上にある算式に入れたものがRSIです。
簡単なサンプルを用意しました。
上記の式で得られたRSI(単位=%)の水準によって買われ過ぎ、売られ過ぎを判断するのが一般的な活用法です。上のような計算をいちいち自分でしなくても、証券会社の提供するトレードツールでRSIは簡単に確認することができると思いますのでぜひ探してみてください。
見かたとしては、0%~100%をY軸(株価と同じ縦軸)にとり、株価チャートと見比べてみます。
売りシグナル70%以上、買いシグナル30%以下を目安として逆張り指標で使います。
RSIの弱点
短所としていったんトレンドが発生すると、誤った売買シグナルを発することです。
大きな値幅をともなった上昇トレンドが継続すると、オシレータ系指標が上限の100%付近で高止まりして「売りシグナル」が出ることもあります。
横ばい相場ではなくなったとき…つまりトレンドが発生したときには、株価と指標の逆行現象が起こることを「ダイバージェンス」、「コンバージェンス」と呼びます。
逆行現象については、イメージしにくいと思いますのでチャートを見ながら説明していきましょう。
逆行現象…誤ったシグナルとトレンド転換のサイン
横ばい相場であれば、①のように首尾よく逆張り指標として機能します。
(※オシレータ系指標のパラメータ(時間軸=期間N)と相場のサイクルに合わせることがポイント!)
しかし、マーケットにトレンドが発生し大きく上昇すると、②のように誤った売りシグナルを発することもあります。
ここで重要なのは、高値圏(例えばRSIが70%以上)で株価が高値更新、RSIが切り下がる逆行現象「ダイバージェンス」です。
③のようにトレンド転換の売りシグナルとして活用できるケースもあります。
ちなみに買いのトレンド転換のシグナルの場合はこの逆で、底値圏(たとえばRSIが30%以下)で株価は安値更新したものの、RSIは切り上がっている逆行現象を「コンバージェンス(収束買い)」といいます。
実際のチャートで覚えよう
RSIを使った実例を2つご紹介しましょう。
今回のケースでは、RSIは14日ベースを用います。
80%水準を買われ過ぎ、20%水準を売られ過ぎとして売買タイミングを推し量っています。
株価がほぼ横ばいのボックス相場であるため、RSIが首尾よく逆張り指標として機能し、売買シグナルを発しています。
うまく機能していないときは、銘柄やマーケットの状況に合わせてパラメータ(時間軸)を調整したり、エッジバンド幅を調整していきましょう。
次は、オシレータ系指標が逆行現象となるケースです。
こちらもRSIは14日ベースを用いています。
いったん①のように値幅をともなった上昇トレンドが発生すると、オシレータ系指標は高値圏で推移し、有益な売買シグナルとならないこともあります。
また②のように、いったん売りシグナルが発せられるものの、③のように株価は高値更新、指数が切り下がる逆行現象(ダイバージェンス)が現れることもあります。
この局面がオシレータ系指標でいうトレンド転換のシグナルとなり、④のように調整局面入りとなります。
ただし、前述のように逆張り指標や、今回のトレンド転換のシグナルとして活用する場合も、オシレータ系指標を単独で使うことは回避するべきです。
トレンド自体の有無や強弱を推し量るDMI(方向性指数)やMACD(移動平均収束拡散手法)などを併用して、テクニカル指標を複合的に分析することが大切です。
オシレータ系指標をカスタマイズする
オシレータ系指標は、現実のマーケットに合わせた形にカスタマイズすることで、より実用的な分析ツールになります。
それではRSIをカスタマイズしてみましょう。
①パラメータ(時間軸)の調整
マーケットの状況により、パラメータ(時間軸)を変化させる方法があります。
RSI考案者のワイルダーが、いろいろなものごとに28日の周期があると信じていたため、その半分の14日間という数字を重視したことで、パラメータは14日間で設定することが多いです。しかしながらチャートでは、ボラティリティが大きくなればなるほど、より直近のデータが現在価格に与える影響が強くなります。このコンセプトを基に、取り得るパラメータを調整することも必要な局面も出てきます。
パラメータは小さければ小さいほど30%や70%に達する回数が増えますが、0%や100%近くに張りついてしまう“ダマシ”も多くなります。どうもダマシが多いなぁと感じたらその銘柄やマーケットの状況にとってパラメータが合っていない可能性があります。しかし多くのトレードツールのデフォルトの設定が14日となっていると思いますので、多くの人が14日を見ている可能性が高いということは覚えておきましょう。
②エッジバンド幅の調整
エッジバンド幅の調整とは、買いシグナル30%、売りシグナル70%としていたラインを拡大・縮小させることです。パラメータ(時間軸)に合わせて変化させるものと、ボラティリティの大小により変化させるものがあります。
前者は日数が長くなればなるほどバンド幅を狭く、後者はボラティリティが大きくなればなるほど幅を拡げるのが一般的といわれています。
③出来高の反映
出来高をボラティリティの1要素とし、調整する方法もあります。例えば、当日の出来高を過去の一定期間の平均と比べ、その数値が大きければマーケットの加速因子となります。一方で、出来高が小さければ上下ともに動きやすいマーケットであると仮定し、前述の②のようにエッジバンド幅を拡げて調整する方法もあります。
いずれにせよ、オシレータ系指標だけでなく、テクニカル指標全般に申し上げられることが、硬直的なアプローチを回避し、柔軟的なアプローチが大切です。しばらく継続しているレンジ相場でバックテストをし、首尾よく機能しているオシレータ系指標をやっとみつけた!というころには、新たなトレンド発生によって、レンジ相場を逸脱するリスクも高まっているということです。
複数のテクニカル指標を活用して、バランス良くアプローチをして、リスクを最小限に抑えることも肝要です。
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