
公的年金をあてにしてよいのかわからないため、老後資金が貯められるか心配。子育てが一段落してから老後資金を貯めていくことで間に合うのだろうか。老後資金がいくらぐらい必要で、いつから対策を練っていけばよいかは気になるところではないでしょうか。
そこで、まずは現段階でどのようなことが想定されるか、シミュレーションをもとに確認しましょう。老後資金が心配な40代の方向けに、現実を知り、どのように考えていくべきかを解説します。これにより老後資金の構築への課題や対策方法を知ることができるでしょう。
ライフシミュレーションの使い方について
将来家計のお金がどうなっていくのかを知るには、金融機関のホームページに掲載されているシミュレーターを活用するのが便利です。
ここでは、みずほ証券のホームページに掲載され、誰でも簡単に無料で使える生涯収支シミュレーター「あしたのおかね」を利用してみましょう。
「あしたのおかね」では、最初に5つの質問について答えていきます。ご自身の状況やお考えにもっとも近いものを選択することで、モデルケースをもとに確認していきましょう。ここでは事例として、以下のご家庭を想定していきます。
<事例> 夫Cさん43歳(会社員)、妻Dさん41歳、子2人13歳と8歳 ① 今後お子さまが増える予定はない ② 今後の生活は一般的な(ふつうの)生活を送りたい ③ 住宅ローンを返済中 ④ 現在の金融資産は800万円 ⑤ Cさんの手取り年収は450万円、Dさんの手取り年収は100万円 ⑥ Cさんの退職金予定額は1,900万円、Dさんの退職金はないものとして考える ⑦ 年金収入は2人で23万円(Aさん16万円、Bさん7万円と仮定) ⑧ 支出累計は当初のシミュレーター通りとし変更しない(高校から私立に入学など) |
5つの質問は、以下のとおりです。
(1) 年代を選択する
まずはご自身の年代を選択してください。Cさんの場合、「40代」を選択します。
(2) 結婚しているかどうか
次に、結婚しているかどうかを選択します。「結婚している」「結婚する予定はない」「将来結婚したいと考えている」、この3つから該当するものを選択します。Cさんの場合、「結婚している」を選択します。
(3) 将来の予定を含めたお子さまの人数を選択する
お子さまの人数を選択します。このとき、将来の予定を含めてこうありたいという希望のままに人数を選択していきます。Cさんの場合、今後お子さまが増える予定はないものとして「2名」を選択します。
(4) 将来の生活はどうなりそうか
将来の生活を思い描いたときに、生活が「ゆとりがある」「ふつう」「ひかえめ」のいずれに当てはまりそうかを選択します。Cさんの場合、「ふつう」を選択します。
(5) 現在の住まい状況を確認
最後に、現在のお住まいの状況を確認します。「賃貸」「持ち家でローン返済中」「持ち家でローンなし」の中から選択します。このとき、将来持ち家をお考えでも現状は賃貸であれば「賃貸」を選択します。親と同居している場合には、「持ち家でローンなし」を選択します。
Cさんの場合には住宅ローン返済中ですので、「持ち家でローン返済中」を選択します。
この5つの質問に回答すると、今後想定される概算金額が表示されます。このため、自身の金融資産、手取り年収、支出状況にあうように設定を変更します。
Cさんの場合、シミュレーション結果を確認すると90歳時点で約1,429万円不足するとの結果がでます。もしこのままいくと老後資金が大いに不足する可能性があることがわかります。
人生100年と呼ばれる時代ですから、90歳段階で1,429万円不足することは不安材料となることでしょう。
自営業の方の場合に注意したいこと
Cさんのシミュレーションは会社員を想定しています。もしCさんが自営業者であった場合にはどのようなことが想定できるでしょうか。最も大きな影響が出るのは公的年金の部分です。
仮に20歳から国民年金のみの加入であれば40年間国民年金保険料を支払ったとしても国民年金額は年間で77万9,300円(2018年度)の受け取りにすぎません。もし妻Dさんもパートであれば、お互いに国民年金のみの加入となります。
また、自営業者の場合、ご自身で積み立てを行っていかなければ一般的に退職金はないといえます。こうした違いがその後のライフプランを検証する際に大きな差となってでてきます。
Cさんの場合を自営業者としてシミュレーションしてみると、なんと90歳時点で約6,761万円が不足することに。つまり、自営業者の場合には特に早め早めの老後資金設計をしていく必要があることがわかります。
<事例> 夫Cさん43歳(自営業)、妻Dさん41歳、子2人13歳と8歳 ⑨ 今後お子さまが増える予定はない ⑩ 今後の生活は一般的な(ふつうの)生活を送りたい ⑪ 住宅ローンを返済中 ⑫ 現在の金融資産は800万円 ⑬ Aさんの手取り年収は450万円、Bさんの手取り年収は100万円 ⑭ 退職金はないものとして考える ⑮ 年金収入は2人で12万円(Aさん6万円、Bさん6万円と仮定) ⑯ 支出累計は当初のシミュレーター通りとし変更しない(高校から私立に入学など) |
会社員・公務員でも、公的年金や退職金が減らされる可能性に備えること
それでは会社員、公務員の方が安心かといえばそうともいえません。シミュレーション結果からも老後資金が不足することがわかりますし、今後、公的年金が減らされる恐れもあります。退職金も必ずしも想定と同様の金額が受け取れるとは限らないでしょう。
そうした事態に備えて、シミュレーションで不足する額以上にお金を準備しておくのがよいでしょう。実際にシミュレーション通りに公的年金や退職金がもらえなかった場合の備えは用意しておき、ゆとりのある老後を目指すのが吉ではないでしょうか。
統計データから老後生活資金を知る

それでは、実際に現在の高齢者の方々の生活実態を知り、より具体的な目線で老後資金をどの程度必要ととらえるべきか考えていきましょう。
総務省「家計調査報告(家計収支編)―平成29年(2017年)平均速報結果の概要」によれば、二人以上の世帯のうち無職世帯(平均世帯人員2.41人,世帯主の平均年齢73.7歳)の実収入は1世帯あたり1ヵ月平均20万3,254円です。これに対して消費支出は23万7,619円であり、差額3万4,365円が不足分となっています。この不足分は、退職金やこれまでの貯蓄でまかなう必要があります。
それでは65歳から90歳までにどの程度が不足分に該当するでしょうか。25年間の不足分は、3万4,365円×12ヵ月×25年=1,030万9,500円と計算できます。つまり、1,030万円ほどの資金が65歳段階で確保できていれば90歳までの生活費は確保できる見込みとわかります。
ただし、この金額はあくまでも現段階ですでに公的年金を受給されている方の話になります。今後、公的年金の受け取りが減るおそれがある点なども考慮すると、さらにお金を貯めておくべきです。また、退職後も海外旅行など楽しみたいという方は、ゆとりある老後設計を行っていくべきです。そのため、あくまでも上記金額は参考としてお考えください。
老後資金はいつから貯め始めるのがよいのか
老後資金はいつから貯めるべきでしょうか。それは、早いにこしたことはありませんが、子育てや住宅ローンで大変というケースもあることでしょう。
例えば、他の資金のやりくりで大変という方は、月額1万円は少なくとも積立貯蓄で行うなどの計画をたて、コツコツ貯めていきましょう。そして、ある程度子育てや住宅ローンに目処がついてからは、退職時期まで何年あるかを逆算し貯めることができる分はできるだけ老後資金として確保していきましょう。
時間のある方や資金に余裕のある場合は、預貯金と変動商品をうまく活用し、将来に向けて資産形成を始めるのがよいでしょう。早め早めに始めることで、時間を味方につけることができます。
時間は元には戻らない。だからこそ、まずはシミュレーションによる現状把握を
老後資金計画はできることから一つずつ着実にやっていきましょう。時間は元には戻りません。老後資金が不足する場合には、働くことも一理あります。ただし、皆さんのやりたいこと、過ごしたい生活とかけ離れないようなプラン構築をすべきです。
とはいえ、老後資金構築はできても、目の前の他の資金が不足するといったこともあります。優先順位を決め、いずれの資金も不足しないような資金配分を考えてみましょう。そのためにも、シミュレーションをまずは行い、自分の現在の状態を確認してみるのがよいでしょう。
>>生涯収支シミュレーター「あしたのおかね」
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