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日本でも「ナイトタイムエコノミー」活性化の兆し

(写真=f11photo/Shutterstock.com)

日本の夜には訪日客が楽しめるエンタメが少ない

日本の夜には訪日客が楽しめるエンタメが少ない訪日外国人観光客の消費拡大を図るべく、「ナイトタイムエコノミー」(夜の経済活動)を活性化しようとの試みが広がり始めています。
日本では、レストランや居酒屋、バー、クラブなどは諸外国に劣らず夜遅くまで営業していますが、例えばミュージカルや音楽ライブの夜公演、夜間の美術鑑賞やスポーツ観戦など、夕食を終えた午後8時ぐらいから楽しめるエンターテインメントが少ないのが現状です。多くの訪日客は娯楽やイベントが充実していない日本の夜をもの足りないと感じ、日中こそ観光に忙しいが夕食後は時間を持て余しているともいわれます。

訪日客1人当たり旅行支出額が頭打ち

実際、訪日客数の増加が続き、日本への観光人気が高まっている一方で、訪日客1人当たりの旅行支出額は2017年に15.4万円と、2015年のピーク(17.6万円)から頭打ちとなっています。訪日客の消費動向が「爆買い」に象徴されるモノ消費から体験を楽しむコト消費に移ってきたとされるなか、夜遊び拠点の不足から需要を十分に取り込めていないことが旅行支出額伸び悩みの一因ともみられています。


外国人観光客が現地で娯楽サービスにどれだけ支出を割くかの各国比較でも、米国が消費支出全体の10%程度、フランスが8%程度などであるのに対して、日本はわずか1%程度です(OECD観光白書2016より)。
また、夜遊びを楽しめる施設やイベントの増加など、夜間市場の掘り起しが進めば、訪日客のみならず日本人の消費拡大につながることも期待されます。

ロンドンの夜間市場は英国全体に年4兆円の経済効果をもたらす

すでに欧米の大都市では、文化施設の開館時間を延長したり、イベントの開演時間を遅らせたりするなど、ナイトタイムエコノミーを振興する取り組みが広がり、経済にも好影響を与えています。
代表的なのが英国のロンドンで、例えばミュージカルは午後8時と遅めの開演が多く、美術館も深夜近くまでイベントが行われたりするようです。2016年には夜遊び需要を支えるねらいなどから、金・土曜日に限り地下鉄の24時間運行を開始。また、同年にはナイトタイムエコノミー振興の旗振り役となる「ナイトメイヤー」(夜の市長)を設置しました。ロンドンの夜間市場は、英国全体に年間約4兆円の経済効果をもたらしているといわれます。

夜遊び経済を振興する自民議連も発足

日本でも、ナイトタイムエコノミーの活性化に向けた環境整備がここ数年で進み出しています。具体的には、2016年6月に改正風営法が施行。従来は原則午前0時までとされてきた、客がダンスを楽しむクラブなどの営業が、一定の条件を満たせば朝まで可能となりました。
さらに、ナイトタイムエコノミー振興に関する施策推進を目指す動きとして、2017年4月には自民党の時間市場創出推進議員連盟(ナイトタイムエコノミー議連)が発足し、同年12月に中間提言をまとめています。それによると、文化施設の開館時間の延長、鉄道・バスの深夜運行の検討、ナイトメイヤー制度の設立などのほか、ユニークなものとしては月曜日の出勤時間を遅らせる「ラグジュアリーマンデー」(仮称)の導入を提案。同議連は施策を推し進めるため、2018年をめどに官民一体の推進協議会の設立を目指すとしています。
そのほか、自治体レベルの動きでも、例えば東京都渋谷区で地元の観光協会が2018年4月から訪日客向けに夜の渋谷の街を案内するガイドツアーを開始したのをはじめ、各地で夜遊び消費をねらった取り組みがみられ始めています。

カジノ開設の動向にも注目

ナイトタイムエコノミーの振興は、イベントや音楽ライブの企画・制作、映画や演劇の興行、アミューズメント施設の運営をはじめとするエンターテインメント業界、および居酒屋・レストラン業界等にとって追い風となるでしょう。特に日本では、今後、カジノを含む統合型リゾート(IR)が開設されることも見込まれており、その動向ともあわせ注目されます。