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脳科学者中野信子が語る! 第2回 投資に必要な脳育とは!?(後編)

気鋭の脳科学者・中野信子先生に、脳とお金の関係について教えていただくシリーズ。その2回目の後編は、脳に与える「祈り」の影響についてうかがいます。脳科学的にみた、「祈る」ことの効果。商売繁盛や金運上昇を神様に「祈る」ことで、私たちが得られるものとは何か。投資に向かう心構えにも通じるお話をうかがいました。

ポジティブな祈りは脳を活性化させて、記憶力や集中力を高める

──先生はご著書のなかで、「祈る」ことは脳科学的に見ても効果があるとおっしゃっていますね。宗教や信仰というと、科学とは離れたことのようにも思えますが……。

中野:そうですね、平成には宗教にからんだ事件も多かったですし、神頼みなど単なる気休めで意味はないと考える人も多いかもしれません。ただ、脳の機能や神経伝達物質といった面からみると、「祈り」が脳に与える影響にも見逃せないものがあるのです。

人間の脳には前頭前野内側部といって、自分の行動の評価を行う部分があります。何かを祈るという行動も、脳は「良し悪し」のジャッジを下しています。例えば、「お金持ちになって、家族を幸せにしたい」といった祈りをしたとき、脳が「それはポジティブで良い祈りだ」と判断すると、βエンドルフィンやドーパミン、オキシトシンといった脳内快感物質(神経伝達物質のうち、多幸感や快感をもたらす物質)が脳内に分泌されます。なかでもβエンドルフィンは、脳を活性化させる働きがあり、記憶力や集中力を高めることが知られています。オキシトシンにも、記憶を高める作用があるといわれます。

しかし、「誰かを蹴落としたい」「あの人が損をすればいい」といったネガティブな祈りは、「悪い祈りだ」と脳にジャッジされます。その場合は、ストレス物質であるコルチゾールが分泌されます。これが脳内で過剰に分泌されると、記憶の重要な回路である「海馬」を萎縮してしまうことも分かっています。

具体的な目標を持つことで、自分に必要なものが見えてくる

──「祈り」の中身というのが、大切ということでしょうか。

中野:はい。人間には、「展望的記憶」といって、これから将来に向かって何をするかという予定を記憶としてインプットしておく機能があります。「今日はお昼にラーメンを食べよう」というのも展望的記憶なのですが(笑)、もっと広く、「将来に備えてしっかり資産をつくりたい」というビジョンを持って人生を歩むことができるのも、展望的記憶の能力があるからです。そうして人が未来を生き生きと思い描くときに、記憶をつかさどる「海馬」の活動が活発になることもわかってきました。

私が「祈り」という行為が面白いと感じたのは、それが自分と向きあう作業だからです。本当に何が欲しくて、どうしたいのか。自分は何を求めていて、どうしたらそれが達成できるのか。それを祈る「対象」に、伝えなければなりません。

神社へ参拝に行くと、商売繁盛や学業成就というように項目が分かれていますよね。例えば、そこから「2つ選んでください」といわれたら自分はどんな目的で、何を選ぶのか。例えば、金運上昇を1つめに選んだとして、それが家族の幸せのためならば2つめは家内安全。ライバルに勝つためなら勝負必勝、無理をして身体を壊したくないなら健康長寿かもしれません。それだけでも、ぼんやりしていた自分の願いが明らかになってくるはず。

また、日本ではお伊勢参りや富士登山、キリスト圏ではサンティアゴ・デ・コンポステーラなどの巡礼路、イスラム圏ではメッカ巡礼など、祈りのために長い旅をするというのも、それだけの苦労をして自分は何を祈りたいのかを考える時間を持つためだったと思います。今はそうした旅も便利になりましたが、目的地に向かうまでは仕事を忘れ、スマホも切って(笑)、自分と向きあう時間を持つ。そこから、新しい「展望的記憶」が見えてくることもきっとあると思います。

──投資の成功を「祈る」ことにも効果がありますか?

中野:まず、ぼんやりと「お金が増えるといいな」と考えて投資に向かうより、「リタイア後も夫婦円満でいるために老後の資金を貯めたい」とビジョンを明確にして、「成功させてください」と祈る方が動機付けになり、目標もはっきりします。

しかし、ただ「祈る」だけで投資が成功するはずはありませんよね(笑)。立てた目標に対してどのような行動を取るか、反省や振り返りもふくめて、「祈り」を続けることで工夫や努力も続けていけるでしょう。

「祈る」というと、思考を停止して何かにすがるというイメージもありますが、実際は逆です。熟考し、行動し、内省する。そのサイクルを日常に取り入れる仕組みとしても、「祈り」が役立つかもしれません。時間としては、朝日を浴びると気持ちを落ちつかせるセロトニンの分泌が促され、朝は前向きな気持ちになりやすいので、未来に目を向けた「成し遂げたい目標」を考える。夜は「今日は何ができたか」を振り返って集中して祈る。そうした習慣を始めてみてはいかがですか。

第三回では子どもと、その能力をどう育てていくか、「教育」に焦点を当てて紹介します。

(プロフィール)
中野信子氏
脳科学者・医学博士

1975年生まれ。東日本国際大学特任教授、横浜市立大学客員准教授。東京大学工学部卒業後、2004年東京大学大学院医学系研究科医科学専攻修士課程修了、2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程終了。2008~2010年まで、フランス原子力庁サクレー研究所で研究員として勤務。『東大卒の女性脳科学者が、金持ち脳のなり方、全部教えます』(経済界)、『脳科学者からみた「祈り」』(潮出版)、『世界で通用する人がいつもやっていること』(アスコム)、『サイコパス』(文藝春秋)、『ヒトはいじめをやめられない』(小学館)など著書多数。 

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
山田真理

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

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