インタビュー – お金のキャンパス 金融や経済のことをもっとわかりやすく Thu, 22 Apr 2021 07:20:45 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.8 資格コンサルタント鈴木秀明氏に聞く! 人生100年時代の、資格から入る学び直し(第3回) archives/6103 Wed, 28 Nov 2018 01:00:31 +0000 ?p=6103

これまで約590個の資格・検定を取得してきた資格の専門家である鈴木秀明氏へのインタビュー。最終回となる第3回では、30代、40代の方たちが、仕事をする上で役に立つ資格についてお聞きします。

≫第1回のインタビューはこちら
≫第2回のインタビューはこちら

マネジメントや転職、起業に役立つ資格

――最終回では、ビジネスに役に立つ資格についてお話をうかがいたいと思います。30代から40代の方々が取得しておくと役に立つ資格を教えてください。

鈴木さん 第2回でもお話ししましたが、「中小企業診断士」は30代から40代のビジネスパーソンにオススメの資格のひとつです。経営学、経済学、会計、法務、ITなど、企業経営にまつわる知識全般を一通り勉強できます。会社の部長クラスや経営層までキャリアアップしたいと思っているなら、ぜひ取得しておくとよいでしょう。「中小企業診断士」は、業界を問わず評価の高い資格ですから、転職を考えている人にとっても武器になります。

――「中小企業診断士」は、面接書類の段階で人事に興味を持ってもらえる、強力な武器になりそうです。そのほか、独立・起業を考えている人がぜひ取るべき資格はありますか?

鈴木さん 「銀行業務検定」はいかがでしょうか。金融機関に勤めている人のみが受験できる業界資格だと思われがちですが、実は一般の人も受けられます。法務、財務、税務、融資管理、投資信託、外国為替などの種目があり、銀行業務で必要になる実務知識を学べます。例えば、融資を受けるときなど、経営者として「会社のお金」に関する実務的な知識があると有利です。銀行は会社のどこを見て融資を決めているのか、もし返済が滞った場合にはどのように回収を図るのかなど、お金を貸す側である銀行側の視点からリアルで実践的なマネー知識が学べるわけです。

管理職ならメンタル系の資格にも注目!

――40代になると管理職に就く人も多いですが、部下やチームのマネジメントに有効な資格はありますか?

鈴木さん メンバーのやる気を引き出して生産性を高めるには、「公認モチベーション・マネジャー」という資格の勉強をしてみるといいでしょう。モチベーション理論とモチベーション・マネジメントの実践スキルを学ぶことができます。

また、心のマネジメントという観点では、「メンタルヘルス・マネジメント検定」があります。近年、仕事や職場環境が原因でうつ病になる人が増加傾向にあるなど社会問題にもなっていますので、管理職に就いている人は部下の心の健康管理も重要ですね。この検定の取得を管理職昇進の要件の一つにしている企業もあるそうです。

誰が持っていてもソンしない資格

――特に管理職や独立・起業を目指していなくとも、勉強しておくとよいと思われる資格を教えてください。

鈴木さん 「ファイナンシャル・プランナー」は、税金、保険、投資、不動産、年金、相続など、個人のお金に関する幅広い分野の知識が学べる資格です。プライベートのさまざまな場面で役立つ知識・ノウハウが学べますし、個人を対象としたBtoCのビジネスなどでは、仕事上でもさまざまな場面で応用が効くでしょう。

「統計検定」もオススメです。統計学は近年、ビジネス誌でもたびたび特集が組まれる注目度の高いテーマですが、マーケティング業務などデータを分析して意思決定をするときなどに役に立つでしょう。

3回にわたって、資格の専門家である鈴木秀明さんにお話を伺いました。「資格」と一口にいっても、趣味性の高いオモシロ資格から自分の個性をアピールするためのもの、ビジネスで役に立つ資格とさまざまな側面があることがわかりました。人生100年時代、自分の人生に豊かさや彩りを与える学びとして、ぜひ資格取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

鈴木秀明氏
資格・勉強コンサルタント

1981年富山県生まれ。東京大学理学部卒。東京大学公共政策大学院修了。All About「資格」ガイド。取得資格はFP技能検定1級、証券アナリスト、気象予報士をはじめとして約590個。ジャンルを問わず幅広い分野の資格・検定を取るのが趣味で、ほぼ毎週何かしらの試験を受けている。著書に『効率よく短期集中で覚えられる 7日間勉強法』(ダイヤモンド社)などがある。

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
吉田明乎

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

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資格コンサルタント鈴木秀明氏に聞く! 人生100年時代の、資格から入る学び直し(第2回) archives/6043 Wed, 21 Nov 2018 01:00:36 +0000 ?p=6043

人生100年時代、これからの人生を豊かにするための「資格取得」。これまで約590の資格・検定を取得してきた資格コンサルタントの鈴木秀明さんは、資格を取得することには、多くの効果が期待できると話します。第2回は、専門家の視点から、資格取得によって人生にどのような影響や効果があるのかをお伝えします。

≫「【第1回】資格コンサルタント鈴木秀明氏に聞く! 人生100年時代の、資格から入る学び直し」はこちら

資格取得を通して享受できる6つの効果

――年間50個もの資格を取り、現在約590個(2018年9月時点)の資格を取得している鈴木さんですが、これまでたくさんの資格を取ってきて、資格を取ると具体的にどのようなメリットや効果があると感じていますか?

鈴木さん 私は資格取得の効果は、大まかに6つに分類されると考えています。

鈴木さんが考える資格取得の6つの効果

1. 法的効果
2. シグナリング効果
3. コミュニティ効果
4. 学びの効果
5. 経済的効果
6. 精神衛生上の効果

まず1つ目は「法的効果」。その資格を持っていないと特定の仕事に就けないとされているような国家資格などです。例えば「行政書士」、「宅地建物取引士」、「気象予報士」などがあります。

――鈴木さんは、今あげていただいた「行政書士」、「宅地建物取引士」、「気象予報士」すべて取得していますが、この資格を使って何かお仕事をされていますか?

鈴木さん いえ、私はあくまでも「資格をたくさん持っていること」自体を強みにして資格の専門家として活動しているので、基本的には個々の資格を直接的に「飯のタネ」として仕事にしているわけではないですね。

意外な資格が“個性”を生み出す

――直接仕事にしないのに、勉強して資格を取ってしまう鈴木さんはスゴイですね。

鈴木さん その“スゴイ”が重要なんです(笑)。自分の得意分野や強みを周りにアピールする際に、ただ「○○が得意です」とだけいっても、具体的にどの程度できるのか、本当にそれだけのスキルがあるのかを明確に伝えるのは難しいですが、資格があれば「○○検定1級です」とスキルを客観的に一言で示すことができます。私はそれを「シグナリング効果」と呼んでいます。つまり、周りから「スゴイ」と思ってもらえる効果です。これが2つ目の効果です。

例えば、難易度が高いといわれている「中小企業診断士」は、法律上その資格を持っていないとできない仕事があるわけではないので、事実上の法的効果こそないですが、履歴書の資格欄に書けば「スゴイ!」と思われるような資格の一つです。

――「アロマテラピー検定」や「メイクセラピー検定」など、一見、鈴木さんはまったく興味がなさそうな分野の資格も取得されていて、「鈴木さんって面白い!」と感じました。

鈴木さん そういった意外性のある資格も、ある種のシグナリング効果が期待できますね。第1回でもお伝えしたように、「こう見えて○○の資格を持っています!」という、自分のユニークな一面を相手に印象付けることができますし、「キャラ付け」を演出したり、個性をアピールできるんです。

人生の楽しみが広がり、堂々と行動できるきっかけに

鈴木さん 3つ目は、私が「コミュニティ効果」と呼ぶものです。資格によっては、合格者のみが参加できる会やイベントなどがあって、資格を取ることで人脈が広がり、自分と同じ趣味や得意分野を持つ人たちとのネットワークができます。「野球知識検定」やアニメに関する検定など趣味性の強い検定は、ファンサービスのようなイベントを開催することが多いです。

――もともと趣味としている分野であるなら、自分の知識を試したいという気持ちも強くなって、勉強にも熱が入りそうですね。

鈴木さん 自分の得意分野はもうすでに十分知識があると思いがちですが、意外とまだまだ知らないこともあるものです。どんな資格でも、試験勉強の過程で学んだことは何らかの糧になっているはずで、必ず意義があります。それが4つ目の「学びの効果」です。すぐには役立たなくても、学んだことが将来生きてくることもありますし、そういう意味では「取ってもムダな資格」など一つもないと私は考えています。

5つ目は「経済的効果」。いわゆる「ご当地検定」や、食べ物分野の検定などに多いのですが、合格すると、提携している施設やお店で割引や限定グッズなどの特典を受けられる資格があります。そのような、ストレートに経済的な恩恵が受けられるメリットのことです。

――「法的効果」、「シグナリング効果」、「コミュニティ効果」、「学びの効果」、「経済的効果」とここまでで5つご説明していただきましたが、これだけの効果があると気持ちが前向きになりますね。

鈴木さん はい、最後の6つ目は、この資格を取得したことで自信がつき、前向きな気持ちで堂々と行動できるきっかけになるというもの。私はこれを「精神衛生上の効果」と呼んでいます。

私自身、「これだけ資格を持っていれば、何かあっても人生なんとかなる!」と思えてきますから、常に精神的に余裕を持てていると思います(笑)。

取得する資格や検定によって、それぞれがもつ効果の内容はさまざまですが、6つ目の「精神衛生上の効果」はどの資格にもあてはまるのではないでしょうか。人生100年時代においては、常に前向きな気持ちで人生を歩むために、たまには資格取得へのチャレンジを通じて精神的な成長を目指すのがよいのではと感じました。第3回では、ビジネスに役立つ資格を分野別に紹介します。

 

鈴木秀明氏
資格・勉強コンサルタント

1981年富山県生まれ。東京大学理学部卒。東京大学公共政策大学院修了。All About「資格」ガイド。取得資格はFP技能検定1級、証券アナリスト、気象予報士をはじめとして約590個。ジャンルを問わず幅広い分野の資格・検定を取るのが趣味で、ほぼ毎週何かしらの試験を受けている。著書に『効率よく短期集中で覚えられる 7日間勉強法』(ダイヤモンド社)などがある。

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
吉田明乎

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

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資格コンサルタント鈴木秀明氏に聞く! 人生100年時代の、資格から入る学び直し(第1回) archives/6016 Wed, 14 Nov 2018 01:00:28 +0000 ?p=6016

学校などの教育機関で改めて学ぶだけが、「学び直し」の方法ではありません。資格を取得するために、新たな知識を得たり、これまでの知見をさらに深めたりするのも「学び直し」といえます。世の中にはさまざまな資格が溢れていますが、人生100年時代のこれからの自分の人生のために、どのような資格が役に立つのか。これまで約590の資格・検定を取得してきた資格コンサルタントの鈴木秀明氏にお話をうかがいました。

学生時代の広報誌編集が資格ロードの第一歩

――鈴木さんは、ジャンルを問わず、さまざまな資格・検定を取得しているとのこと。最初に、資格の専門家になったきっかけを教えてください。

鈴木さん 東京大学在学中、東大生協の学生委員会というサークル的な組織に所属していて、そこでの活動の一つとして生協の広報誌を編集していました。あるとき、さまざまな資格試験に挑戦してその体験記を書く「資格道」という連載記事を担当することになり、毎月いろいろな資格に挑戦するようになったんです。

そして、大学院修士2年生のときに『シカクロード!!! 資格試験の罠』(カットシステム、2005年9月)という本を出版したことが、資格の専門家として活動する契機となりました。私の場合は、資格を仕事に活かすために取るというより、さまざまな資格を持っていること自体を価値にして仕事につなげているので、そこは一般的な資格の活かし方とは違いますが、いずれにせよ資格から恩恵を受けています。

「きのこ検定」に「ベルサイユのばら検定」? 意外性のある資格で個性をアピール

――鈴木さんが持っている資格は、行政書士や中小企業診断士のような国家資格から、「江戸文化歴史検定」や「京都・観光文化検定」などのご当地系、「チョコレート検定」や「きのこ検定」などの食系、「ベルサイユのばら検定」などアニメや漫画系、「メイクセラピー検定」など、鈴木さんのイメージとは一見かけ離れている意外なものもあり、多種多様で驚きます。取得する資格をどのように選んでいるのでしょうか。

鈴木さん 現在、約590個(2018年9月時点)の資格を取得しています。ご指摘のように、意外性のあるオモシロ資格もありますが、それら「え?」と思えるような資格は、「こう見えて私はこんなのも持っています!」といえるような自分の「ネタ」として取ってきた側面もあります。資格は、自分自身の「キャラ付け」や「意外な一面の演出」に使えるツールにもなりえます。

それに、私は自分がもともと得意としている分野よりむしろ、これまで関わったことがないような未知の分野の方が、勉強していて楽しいと感じます。これまでの自分の人生にまったく接点のない分野について学ぶ方が、むしろ新たな価値観や概念に触れることが刺激になり、その結果、人生を豊かにしてくれると思うのです。

――年間50個以上のペースで資格を取得されているとのことですが、勉強法はどのようなものですか?

鈴木さん 勉強期間は長ければいいというものでもないので、短期集中で取り組むようにしています。早い時期に勉強したことほど試験日までに忘れてしまう可能性が高いですし、勉強に使える時間が限られていた方が切迫度が増して集中できます。いわゆる「締め切り効果」ですね。

勉強時間は、通年で一日平均5時間くらいは何かの勉強をしている感じでしょうか。試験の前日は10時間くらい勉強することもありますが、勉強する時間帯などはその日その日でまちまちですね。

車が当たる、ファンサービスがあるなど、豪華な特典でモチベーションアップ

――数ある検定のなかで、皆さんにぜひ知って欲しい資格があれば教えてください。

鈴木さん 知ってもらいたいというと、いろいろあるので困ってしまいますが、資格や検定のなかには、受験者や合格者に対して限定グッズや豪華賞品などの特典が付与されるものがあります。このようなものは、皆さんにも知ってもらって、ぜひ楽しんでほしいですね。

例えば「チョコレート検定」は、成績上位者にチョコレート1年分を進呈、「日本ビール検定」(びあけん)では、100点満点の人にビール1年分を進呈するなど。また、車の知識を試す「くるまマイスター検定」(くる検)では、公式ホームページのクイズに答えたり、検定に申し込むと抽選で車が当たるんです。私も特典がある検定はモチベーションがあがります。

ほかにも、「野球知識検定」は、試験当日の検定官がプロ野球OBで、往年の名選手に会えるんです。検定終了後はトークショーなどのイベントがあり、成績優秀者はプロ野球OBとの食事会やサイン入りボールがもらえたりします。アニメや漫画系でもそういったファンサービス的な特典を用意している検定や、「ファンNo.1決定戦」的な企画を設けている検定があります。我こそはと思う人は、ぜひ受けてみてはいかがでしょうか?

「資格取得」というと、つらい勉強をイメージしがちですが、意外にも鈴木さんからは検定を受けてみたいと思えるようなユニークなお話を聞くことができました。次回は、実際に資格を取ることで、具体的にどのようなメリットや効果があるのかなどを聞いていきます。

 

鈴木秀明氏
資格・勉強コンサルタント

1981年富山県生まれ。東京大学理学部卒。東京大学公共政策大学院修了。All About「資格」ガイド。取得資格はFP技能検定1級、証券アナリスト、気象予報士をはじめとして、約590個。ジャンルを問わず幅広い分野の資格・検定を取るのが趣味で、ほぼ毎週何かしらの試験を受けている。著書に『効率よく短期集中で覚えられる 7日間勉強法』(ダイヤモンド社)などがある。

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
吉田明乎

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

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世代を超えて世の中を変えていきたいという情熱をもつ皆様に応えていける政府でありたい 内閣官房参事官・中原裕彦氏に聞く archives/5849 Fri, 21 Sep 2018 01:00:06 +0000 ?p=5849

2018年6月に始まった日本版規制のサンドボックス制度は海外の事例とは異なり、幅広い範囲で活用することができます。イノベーションを起こしたい、新しいことにチャレンジしたい人たちには起爆剤となり得る制度かもしれません。また、この実証実験に私たちユーザーが実際に使用してみることによって、新たな可能性が生まれるかもしれません。このような未来を感じさせる制度を実際に運営される内閣官房日本経済再生総合事務局(未来投資会議)の参事官・中原裕彦氏に、この制度に対する思いや希望をお聞きしました。

情熱を持つ人たちと一緒に日本を良い方向に変えていきたい

−−特にAI、IoT、FinTech、ブロックチェーンなど、革新技術の発展に大きく寄与しそうなレギュラトリー・サンドボックスですから、次世代を担う若い方々の力に期待したいところですね。

中原氏:新しい社会実装ということで考えたときに、これまでの考え方と非連続なアイデアというものは、場合によっては経験のないところにこそあるのかもしれないという気がしています。

今までは着実に物事を積み上げてきていて、確かにそれ自体は重要なことで、先輩方から学ばなくてはいけないところはたくさんあるということは重々理解したうえで、もしかしたら、そうやって積み上げられてきたなかにも、「あれ?そもそもこの前提に立つ必要があるのか」いう部分もあるかと思うのです。

これまでとは違った考え方で、そういった疑問点や改良点を丁寧に解きほぐしたうえで、そこからまた新しいものを積み上げていくということは非常に有効かと思いますし、私たちはもとより、若い世代の人たちの役割かもしれません。そういった意味でも、ぜひ若い世代の方にお考えいただいたことを問題提起をしていただければと思いますし、そういったパッションの口火を切っていける機会と捉えていただければと思います。

−−あらゆる物事を根底から変えていくためにはパッションが必要ですね。

中原氏:そうです。こんなふうに世の中を変えていきたいという想いは、皆様のなかには必ずあって、特にそういった想いを持つ事業者の情熱に我々も応えられるようになりたいし、そういった柔軟性を持つことで国際競争に打ち勝っていける、そういう強い政府でありたいと思っています。最初からあまり大きなことを言うべきではないかもしれませんが、私たちもそういった志を持っていることは確かですし、皆様のご要望に真摯にお応えできるようにしたいと思っています。

人生100年時代 規制のサンドボックス制度は世代を超えた起爆剤に

−−「人生100年時代」と言われています。若い人はもちろんですが、ベテラン世代もまだまだ頑張っていかなければならない時代です。そういった意味でも、今回のレギュラトリー・サンドボックスは第二の人生を築いていくために活用できる制度ではないでしょうか?

中原氏:おっしゃる通り、まさに50代、60代の方々もまだまだお元気でご活躍いただけるものと思います。皆様が若いときに非常に面白いアイデアを考えたけれども、ご自身が勤められていた会社の状況や、その時代背景や経済環境など外部要因によって実現しなかった、そんなアイデアをお持ちだったという方々もたくさんいらっしゃるでしょう。

そういった方々がかつて帰属した組織のしがらみ故に実現できなかったアイデアを第二の人生において実現されようと考えて、このサンドボックス制度を活用するのも良いかもしれません。なにもICT(情報・通信技術)や最先端技術分野のなかにだけ、革新的なアイデアが眠っているわけではありません。ベテランの皆様の知見が活かせる場も大いにあると思っています。

デジタルネイティブ世代の皆様が考えるワクワクするアイデアに私達も併走したい

−−最後にお金のキャンパスの読者、あるいは企業やベンチャーにお勤めの皆様に向けて、この「レギュラトリー・サンドボックス制度」の趣旨に鑑み、メッセージをお願いします。

ハードルが高いなどとは思わず、特に若い世代の方々にお越しいただくことを歓迎しています。やはり、スマートフォンを自在に使いこなすデジタルネイティブの方々は、物心ついたときから新しい商品、新しいサービスを受け入れ、そして新しいルールの必要性を体感していることと思います。そういった世代の方々が持つ感覚のなかから新しいものが生み出せられることも確信しています。

既存の概念からでは到底思いつかないような、若い世代だからこそ考えつくような新しいアイデアを持ち込んでいただくことに期待していますし、私たちもそういった出会いにワクワクしているところであります。そういう意味ではぜひ、気軽に門を叩いていただければと思います。皆様が主体となって新しい技術のパラダイムを作っていく、その「後押し」をしっかりさせていただきたいと思います。

例え素晴らしいアイデアがあっても、これまでは法規制の面で難しい、実現するためのリソースが不足しているから後回しにしてきたというベンチャーさんも非常に多くあると聞いています。そういった皆様にお伝えしたいのは、決してあきらめないでいただきたいということです。

また、過去にあきらめてしまって、棚上げしていたアイデアのなかに宝の山が眠っているかもしれませんから、再び掘り起こしてみるのも良いのではと思っています。

どうしてそのときに頓挫してしまったのかも含めて私たちと一緒に課題を解きほぐしてみて、実証を行うことでまた一歩前に進めることができるのであれば、ぜひトライをしていただきたいです。そこからまた、新たな制度改正につながってくるかもしれませんから、私たちも全力を尽くしたいと思います。

 

中原裕彦(なかはら ひろひこ)
内閣官房 日本経済再生総合事務局 参事官

1991年 東京大学法学部卒業、通商産業省入省、大蔵省証券局総務課、米国コーネル大学 Ph.D.candidate、法務省民事局参事官室、中小企業庁制度改正審議室長、経済産業省知的財産政策室長、内閣府規制改革推進室参事官、経済産業省産業組織課長等を経て2016年から現職。規制のサンドボックス制度の創設に尽力。

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規制のサンドボックスは未来のためにすべての人に実証に参加してほしい 内閣官房中原裕彦氏に聞く archives/5829 Wed, 19 Sep 2018 01:00:52 +0000 ?p=5829

2018年に施行された日本の新たなイノベーション創出のプラットフォームという見方も可能な規制のサンドボックス制度。日本の創造性を発揮できる制度のひとつだと考えられますが、実際にどのような社会的な効果を得ることができるのでしょうか。内閣官房 日本経済再生総合事務局(未来投資会議)の参事官・中原裕彦氏から、規制のサンドボックス制度の詳細についてお聞きします。(このインタビューは2018年7月23日に行われました。)

規制のサンドボックス制度はビジネス創出に向けた動きを生み出すきっかけになり得る

−−「規制のサンドボックス」制度が成立したことによって、本当に革新的な技術や新規ビジネス創出に向けた動きが出てくるのでしょうか?これまでの規制改革のように、軋轢が発生したりはしないのですか?

中原氏:今回のサンドボックスの意義は何か?

この制度は、新しい産業やビジネスを生み出そうとする事業者の皆様が、社会の多様なニーズにお応えしたいと考えているときに、実証を経てどのように社会と接合していくのかを丁寧にすり合わせていく枠組みであると考えています。

(画像はイメージです 画像=PIXTA)

要するに、単なる規制緩和というよりは、スマートなレギュレーションを追及するものであることをしっかりお伝えしたいと考えています。規制のサンドボックス制度によって、新しい技術により変化していく社会に合わせて全体の底上げが図られ、日本の経済発展を目的とした建設的な結論が導き出されると確信しています。将来的には、あらゆる利害関係も超越し、アウフヘーベンしていきたいと思っています。

−−新しい挑戦をするときに、最初から一元窓口の方々に相談したほうが無意味な軋轢を生まずに、スムーズに問題解決ができそうですね。

中原氏:そうかもしれません。私たちにご相談いただければ、さまざまな立場の方々に配慮してアプローチさせていただきたいと考えています。ただし、今回の「規制のサンドボックス制度」を推進する立場としては、全体調整をするというよりもまずは相談者の方々がおやりになりたいことを最優先し、相談者の方々のお気持ちに寄り添って進めていければと考えています。

要するに、これまでの規制や慣習が足かせになり、実際に前に進めなかった事象の問題点を明らかにするのが私たちの役割だと思っているので、あくまで目線は相談者の皆様側にあります。

もちろん、実証を行っているときも革新的事業活動評価委員会とも繋ぐなどのご支援をしたいと思っています。専門家の方々のご意見と実証の成果を含めて、最終的に社会に実装されるまで丁寧に進めていくことができれば良いと考えています。

規制のサンドボックス制度に参加することで、新しいイノベーションが生まれる

−−この制度が機能していくことで新しいビジネスが創出されると、一般消費者にとってどのようなことが波及していくと考えられますか。私たちの生活にどのような変化、便利さをもたらすのでしょうか。

中原氏:規制のサンドボックス制度は、いわば限定された期間と限定された参加者のなかで実証をしていくものなのですが、ユーザーの皆様も、規制環境を理解していただいたうえで商品を購入してみる、サービスを利用してみるといった行動で実証にご参加いただきたいと思っています。

(画像はイメージです。 画像=PIXTA)

事業者が提供しようとしているのは、間違いなく世の中を便利にする商品やサービスですから、皆様の生活を根本から大きく変えるものになりうる可能性を秘めています。実証は市場におけるユーザーの皆様と発案者の対話であり、一連のコミュニケーションのなかで新しい便利なサービスが生まれていきます。これは国民の皆様が、実証による政策形成、いわば社会ルールを作る段階から参加していることになるのです。

これまでにも私どものところに、「イノベーションを起こしたい」という想いをもって、要望やアイデアを持ち込まれてきた方はたくさんいて、私たちもそれに対して一つひとつ真摯にお応えしようとしてきました。

しかし、いつでも問題になるのは、政策立案プロセスにおいて、そのビジネスプランがもたらすインパクトをどのように実証できるのかということ。正直、やってみてはじめてわかるというところはありますし、特に最近のIoT、ブロックチェーンなどの第4次産業革命に関する技術など見ていると、ものすごい勢いで技術の進歩が進んでいます。

その速度に対応するには、果たして、霞が関の机の上の議論だけで十分なのかどうかというと、それは疑問を抱かざるを得ません。やはり実証を通じて物事を考えていくということが、これまで以上に求められていると感じています。

規制のサンドボックス制度の反響は?

−−多くの事業者にどんどん活用していただきたいですね。実際に施行してからの反響はどのようなものでしたか。

中原氏:かなりの数のお問い合わせやご相談をいただいている状況です。私たちとしても、皆様のご希望にお応えできるように身が引き締まる思いでいっぱいです。私たちが想定していたご相談内容もあれば、新たな視点でのご相談もあり、本当に勉強をさせていただいています。これからも非常に楽しみですし、さまざまなご相談を頂戴できることを期待しております。

 

中原裕彦(なかはら ひろひこ)
内閣官房 日本経済再生総合事務局 参事官

1991年 東京大学法学部卒業、通商産業省入省、大蔵省証券局総務課、米国コーネル大学 Ph.D.candidate、法務省民事局参事官室、中小企業庁制度改正審議室長、経済産業省知的財産政策室長、内閣府規制改革推進室参事官、経済産業省産業組織課長等を経て2016年から現職。規制のサンドボックス制度の創設に尽力。

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規制のサンドボックスはイノベーションを生むステージの創出 内閣官房中原裕彦氏に聞く archives/5804 Fri, 14 Sep 2018 01:00:53 +0000 ?p=5804

2018年6月に始まった規制のサンドボックスは、今後の日本のイノベーションを加速化させるひとつの制度だとして注目を集めています。海外でもサンドボックス制度はありますが、日本の規制のサンドボックスはそれらとの違いがあるといいます。海外事例との違いや想定される産業範囲について、内閣官房 日本経済再生総合事務局(未来投資会議)の参事官・中原裕彦氏にお聞きしました。

身近な悩みがサンドボックス制度を経て実証実験に

−−「規制のサンドボックス制度」について理解をより深めたく思います。この制度は日本だけの制度ですか。海外では同じような事例はありますか?

中原氏:はい。FinTech(フィンテック)の分野においては、シンガポールやイギリスでの先行事例があります。有名な事例としては、シンガポールの保険ベンチャー企業・ポリシーパルが実施した実証実験は、サンドボックス制度を利用した成功事例のひとつだといえます。

ポリシーパルの創始者である女性経営者の事例をお話します。彼女はご両親様がお亡くなりになったときに、その各種保険の加入状況が掌握できず、なかには期限が過ぎていて、支払いを受けることができなかった苦い経験もあったといいます。

(画像はイメージです 画像=PIXTA)

そこで、自分が加入している保険証券をスマートフォンで読み込めば、人工知能(AI)が分析したうえで管理をして、満期がいつで、それまでに何をしなくてはいけないのか?不足している手続きは何か?というところが一目でわかるようなシステムを作りました。

このほか、ブロックチェーンを活用した送金システムや生体認証を用いた融資(貸付)などの実証も展開されているようです。

諸外国におけるサンドボックスの前例を確認してみると、先ほど説明したシンガポールにせよイギリスにせよ、FinTechに限定されているのが現状です。

FinTechの枠を超え、日本のサンドボックス制度にはあらゆる分野に可能性がある

−−FinTech分野は海外が先行しているようですが、日本のサンドボックス制度は海外の事例とどのような点が異なりますか。また、想定している産業範囲はいかがでしょうか?

中原氏:私たちが進めている「第4次産業革命」の社会実装というのは何も、FinTechに限定するものではありません。

(画像はイメージです 画像=PIXTA)

未来投資戦略、成長戦略のなかには、もちろんFinTechも含まれていますが、モビリティ、ヘルスケア、あるいは地方創生や不動産取引、社会インフラなどさまざまな観点からの取組があり、このサンドボックス制度についても特に分野を特定しておりません。

(画像はイメージです 画像=PIXTA)

−−諸外国のように、特定分野からスタートして、段階的に広げていくという考えではないのですね。最初から間口を広げている……受け入れ側として課題はないのでしょうか。

中原氏:実際にサンドボックスの制度を構築する段階で、私たちは諸外国の方々と意見交換を重ねました。彼らがどうしてサンドボックスを実施しようとしているかというと、FinTechで使用されている技術は決してFinTechだけではなく、他分野への広がりが大きいと考えているからです。だからこの分野から素早く着手して、社会実装をしていかなければだめなのだという問題意識があったのですね。

そうならば私たちは最初からFinTech以外の分野も織り込んで社会実装を目指せば良いわけですし、実際にこれまで規制改革にかかわってきた私の経験からしますと、金融だけではなくさまざまな分野でも同じような障壁があることはわかっていました。

(画像はイメージです 画像=PIXTA)

「第4次産業革命」を進めるうえで、どういった法律が適用になるのだろうか?これまでの法制度が想定してこなかった事態が生じて、そこが障壁となることで事業者の皆様がお困りになっているという前例は、あらゆる分野において生じていました。

何もないところから社会的インパクトを立証するのが困難を極めていたのは、身をもって理解していたので、最初から広げておくのがベターであろうと判断しました。規制のサンドボックス制度は、そういった皆様の悩みにできる限りお応えするような制度であるべきだと考えています。

規制のサンドボックス制度が日本人のイノベーティブな能力を発信する一助になってほしい

−−日本は、技術力はあるものの一歩踏み出せなかった、トライできる場がなかったから、ソリューション分野において諸外国から多少の後れを取ってしまったという感覚でしょうか。

中原氏:諸外国を見ていると、特に新興国では、必ずしもルールが整備されておらず、語弊があるかもしれませんが、ルールに縛られていないからこそ新しい発想が生まれ、すぐに実行されるという部分があり、これを強みとさえ言えるかもしれません。

日本の企業は誠実で真面目で、きちんとルールを守ってビジネスを行っています。このこと自体は大切にしなくてはならないことですが、そうした中で如何にイノベーティブなことに対する機会損失が生じないようにするか。私たちが一定の条件下でトライができる場を作るという意義は大きいと思っています。

−−まさに日本の風土にマッチした「イノベーションを生むステージ」ということですね。

中原氏:そうですね。そういった意図があって、あらゆる産業領域に対して広く門戸を開いているというのが日本式サンドボックスの最大の特徴だと思っています。

−−どのような方々にご利用いただきたいですか。

中原氏:ベンチャー企業や中小企業の方たちや、新しいビジネス展開について面白いアイデアをお持ちの方はたくさんいらっしゃると思います。そういった方々にお越しいただきたいと思いますし、あるいは大企業のなかで新規事業やジョイント・ベンチャーを起こす段階においてもご活用いただければと思います。

私もこれまで、産業界のたくさんの方々とお会いしてお話を伺ってきましたが、個人ベースでは、非常に興味深いことを考えていらっしゃる方も多く、「日本人にはイノベーティブな能力がない」という話など、まったくもって違うと感じていました。単にそのアイデアをカタチにして世の中に出していくツールが十分になかったので発信ができなかったということだと考えています。

今回の規制のサンドボックス制度が、その一歩を踏み出すきっかけになればと思っています。机上ではなく実証的かつ実践的なマーケティング活動の一助になるのではないかと考えています。

さまざまなものが新しく変わってきました。過去に日本人の技術者や開発者の皆様がお考えになっていたにもかかわらず、何かしらのしがらみがあって途中で頓挫した製品やサービスが、月日を経て海外で発表され、世界的にもヒット商品となったような事例もあったのではないかと思います。その当時、この規制のサンドボックス制度があったら、現在の状況は大きく変わっていたかもしれません。私たちも、そういったアイデアを早めに世の中に出していけるようにフォローしていきたいと思っています。

中原裕彦(なかはら ひろひこ)
内閣官房 日本経済再生総合事務局 参事官

1991年 東京大学法学部卒業、通商産業省入省、大蔵省証券局総務課、米国コーネル大学 Ph.D.candidate、法務省民事局参事官室、中小企業庁制度改正審議室長、経済産業省知的財産政策室長、内閣府規制改革推進室参事官、経済産業省産業組織課長等を経て2016年から現職。規制のサンドボックス制度の創設に尽力。

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「規制のサンドボックス制度」が日本で生まれたワケ 内閣官房参事官・中原裕彦氏に聞く archives/5782 Wed, 12 Sep 2018 01:00:36 +0000 ?p=5782

「人工知能(AI)の台頭によって仕事が奪われる」という言葉を聞くことも少なくないのではないでしょうか。現在、世界では人工知能やIoTなど、さまざまな新技術を活用して、今までは考えもつかなかったようなサービスが次から次へと生まれています。日本でもさまざまなサービスが誕生していますが、新プロジェクトを遂行しようとしても、法規制がどの程度絡むのか分からずに、途中でプロジェクトを取りやめてしまう場面があった人もいるのではないでしょうか。

そんな日本の状況を踏まえ、政府は新成長戦略のもとで新しい施策をどんどん打ち出しています。そのひとつが新技術等実証制度、(通称 プロジェクト型「規制のサンドボックス」制度)です。2018年6月6日に施行された生産性向上特別措置法によって創設された制度ですが、創設の理由や概要はどのようなものなのでしょうか。内閣官房 日本経済再生総合事務局(未来投資会議)の参事官・中原裕彦氏に本制度の概要についてお聞きしました。

「第4次産業革命では日本でも新技術の社会実装が急務」規制のサンドボックスの概要とは

−−まずは、規制のサンドボックスの概要を教えていただけますでしょうか。

中原氏:サンドボックスとは、すなわち「砂場」の意。砂場ではお子さんが、砂を使ってさまざまな形のものを自由に作って壊す、という行為を繰り返すことができます。規制のサンドボックスは、まさしく「規制の砂場」と呼ばれるように、プロジェクト毎に、期間や参加者を限定したうえで、そこでさまざまな実証実験を行い、さまざまなデータを収集することで、規制の見直しにつなげていきます。

(画像=PIXTA)

いわゆる、人工知能(AI)やロボットなどの新技術が産業を大きく変革する「第4次産業革命」を迎えるにあたって、新技術の社会実装が急務となっています。限定された砂場のように、リスクが適切にコントロールされている場所でトライアルを行い、実証できる舞台を用意するまでの一連のスキームを創設したのが今回の規制のサンドボックス制度です。

(画像=PIXTA)

「限定された一定の場所」は、何も地理的な条件により設定することのみならず、主にバーチャルな「P2P」と呼ばれる空間をも対象としています。そういったサイバー空間で、何らかの基準で集められた限定メンバーを対象に期間を限定して実証を行うのがこの制度のポイントです。

事業者と政府の対話と制度作りは時代の要請

−−なぜ今、このサンドボックス制度が必要となったのでしょうか?

中原氏:これは、現在、政府において強力に推し進めている成長戦略の中の柱をなすものです。

これまでも素晴らしいビジネスのアイデアをお持ちのベンチャー企業や中小企業の方々、もちろん大手企業の方々にもたくさんいらっしゃったと思います。私たちはそうしたアイデアを実現するために、障壁となる規制を所管する省庁と議論の場を設け、少しでも前に進めようと考えてきました。

ところが、実際に規制の見直しを行うに当たっては、その新しいビジネスに社会ニーズがどれだけあるのかということと、新しい制度が施行されて起こりうる濫用の懸念について、こうやれば上手くいくという方法を提示することが求められるのが通常です。

(画像=PIXTA)

もちろん、実証実験をしたいと思う企業等の起案者の方々は、弊害への防止策を十分に検討したうえで話をお持ちいただくのですが、監督する省庁の立場としては、どうしても「果たしてそれで十分なのか?」という観点から議論が生まれます。この場合において、規制改革を要望される方にしてみれば、そうしたことを実際にやってみることができないため、そのビジネスがどのような社会的インパクトを与えるのかを机上で議論しても、なかなか証明することが容易ではなく、かなりの時間を要することになります。規制を制定した際には想定もしていなかった新技術であればなおさらです。

これまではそのような問題が生じたときには、議論を積み上げると同時に海外事例を提示しながら説明して、理解を得ることで話を前に進めてきました。ところが、現状では「Winner takes all」「ドッグイヤー」の名にふさわしいほど技術革新が激しく進んでいて、時間をかけて制度改革を行ったとしても、それができあがったときには、すっかり時代遅れになる状況もありえると思っています。

ですから、この時代の状況にできる限り寄り添った制度を設け、制度を利用する企業やプロジェクトメンバーの方々の付加価値を最大限に高めるような機能を果たさなくてはいけないと考えています。つまり、企業等の事業者と利用者である消費者との対話のなかで新しいものを作っていく必要があるということです。そのためにも実証によって新しいデータを収集したり、成果を得たりして、その次の議論につなげていく、あるいは社会実証に繋げていくことが重要になります。

一元窓口は事業者と各省庁を結びつけるプラットフォームの役割

−−そうなりますと、相談者との密接なやりとりが重視されそうですね?

中原氏:そうですね。このサンドボックス制度では内閣府と連携し、内閣官房内に一元的窓口として、チームを設けました。この窓口では皆様のいろいろな相談を受け付けて、他の官庁へとつないでいくつもりです。これまでは「この新技術に関する相談をしたいと思っていても、どこの役所に行けば良いのかわからない」と迷いがあったかもしれません。こういった迷いをできる限りこちらサイドで紐解いて、該当する各省庁はもちろん国家戦略特区や規制改革推進会議とも連携しながら進めていきたいと考えています。

もちろん、すでに各省とも連携体制を固めていて、私たちが先頭になって進めていくというルールを定めています。

−−まさに、申請サイドの背中を押して伴走するスタンスなのですね。

中原氏:規制のサンドボックス制度を実際に活用して実証実験を行いたいというご要望をいただいたときには、規制官庁との間で議題になるものは何か、そしてどうすればご要望の実証が可能になるのかを私たちのなかで整理してから各省庁に繋ぎます。そして、規制法令との関係でどこまでであれば実証が可能なのかどうかを私たちが最大限サポートして官庁と議論を進めていきたいと思います。

−−大変心強いと感じます。国の機関に相談するわけですから、あまりにも思いつきレベルの話を持ちこむのもどうかと心配になる人もいるかもしれません。ずばり、どの程度アイデアを固めてからお持ちすれば良いのでしょうか。

中原氏:ビジネスのゴールや内容を明らかにしていただきたいと考えています。どのような目的で、どういった実証をやりたいか、あるいは作りたいモノ・コトをお持ちいただければ、こちらから制度上の問題になりそうなことを可能な限りガイダンスいたします。その対話のなかで、相談者の皆様が本当にやりたいことが明らかになってくるのではないかと考えています。

これまでの前例のないことに取り組むのですから、「前例がないからわからない。だから辞める」というスタンスでは永遠に前に進めませんし、新しいものは生まれてこないと思っています。そのため、私たちも相談者の方々と一緒に前に進めていくことが重要だと考えています。

中原裕彦(なかはら ひろひこ)
内閣官房 日本経済再生総合事務局 参事官

1991年 東京大学法学部卒業、通商産業省入省、大蔵省証券局総務課、米国コーネル大学 Ph.D.candidate、法務省民事局参事官室、中小企業庁制度改正審議室長、経済産業省知的財産政策室長、内閣府規制改革推進室参事官、経済産業省産業組織課長等を経て2016年から現職。規制のサンドボックス制度の創設に尽力。

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「投資はどんな時代にも対応できる術 すぐにでも始めたほうがいい」さおだけ屋はなぜ潰れないのか?作者山田真哉さん archives/5649 Fri, 24 Aug 2018 01:00:18 +0000 ?p=5649

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の作者・山田真哉さん。公認会計士&税理士としてもご活躍中ですが、投資家としての顔もお持ちです。過去にはFXで5,000万円の大きな損をなさった山田さんより、今後投資を始める人に心構えをお聞きしました。

投資はいくらからスタートしたらよいのか

――はじめて投資をしようと考えたら、まず、どのくらいの金額を用意するのが妥当なのでしょうか。

はじめて投資をしようと思ったら、まず、“飲み会何回分だったらOKか?”というとらえ方をすれば良いと思います。例えば、一度の飲み会が5,000円くらいかかったとします。10回は飲みに行くのを我慢できると思ったら5万円から始めればいいし、週1回我慢できるのであれば、5,000円×50週で25万円を投資できる。これらはあくまで、投資したお金がゼロになる可能性があるという前提ですね。FXとか、今だったら仮想通貨とかですかね。

ゼロになっても良いとは思えない投資、例えば、株式投資や投資信託に関しては、逆にゼロになることは難しいので、“いくらか減ってもいいかな”という気持ちで臨んでください。だいたい、プラスマイナス10%くらいになるのはよくある話なので、ということは、例えば、50万円を投資して、5万ぐらいは減ってしまう可能性があるということ。まあ、飲み会10回分くらい損してもいいやと思えるかどうか、そういった計算のなかで、自分が投資しても良いと思える金額を考えるといいでしょう。

投資の勉強で何が大事かといえば、どんな種類があるかを知ることだと思うのです。これまで何の投資もしていなかった人で、結局、“不動産投資は儲かるらしい”“シェアハウスが流行っているらしい”と希薄な根拠で投資すると失敗します。投資には色々な種類があるということを学べば、逆に“なぜシェアハウスを選ぶのか?”という観点になります。

勉強していれば、ワンルームがいいのでは? 中古物件だっていいのでは?という選択肢が生まれますよね。もちろん、はじめての投資は怖いから、なかなか手が出せないという人もいます。そういう方はまず、シミュレーションをやってみればいい。みずほ証券さんも用意されていますよね。

NISAやiDeCoは活用すべき?

――NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)など、政府が投資を後押しするような制度が登場していますが、これらの制度は使ったほうが良いのでしょうか。

使わないほうがおかしいとさえ思いますよ。お金を貯めるのが苦手な人の多くは、往々にして、こういった国の制度や税制を知らないから損をしている。助成金や補助金などをきちんと活用しきっている人はそれほど多くないですよね。そういった情報はWEB上に展開されている金融情報や、「週刊マネーランド」みたいなラジオ番組で入手できます。

今は、それこそ情報なんて無限に存在する時代です。本や雑誌も良いですが、一番手っ取り早く確実なのが、人に聞くことです。詳しい人に聞くなり、リアルの証券会社で口座を開いてみるのが有効ですね。ネット上では情報が錯綜しているといいますか、検索していると古い情報も出てきたりします。難しい話を理解するのは、ネット上の文章を読み込むより、動画でみたり、実際に話を聞いたほうが早い。そういった意味で、証券会社の窓口に行って、話を聞くのは非常に有効な手段だと思います。

――投資がうまくいっている人とそうでない人の間に、どのような考え方や行動の差があるのでしょうか。

投資がすごくうまくいっている人と、普通にうまくいっている人と、そして、うまくいかない人の3種に分かれると思っていて、すごくうまくいっている人は、本当に情報が早いですよね。一昨年には仮想通貨をはじめて、昨年にはもう手仕舞いして、あっという間に3,000万円儲けた友人がいます。

うまくいく人は、しっかり仕組みを作っているという特徴があります。天引きで自動的にiDeCoをやっていたり、つみたてNISAをやっていたりして、確実に利益を生んでいます。

うまくいっていない人の特徴は、ある日突然、投資に目覚めて、ある日突然、たくさんお金を借りて、そして投資して、しばらく放っておく。これがだいたいうまくいかない人のパターン。しかも人から聞いて、“これがいいよ”と言われたからうのみにして、本当はもっと良い投資先があったのにも関わらず、まとめて投資をしてしまう。

例のシェアハウス投資のパターンですね。まったく裏を取っていない。いきなり始めて最初から高額投資をする。これって株や投資に限らず、保険や家の購入などにも共通して言えると思います。

人生100年時代といわれる今、資産形成層はどのように生きるべきか

――人生100年といわれる時代を迎え、30代、40代の人は、この先、どのように生きていけばよいか。指針となるお言葉をいただけますか。最後に山田さんの今後の活動についても併せてお聞かせください。

40年後って、もはや見通せないですよね。1978年の時点で、絶対に2018年なんて予測できなかったのではないでしょうか。でも、20年後であれば何とか予想できる。1997年の段階では、今がコンピュータ社会になることは多くの人がほぼ読めていました。

そう考えると、30~40代は自分が50~60歳になるまでは見渡せるので、色々と始めるにはちょうど良いかもしれません。資産を形成するためには積み立てが良いと思います。どう考えても、株価は世の中の流れに連動しているので、今、一気に買うのにはリスクがあります。

60代~70代になると、もう人生も残り少なくなって、時間分散ができません。いわゆるドルコスト平均法が適用できるのが30~40代まででしょう。しかし、子育てのお金がかかってきますから、資金の流動性は確保しておくべきでしょうね。資金が20年とか25年固定されるものはやめておいて。まずは3~5年預けるつもりで、少しずつ、増やしていけば良いのではないでしょうか。

私自身のこれからについては、とにかく時代の流れに追い抜かれないようにするだけですよ。会計士、税理士の仕事がどこまでAIに食われていくかわかりませんが、まずはAIに詳しくなくてはいけないし、AIを作れないのであれば、それを利用する側にいくしかありません。そのために、常にアンテナを張っておく必要はあります。

お金を投資したり、利息がつくという制度は、おそらく、この先も変わることはないでしょう。もう4,000年くらい変わっていませんから。そう考えると、どんなに時代が変わろうとも、投資をしておくという選択肢は外せませんね。

 

山田 真哉(やまだ しんや)
公認会計士・税理士
一般財団法人 芸能文化会計財団 理事長

神戸市生まれ。公認会計士・税理士。大学卒業後、東進ハイスクール、中央青山監査法人(現・PwCあらた有限責任監査法人)を経て、芸能文化会計財団の理事長に就任。
主な著書に、160万部のミリオンセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社)、シリーズ100万部『女子大生会計士の事件簿』(角川文庫他)。
現在は『浅野真澄×山田真哉の週刊マネーランド』(文化放送)・『坂上&指原のつぶれない店』(TBS)等にレギュラー出演し、約60社の顧問、内閣府の委員等を務めている。

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大損から得た教訓は多数「分散は大事、基本路線は長期投資」ベストセラー作家兼公認会計士・山田真哉さん archives/5656 Mon, 20 Aug 2018 01:00:19 +0000 ?p=5656

公認会計士&税理士にして、ベストセラー新書『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』で知られる人気作家の山田真哉さん。山田さんは有価証券投資にも取り組まれています。大きな損をしたこともあることで知られる山田さんご自身の投資体験について赤裸々に語っていただきました。

投資は社会人デビュー 大学卒業後、すぐに投資信託を始める

――投資を始めたのは、いつからだったのでしょうか。

山田:最初に投資を始めたのは、社会人になりたての頃。東京の予備校に就職したタイミングですね。“社会人足るもの、やっぱり投資だよね”と思って、証券会社に行って口座を作り、50万円の投資信託でデビューを果たしました。なんか、学生のときから、“大人になったら、みんな日経新聞読んで、投資をしているんだろう”っていうイメージを勝手に抱いていたのですね。

その資金は、学生の時にアルバイトで貯めたものです。予備校の講師として、月20万円は稼いでいましたから、就職した段階で200万円くらいの預貯金はありましたので、そこから50万円だけ投資に回したのです。

最初に購入した投資信託は、その後、減ったり、戻ったりといった感じで推移していったのですが、例の「女子大生会計士の事件簿」を自費出版したときに解約しました。要するに、それだけ貯金があったから、出版ができたということですよね。

真剣に投資に取り組むようになったのは「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」が売れてからのこと。印税が入って貯金が見る見るうちに増えていったので、“なんかやったほうがいいよね”と考えたのですね。そんな折、知り合いのビジネス書の作家さんから、FXでものすごく儲かっているという話を聞いて、やってみようかなと考えました。

同時に株式投資もスタート 基本路線は長期投資

同時に、株式投資も始めていました。監査法人に勤務していた時代は、株価には注目していましたが、インサイダーになるので、購入はできませんでしたから、フリーになった時点で購入。ちょうど2006年頃、日経平均株価1万6,000円の時代にまとめて買って、2007年からのサブプライム問題、続けてリーマン・ショックでワーッと落ちて、以降、悲惨な状態が続いていました。最近ようやく戻ってきたというところですね。

たまに売り買いはしますが、基本は長期投資。原則、売らないと決めています。当初はナンピン買いもやったりしましたが、時間を費やす割に儲からないというか、見合わないとわかってやめました。

結局、株の取引で一番難しいのは、売るタイミングの判断ですよね。売らなければ考える必要もないので。基本的には買い足すだけ。だから株主優待や配当利回りが良いところだけ買って、保持しているという状態です。あとはつぶれない会社に投資する。ですから、決算書をじっくり読むのも四季報レベルでOKですよね。

FXで5,500万円の損。多額の勉強代に

山田さんは続けます。

FXはかなり激しい動きがありました。もう2006年から2007年にかけての時期は、FXをやっていたという記憶しかないくらい(笑)。最初は100万円からはじめて、それが700万円になった。これはいいと買い足していって、実際に突っ込んだのは1,800万円ほど。スワップポイント(金利)で、毎日利息を受け取っていたのですが、当時、1日5万円が入る生活を送っていました。

それはもう、働く気などなくしますよね。たまに本を書いてTVや講演会に出てと、自分の好きな仕事だけを選んで受けるような日々。このまま運良くいけば、死ぬまで1日5万円が入ってくる生活が送れるのではないかと、そんな錯覚さえ覚えていました。

でも、そんな夢のような暮らしにはやがて終わりが訪れます。サブプライム問題から世界同時株安が発生し、一気に円高に振れ、5万円あったスワップポイントが1万円に、やがてスワップポイントがあったりなかったり、そして、2008年11月には、5,500万円あった残高が、最終的には8,211円になりましたから、本当に恐ろしい終焉を迎えることになりました。

うまく行っているときはそれにとらわれる。教訓は忘れない

――凄まじいご経験ですね。そこから得た教訓はどのようなものだったのでしょう?

山田:ちゃんと働いた方がいいと思いました(笑)。結局、労働収入って安定しているなと。給料は30万円からいきなり3万円にはなりませんからね。それで2009年に会計事務所を作ろうと考えました。

これまでずっと一人でやってきましたが、まずは事務所を作って人を雇って、私も税理士の資格を取得。現在の「一般財団法人芸能文化会計財団」の原型をスタートさせました。2010年から、毎年少しずつ人を入れていって、今では12人の所帯となりました。

まあ、借金をしたわけではないので、それは本当に良かったです。FXはレバレッジ100倍でやっていたので、55億円動かしていたんですよね。当時は、かなり落ち込みましたし、奥さんとの間では、今でも資産が「5,500万円だったときに換金しておけば、家が買えたのにね」という話になります。

最終的には、そんなにおいしい話はないという教訓を得たのですが、人って不思議なもので、うまくいっていると、そこにとらわれてしまうのですね。今となっては、長期の株式投資とFXの両建てでやっていたことで救われました。

 

山田 真哉(やまだ しんや)
公認会計士・税理士
一般財団法人 芸能文化会計財団 理事長

神戸市生まれ。公認会計士・税理士。大学卒業後、東進ハイスクール、中央青山監査法人(現・PwCあらた有限責任監査法人)を経て、芸能文化会計財団の理事長に就任。
主な著書に、160万部のミリオンセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社)、シリーズ100万部『女子大生会計士の事件簿』(角川文庫他)。
現在は『浅野真澄×山田真哉の週刊マネーランド』(文化放送)・『坂上&指原のつぶれない店』(TBS)等にレギュラー出演し、約60社の顧問、内閣府の委員等を務めている。

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「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?作者が教える」決算書の読み方のコツ archives/5658 Fri, 17 Aug 2018 01:00:42 +0000 ?p=5658

公認会計士&税理士、そして、作家としても精力的に活躍を続ける山田真哉さん。公認会計士や税理士というお仕事柄、決算書をご覧になる機会も多いのではないでしょうか。これから投資を始めてみたい人、別の会社に転職を検討している人はもちろん、決算書の読み方が気になるなら、山田さんの今回のお話はためになるはずです。

決算書は投資家?取引先?どちらで見る?

――山田さんはお仕事柄決算書をご覧になることも多いと思います。企業の決算書を見ると、どのようなことがわかるのでしょうか。注目すべきポイントなどを教えてください。

山田:少し専門的な話になりますが、どういった目的で決算書を読みたいのかによって、見るべきポイントは変わってきます。投資家として見るのか、取引先として見るのかでは大きな違いがあるのです。

決算書は、こう言っては不謹慎かもしれませんが、あくまで“ご遺体”みたいなものだと思っていて。犯人を捜したいのか、それとも死因を調べたいのかによって、アプローチが変わってくる。現場で活躍する捜査官が、DNAや指紋を採取して検証するように、なかなか素人では判断のつかない部分は正直あります。

ただ、素人であっても、外見から判断できるパーツというのはあって、それはいわゆる顔の部分ですね。売上は企業の規模を表す、いわばその人の顔の大きさ。この大きさって、実はけっこう大事で、例えば、売上100億円の会社が利益を200億円出すことはできません。利益は、最終的なその会社の実力ですから。結局、会計の考え方って“利益が大きければその会社はより成長します。だから幸せですね”と。いわば幸福度の数値化なんです。

まあ、それって人間には難しいですよね。“幸せとは何か?”って、もはや哲学の領域ですから。ところが会計の世界では、「利益が出れば幸せだね」という世界観ですから、利益が出れば出るほどいいし、増えれば増えるだけ幸せなんです。

直伝!危ない会社の見分け方

そういった観点から、では、どうやって危ない会社を見分けるのか?という話をします。よく話題になるのは“粉飾決算”、すなわち嘘の決算書を作成して公開するというものですね。ステークホルダーから良く見られたいと考えて、利益を多めにかさ上げをする。ということは、売上が架空である、もしくは経費を隠している、この2つの可能性があります。

外から決算書を見るだけでは、なかなかわからないですよね。そのために会計士がいるのですが、それでも見抜けないことがあります。でも、どこかから噂が広まります。そんなに売上はないよね…とか、逆に、もっと売上があるはずなのに、隠しているのではないか…とか。

最近は、SNS上でさらされますから、付きあってはいけない会社は口コミで広がります。要するに、数字だけで気がつくのは難しいですから、文章で見て知って、数字で裏付けを取るというのが正解なのかと思います。

卑近(ひきん)な例で言えば、私には今、あるクレジットカードの契約を続けるかどうかという悩みがありまして、非常にポイント還元率が高い、夢のようなカードだったのですね。

ところが、6月1日に規約が改定されて、使用量によってポイント還元率が変わるという話になりました。しかもポイントの上限も設定されるという。私は事務所の経費の支払いにすべて、そのカードを使用していたので、ポイント還元率は高いままで維持できる可能性はあっても、上限をオーバーする可能性がある。

このまま使っていていいのかどうか、迷っていたときに、このカード会社の決算書を見たのですね。すると、売上が2億円であるのに対して経費が29億円、大赤字だったので、それは規約を改定するだろうと納得しました。そもそもポイント高還元率の維持が無理だったのだと。こういったカタチで数字の裏付けをとったわけです。

これがもし、利益が出ていたら、もっとおもしろい追加サービスが出るかも?なんて期待もできたのでしょうけれども、黒字化するまでサービス内容が良くなることは考えづらいんです。

なんでも裏付けをとっておくことが大事

裏付けを取ってみたときに、そこに矛盾があったとしたら、何かあると疑ったほうがいいですよね。評判はすごく良いけれど大赤字だったり、その逆も怪しいですよね。人気がないのに利益が出ているとしたら、それは粉飾決算の可能性があります。このように、大本を確かめるのはかなり大切だと思うのです。

例のシェアハウス投資って、「女性に人気です」と言う文脈は確かにありました。その噂を確認するために数字を見てみると、入居率は30%とか10%とか。ここに投資する選択肢などあり得ないのに、多くのサラリーマンは忙しさにかまけてしまったのか、数字を確認するという行為を放置。宣伝マンと銀行の言うことを聞いて、ポンポン借りて投資した結果が…ああいった事態を招きましたから。

文脈だけでも怖いし、数字だけでも怖い。文脈を理解したうえで数値に落とし込まないといけないですよね。投資をするのに裏をとらないのは、もはや無謀としか言いようがありません。シェアハウス投資などは、地域の坪単価を聞けば高すぎると気づくはずです。建築費ってこんなにする?とか、ネットやSNSで拾ってくれば、こんな情報はすぐ手に入るはずなのですが…。人脈も大事ですよ。知り合いの不動産屋に聞けば、すぐに危ないとわかります。

――だまされる側にも問題があるということですね。

山田:そういう教育を受けていないからですよね。裏をとるって、誰からも教わってきていないではないですか。性善説をとっていますからね。だからこそフェイクニュースに踊らされたりする。お金がらみの話において裏をとるのは、今はそれほど難しくないので、そこはぜひ習慣化してほしいですよね。

 

山田 真哉(やまだ しんや)
公認会計士・税理士
一般財団法人 芸能文化会計財団 理事長

神戸市生まれ。公認会計士・税理士。大学卒業後、東進ハイスクール、中央青山監査法人(現・PwCあらた有限責任監査法人)を経て、芸能文化会計財団の理事長に就任。
主な著書に、160万部のミリオンセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社)、シリーズ100万部『女子大生会計士の事件簿』(角川文庫他)。
現在は『浅野真澄×山田真哉の週刊マネーランド』(文化放送)・『坂上&指原のつぶれない店』(TBS)等にレギュラー出演し、約60社の顧問、内閣府の委員等を務めている。

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