お金のコラム – お金のキャンパス 金融や経済のことをもっとわかりやすく Thu, 22 Apr 2021 07:20:45 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=4.9.8 信用取引で資産が1年間で〇倍に!なぜそうなったのか振り返ってみた。【第2回:この1年間でやったこと】 archives/8965 Thu, 22 Apr 2021 07:00:00 +0000 ?p=8965

この連載は、そろそろ老後のことも気になりだした一般の個人投資家 白鳥さん(60代前半男性・素顔はちょっとコアラに似ている)が2018年にスタートした信用取引を振り返るシリーズ「第3弾」です。いままでの体験記と合わせてお読みいただき、お楽しみください。

第一弾 「110万円からはじめるリアル投資の全記録。白鳥さんの信用取引体験日記」を読む
第二弾 性格も知識も異なる二人で、100万円を元手にネット信用取引に挑戦!を読む

信用取引によって、ここ1年間で資産を6倍に増やしたという白鳥さん。いったい、どのようなやり方でそのような成果を出すことができたのでしょうか?全4回で詳しく解説していただきます。

第1回 成果をもたらした投資スタイル「白鳥流・時間分散投資」とは?(本記事)
第2回 この1年間でやったこと(本記事)
第3回 データからみる成果検証(後日公開)
第4回 経験から学んだ「My 絶対ルール」 (後日公開)

いきなりコロナショック、どうする?

新しい投資スタイルの準備が整ったので早速開始したのが昨年の2月中旬。しかし、いきなりコロナの影響で株価が暴落してしまい、出鼻をくじかれた形となりました。1ヵ月後、信用売りを使って何とかトントンに戻したところで、続けるか、一旦様子を見るか考えました。周りの知人を見ると、ここがチャンスと過熱する人もいましたが、しばらくは怖いから撤退する人の方が多いように感じました。
私はチャンスと過熱したわけでもありませんが、勉強の意味も込めて慎重に継続することにしました。

はじめてのETF

2月からの株価暴落のなか、トントンに戻せたとはいえ、慣れない信用売りを繰り返したことで、少々精神的な疲労が溜まりました。そして、より疲労の少ない投資方法はないかと思っていたところで、「日経平均のETFが人気!」という記事をネットで発見。早速、投資経験の豊富な知人に聞いたところ、NF日経レバというETFを教えてくれました。

NF日経レバとは

「NEXT FUNDS日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」のことで、日経平均の変動率が+1%変動すると、前日比の+2%(-1%変動すると、-2%)変動するように設計されたETFです。
※ 2営業日以上の期間においては、複利効果により日経平均の変動率の2倍とならない可能性があります。

それまでは、テクニカルチャートの買シグナルなどを参考にしながら銘柄を選択していましたが、銘柄を決めてしまえば銘柄選択時間は不要になり、しかも日経平均に投資するのであれば、通常の企業の株式に投資するよりも、日常的に見ておく投資情報も限定され、疲労がより少ないのではと考えました。
また、情けない話ですが、実はこれまで、様々な銘柄選択の方法を試してきたつもりなのですが、銘柄選択のセンスが磨かれた気が一切しなかったこともあり、すぐにこのETFで「白鳥流・時間分散投資」を試すことにしました。

投資を「慎重に継続する」ために、重要な「計画」

エクセルで自作した時間分散投資シミュレーターを使って、新規建てを行うようにしました。例えば、100万円あるとすると、ネット信用取引では2.5倍の250万円程度までの取引ができますが、2倍の200万円を投資可能額としました。ナンピン回数(初回投資分を含めて)を5回とし、許容損失額をマイナス15万円とセットすると、株価が2.5%下落する都度ナンピン買いをすることが決まります。ナンピン回数を10回にするとどうなるか、許容損失額を30万円にするとどうなるか、などいろいろシミュレーションしながら、計画を立てます。

ナンピン買いや損切りタイミングだけでなく、利益確定タイミングもシミュレーションしながら計画を立てます。

実際の日々の行動パターン

以前にもご紹介しましたが、還暦を過ぎても仕事は毎日しているので、株価ボードに張り付いているわけにもいかず、必然的に投資に割ける(損益確認や、返済・新規建てをする)時間は限られてきます。そして日々の行動はパターン化してきます。
コロナの影響でお客さんと夜に一杯やることが激減したため、早く家に帰るようになりました。そして、早く寝るため早く目が覚めてしまいます。起きたところで、確認しても何ができるというわけでもありませんが、一応、海外の日経平均先物(CMEとSGX)をチェック。日経平均に影響を与える外的要因になりそうな情報をNHKのワールドニュースや日経モーニングプラスFTで確認。その後、NHK朝ドラを見ながら朝食をとり、これまた知ったところで何もできないのですが、「みずほ証券 株アプリ」でNF日経レバの気配値をチェックしながら仕事の準備。そして、仕事に出かけるバスの中、株アプリで本日最初の資産チェックをします。

新規建てや返済をするのは、基本、一日4回(前場後場の始まりと終わり)程度です。仕事をしながらなので多少の前後はありますが、ルーティーンとしてこなします。

気配値のチェックや日中のルーティーンは、すべてスマホで行います。仕事をしながらでも、気づいたときにすぐに使える株アプリはやっぱり便利。いまの投資スタイルに欠かせません。
「みずほ証券 株アプリ」について詳しくはこちら

株アプリで行うこと

新規建てしたあとは、1日4回のタイミングが来たら、株アプリにログインして「建玉一覧の個別表示」をチェックします。評価損益合計が、利食いラインを超えたり、損切りラインを下回ったりしたらすぐに躊躇することなく一括返済。

もちろん、返済は見たタイミングで行うので、マイナス15万円を許容限度としていても、「ありゃ~、マイナス18万円になっている」ということも。利益確定額を3万円としていても「やった~、プラス10万円にもなっている」ということになります。むしろ、ライン通りに返済できることはまずないという繰り返し。そして、利食いラインにも損切りラインにも到達しておらず、一番新しいナンピン買いの損益が次のナンピン買いのタイミングを示していたら次のナンピン買いを実施。

アラートメールを設定するなどして、リスクマネジメントを徹底したいところですが、ナンピン買いするたびに設定株価を計算しなければならないためかなり面倒。リスクヘッジできる何らかの方法がないと怖いといえば怖いが、一方で、時間が食われないので疲労がほとんどないのも魅力があり、結局、疲労が少ない方を選択。株アプリを使っている時間は、操作に慣れたということもあって1回当たり1~3分程度。1日4回程度なので、実際は、なんと、1日数分から多くて10分程度しか触っていないことになります。

資産に応じたリスクの調整

資産が増えていくと、とれるリスク(許容損失額)も大きくすることができるようになります。資産は返済の都度変わっていくので、新しいナンピンサイクルに入る都度、許容損失額を変えていきました。例えば、資産が100万円の時は許容損失額をマイナス15万円に、資産が250万円の時はマイナス30万円に、資産が500万円の時はマイナス110万円に、といった具合です。

資産に応じてリスクを調整

資産額 100万円 300万円 500万円
投資可能額 200万円 500万円 1,000万円
最大ナンピン回数 5回 5回 10回
許容損失額 -15万円 -30万円 -110万円

我慢の時期もあった、資産6倍までの道のり

今回の取り組みを始めて3ヵ月半後に資産が2.5倍になったところで、株価が大きく動かない時期がありました(下図の赤枠)。利益確定額に到達する気配もなく、いよいよ許容損失額(この時はマイナス30万円)を経験するのかと覚悟を決めていたのですが、結局マイナス30万円に達することはなく、2ヵ月後に利益確定額オーバーで返済。以後これまで、許容損失額での返済を一度も経験することなく経過。結果、資産は6倍になりました。

次回は、成果の要因は何か?単なるラッキーなのかについて、冷静に検証してみたいと思います。

第1回 成果をもたらした投資スタイル「白鳥流・時間分散投資」とは?(本記事)
第2回 この1年間でやったこと(本記事)
第3回 データからみる成果検証(後日公開)
第4回 経験から学んだ「My 絶対ルール」 (後日公開)

【過去の「信用取引シリーズ」】
110万円からはじめるリアル投資の全記録。白鳥さんの信用取引体験日記~50代男性がお金と健康な身体を手に入れるまで~
性格も知識も異なる二人で、100万円を元手にネット信用取引に挑戦!

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信用取引で資産が1年間で〇倍に!なぜそうなったのか振り返ってみた。【第1回:成果をもたらした投資スタイル「白鳥流・時間分散投資」とは?】 archives/8785 Wed, 31 Mar 2021 09:00:00 +0000 ?p=8785

この連載は、そろそろ老後のことも気になりだした一般の個人投資家 白鳥さん(60代前半男性・素顔はちょっとコアラに似ている)が2018年にスタートした信用取引を振り返るシリーズ「第3弾」です。いままでの体験記と合わせてお読みいただき、お楽しみください。

第一弾 「110万円からはじめるリアル投資の全記録。白鳥さんの信用取引体験日記」を読む
第二弾 性格も知識も異なる二人で、100万円を元手にネット信用取引に挑戦!を読む

信用取引によって、ここ1年間で資産を6倍に増やしたという白鳥さん。いったい、どのようなやり方でそのような成果を出すことができたのでしょうか?全4回で詳しく解説していただきます。

第1回 成果をもたらした投資スタイル「白鳥流・時間分散投資」とは?(本記事)
第2回 この1年間でやったこと(順次公開)
第3回 データからみる成果検証(順次公開)
第4回 経験から学んだ「My 絶対ルール」 (順次公開)

成果をもたらした新しい投資スタイル

“老後の資産形成”をしようと思い、信用取引を始めたのが2年半前の2018年11月。最初の2ヵ月で、元手の110万円が2割増しの130万円になり、このペースで増えていくと1年後に300万円を、2年後には1,000万円を、5年後に3億円を超えるなどと取らぬ狸の皮算用をしたところで、そんなふうになる気配はもちろん無いまま1年以上が経過しました。

当時も自分なりの投資スタイルを考えて実践していたのですが、より“老後の資産形成”につながるような“新しい投資スタイル”を考え、2020年2月から実施したところ、1年間で元手が6倍になりました。何故そうなったのかを、今後の学習のためにしっかりと振り返っておきたいと思います。第1回の今回は、その「新しい投資スタイル」を公開したいと思います。

「損益ライン徹底」の課題

信用取引を始めた当初は、1回あたりの建玉の金額と最大の建玉数を決め、利食いライン、損切りラインを明確に決めて、躊躇なくこれに従うといったルールで進めてきました。

当初の投資スタイル<3つのルール>

① 建玉は常に5つ。(返済したら追加)
② ひとつの建玉は[保証金の2倍]÷5
③ プラス10%で利食い、マイナス5%で損切り。迷わない。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。

徹底したローリスク・ローリターンを貫いたつもりなので、当然大きな損を抱えることはなかったのですが、老後のための資産形成という意味では物足りない状況が続いていたのも事実でした。大まかに振り返ってみると、相場が上昇傾向のときは利益が積み重なり、下落傾向のときに損失が膨らむ、この繰り返しでトータルではあまり増えないという当たり前の結果が続いていました。

取引1:株価上昇に応じて建玉Aを返済して利食い。同額の玉(建玉B)を追加。
取引2:株価下落に応じて建玉Bを返済して損切り。同額の玉(建玉C)を追加。
    以下、建玉Eの追加までくりかえし。
取引3:株価上昇に応じて建玉Eを返済して利食い。同額の玉(建玉F)を追加。

もちろん、銘柄選定や株価予測が上手な方であれば、この方法でも充分に資産は増えていくのだろうと思いますが、私にはとてもその能力があるとは思えないため、利食いや損切りのやり方について、もう一段リスクをとったスタイルを考えてみることにしました。

封印していた投資法“ナンピン買い”解禁

信用取引を始めて間もない頃に、私が信頼する証券マンの友人から「ナンピン買いは危ないので、やめておいた方がよい」と言われていたこともあって、ナンピン買いはほとんどやらなかったのですが、利食いと損切りの繰り返しをブレークスルーするために、挑戦することにしました。下図のように、損切りを少し我慢することで利益につなげることを期待するものなのですが、「ナンピン買いは危ない」と聞いているので、まずは何が危ないのかをじっくり考えて、リスクを回避する方法を自分なりに見出すことにしました。

ナンピン買いとは

「ナンピン」とは「難=損」+「平=平均」からなる言葉で、損失を平均化することを指します。例えば、評価損益がマイナスになった時点で損切りをする手もありますが、一方で、その後の株価上昇を期待して買い増すという手もあります。これをナンピン買いといいます。これは、投資信託の積み立てでよく説明されるドル・コスト平均法の考え方に近い投資方法で、買い増すたびに平均取得単価を下げていくという考え方です。

取引1:株価上昇に応じて建玉Aを返済して利食い。同額の玉(建玉B)を追加。
取引2:損切りせずに同額の玉を買い増し。平均取得単価を下げながら株価の上昇を待つ。
取引3:株価上昇に応じて建玉B~Dを一括返済して利食い。

“ナンピン買い”に潜むリスクを考えてみた

(1)損切りラインが分からなくなる
ナンピン買いの経験はありませんでしたが、何度か真似事はしたことがあります。最初のリスクはすぐに感じました。当時、50万円投資して利食いライン、損切りラインをそれぞれプラス5万円、マイナス2万円としたのですが、マイナス2万円になったときにルールを破ってしまい、同じ銘柄でもう50万円追加投資(建て増し)をしました。そして、すぐに「あれ?追加投資した時点で評価損2万円抱えているから、新たに設定すべき損切りポイントは2万円よりも大きくなるのは分かるが、一体いくらにセットすればよいのか?」と、すでに損切りラインを見失っていることに気付きました。つまり、ズルズルと損失が膨らむ可能性が高い状態になっていたのでした。

(2)投資額のマックスが分からなくなる
上記とは別の時期に、ナンピン買いに関するさらに危険な経験をしたことがあります。ある銘柄を30万円信用買い、損切りラインになったので、30万円ナンピン買い。株価は上がらず、引き続き下落。その結果、何度もナンピン買いをしてしまい、気が付くと、信用建余力がなくなってしまいました。「これまで見たこともない多額の建玉にビックリ!とにかく株価上がって~!」と祈る日々。「『下手なナンピン、スカンピン』とはこのことか」などと思いつつも、幸運なことに1ヵ月ほどして株価が上昇し、事なきを得ましたが非常に危険な体験でした。このときは建玉の上限を決めずにいたことに後から気付きましたが、同時に、ナンピン買いをするタイミングも、ナンピン買いする額や回数も、どう考えたらよいのか手がかりすら持っていないことにも気付きました。

(3)利食いラインも分からなくなる
損切りラインが分からなくなるほど重症ではないかもしれませんが、利食いラインに迷いが出てくることもあると思います。初回投資(例えば50万円)で利食いラインを5万円とした場合、ナンピン買いを繰り返して投資総額が200万円になると「50万円で5万円ねらっていたのだから、200万円なら20万円、せめて10万円は欲しい」と思うかもしれません。これについては「投資額が50万円のときよりも、投資額が200万円のときの方が期待した利益に到達する可能性が高く、到達するまでの時間も遥かに早い」と考えることが大切だと思っています。

2020年からの投資スタイル「白鳥流・時間分散投資」

このナンピン買いについてのリスクが前述のようなものであるとするならば、1回当たりの建玉額、建玉額合計の限度額、損切り額、利食い額を決めておけば、ナンピン買いのリスクもある程度は回避できることが分かりました。

例えば、ナンピン買いについて以下の条件を設定したとします。条件を設定することで、ナンピン買いのタイミングも利食い額に到達する株価も、損切り額に到達する株価も、あらかじめ決まります。

ナンピンルール 新規建て・返済ルール
• 1回の建玉は20万円まで
• 建玉合計は100万円まで
• ナンピン回数は4回まで
• 利食い額はプラス3万円
• 損切り額はマイナス15万円
• 返済は一括返済のみ
• 新規建ては一括返済直後に行う

この条件に従って、初回に株価20万円投資したとして、以降ナンピン買いを4回繰り返して投資額が100万円に到達した時点の損切り額をマイナス15万円とセットすると、ナンピン買いのタイミングは株価が5%下がるごとになることが決まります。

そして、初回の投資で目標の利食い額3万円に到達するには100円の株価が115円にならなければなりませんが、4回目のナンピン買いをした場合は、それまでの全建玉の評価益が3万円に到達するのは株価が93円になったときになります。

これは、建玉が毎回同一の額として、ナンピン買いのタイミングは株価が同じ額で下がる都度とした場合という前提条件で計算しています。前提条件によっては数字は変わりますが、いずれにしても「損切りするのがもったいないので、場当たり的に、漠然と追加投資する」のではなく、いくつかのルールを決めておくことで「あらかじめ下がったときのことを考えて、最初から計画的に時間を分けて投資する」ことが可能となります。さらに、初回の投資をする前から着地点がイメージできるので、予想外の事態が起きたといって慌てることも少なくなると考えました。

次回はこの「白鳥流・時間分散投資」による信用取引の、1年間の軌跡を具体的にお話ししたいと思います。

第1回 成果をもたらした投資スタイル「コアラ流・時間分散投資」とは?(本記事)
第2回 この1年間でやったこと(順次公開)
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脳科学者中野信子が語る! 第3回 子どもの可能性を育てる脳育を考える(後編) archives/6635 Fri, 12 Apr 2019 01:00:31 +0000 ?p=6635

気鋭の脳科学者・中野信子先生に、お金と脳の関係をテーマにお話していただくシリーズ。「教育」をテーマにした後編では、多様化が進む社会でたくましく生き抜く力を、親として子どもにどう教えればいいのか。子どもに健やかな自己肯定感を育む方法について、語っていただきました。

自分の人生の選択を肯定できる人は、幸運がつかめる

──前編のお話でうかがった、多様化が進む社会で求められる「自分が選んだ答えを正解だと主張できる力」。このような力を育むには、親としてどう子どもに接すればいいのでしょうか。

中野:厳しい言い方になるかもしれませんが、それは、親自身が誰かの決めた「正解」に合わせた生き方ではなく、自分で選んだ答えを「正解」だと言える人生を歩んでいるかによるのではないでしょうか。

人生に何一つ後悔のない人など、いないはずです。ただ、人生のさまざまな場面で選択してきたことが「いろいろあったけれども、やはりこれで正解だった」といえる人を、私は幸運だと思います。いわゆる運のいい人と悪い人を比べても、人生で遭遇している事象にあまり違いはないことが多いもの。一方で、その事象に対する捉え方、考え方が両者では大きく違う。「正解を選んでいる」と思える人は、何かうまくいかないことがあっても、自分に至らないことがあったのではないかと考えて、変わろうと努力をします。しかし、「正解を選べていない」と考える人は、うまくいかないことの多くを「選択を間違ったせい」にして、自分を変えることをしません。

子どもに対して、「私はこんな選択をして失敗したから、あなたは気をつけなさい」という教え方は、子どもの選択肢を狭めるネガティブなメッセージになりかねません。また、「私はこれで正解だったから、あなたも選ぶといい」というメッセージも、同じように親の価値観の押し付けになってしまいます。さらに、これまで以上に変化の激しい社会のなかで、親の世代と子どもたちでは、働き方も生きる環境も、大きく変わっています。「私はこれが正解だったと思うけれど、あなたにとっては違うかもしれない。だから、自分でちゃんと考えなさい。」と伝え、子どもの選択を応援してあげる気持ちが大切だと思います。

──子どもと親の価値観が違ってくる時期として、反抗期がありますね。

中野:脳において知能を司るのが、前頭前皮質の背外側部(はいがいそくぶ)と呼ばれる部分です。この部分は、いわゆる思春期といわれる小学校高学年から中学・高校くらいに厚さが一気に増し、神経細胞同士のつながりも密になります。こうした脳の発達段階に不可欠なのが、さまざまな相手とコミュニケーションを交わし、多様な価値観に触れるといった知的刺激を受けることです。

例えば、仲良し親子のように、単調な刺激しかない状態、自分が知っているのと違う世界に触れる機会が少ない環境にいると、知能の発達に必要な知的刺激を十分に受けることができません。子どもが外の世界を求め、親の価値観に逆らってみせる反抗期は、脳の発達段階のサインだと受け止めてあげてください。

子どもの自己肯定感を育てる! ポジティブな子育てを

──「空気を読む」など、人と同じような価値観を共有することが、特に子どもたちを取り巻く世界では強まっているようにも感じます。その中で、「自分だけの正解」を求めていくのは、ある意味で大変なことではないでしょうか。

中野:確かにそうだと思います。「ぼっち飯」といった言葉があらわすように、一人でいることが、からかいの対象になったり。SNSで何か目立った発言をした人を、こぞって攻撃するような雰囲気があったり。自分の気持ちを押し殺してまで周りに合わせる能力が、ますます求められる時代になっています。

そうした共感性を身につけさせるのも、もちろん親の大事な役目かもしれません。ただ私は、世間に合わせるのは表面上の「テクニック」だけでいいと思っています。集団でいるときはそのルールに従うけれども、一人の世界もしっかりと持っている子どもの方が、多様な社会で生きる力は強い。

森鷗外の娘で、作家の森茉莉さんのエッセイにとても印象的な一節があります。鴎外は41歳のときの子どもである彼女を溺愛し、「お茉莉の髪は上等、顔も上等、性質は素直だ」と褒め、多少いけないことをしても「おまりがすれば上等よ」と眼を細めたというのです。後年、繊細な美意識に彩られた素晴らしい小説や、辛口の人物評など個性的なエッセイを書き続けた原動力は、「何をしても上等」と親から認められた経験が大きかったでしょう。

周囲はどうあれ、「私は私」と思える健やかな自己肯定感。それを与えてあげられるのは、子どもをいちばん近くで見守ってきた親ならではの役目でしょう。いくつになっても脳は成長できるとはいえ、大人の場合は細いストローで一滴ずつ貯めていくのに対して、子どもは大きな蛇口からざっと注ぐくらいの違いがあります。子どもを取り巻く未来を考えると、不安や悩みもあるとは思いますが、ぜひ子どもの脳が秘める可能性を信じて、ポジティブに子育てを楽しんでもらえたらと願っています。

(プロフィール)
中野信子氏
脳科学者・医学博士

1975年生まれ。東日本国際大学特任教授、横浜市立大学客員准教授。東京大学工学部卒業後、2004年東京大学大学院医学系研究科医科学専攻修士課程修了、2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程終了。2008~2010年まで、フランス原子力庁サクレー研究所で研究員として勤務。『東大卒の女性脳科学者が、金持ち脳のなり方、全部教えます』(経済界)、『脳科学者からみた「祈り」』(潮出版)、『世界で通用する人がいつもやっていること』(アスコム)、『サイコパス』(文藝春秋)、『ヒトはいじめをやめられない』(小学館)など著書多数。 

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
山田真理

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

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脳科学者中野信子が語る! 第3回 子どもの可能性を育てる脳育を考える(前編) archives/6628 Fri, 05 Apr 2019 01:00:29 +0000 ?p=6628

気鋭の脳科学者・中野信子先生に、脳とお金の関係をテーマにお話していただくシリーズ。第3回は、「教育」をテーマにお話をうかがいます。多様化が進むこれからの社会を、たくましく生き抜くための力とはなにか。それはどんな教育によって可能となるのか。中野先生のご経験も交えてうかがいました。

優秀で真面目な日本人に欠けているのは“自分の答え”

──これからの社会はますます多様化が進んでくると思いますが、そうした時代に求められる「力」はどういったものだと中野先生はお考えですか。

中野:日本人は、脳の特徴として「不安傾向が高い人が多い」というお話をしました。特に、この国の受験システムは、不安を感じやすい人に有利にできていたんですね。前々回にお話したコップの理論に照らしていえば、テストで「80点も取れた、ラッキー!」と喜んでいる子は、そこで満足してしまう。95点を取っても「5点も間違えてしまった……」と不安になる子が、さらに努力をして勝ち抜いていくシステムだったわけです。

言い換えれば、それは正解が「ある」世界での競争。日本のような画一性の高い社会では、求められる正解に合わせて自分を作り上げることに意味があったと思います。私がフランスの研究所にいたときに出会った日本人たちも、その意味では非常に優秀でした。新しい環境に適応しようとしたり、スキルを身につける努力を真面目に行う。しかし、彼らが海外の組織で主導権を握り、良いポジションに就くのは難しい。むしろ、努力や真面目さを搾取されてしまう危険が高いのです。

実社会──特にグローバル化が進み、多様化していく社会には、正解というものがありません。カンニング禁止の学校のテストと違って、参考書も助っ人も持ち込み可能なのだけど、誰にも正解が「分からない」というテストに挑み続けなければならない。そのときに必要となるのは、誰かが決めた正解に「近付く」能力ではなく、自分が選んだ答えを正解と「言いくるめることができる」能力なんですよ。

しかし、そうしたトレーニングを私たちは受けていません。むしろ、そうした力を備えた子どもは、「生意気だ」と排除される傾向にあったのではないでしょうか。

自分の答えを正解に導く能力が、これからは求められる

──「自分で選んだ答えを正解にする」とは、具体的にどのようなことでしょう。

中野:私が中学生のとき、理科の先生がテストでとても面白い問題を出したんですね。前半の30点は、いわゆる正解を求める穴埋め問題。残り70点が、例えば「心臓は、どうしてこんな形になったと思いますか」「人間は、なぜ二足歩行するようになったのでしょう」「宇宙は、どうなっていると思いますか」という問題なのです。

それに対して、もちろん理科の授業で習ったことを書いてもいい。理科好きの子が、専門書や科学番組から得た知識を披露してもいい。こじつけやトンチのような話にしても、ファンタジーを創造してもいいんです。先生を納得させるか、笑わせるかすればそれが正解。逆に点数が低いのは、人のマネをしただけの回答でした。振り返ってみれば、バカロレア(フランスの国家資格で、中等普通教育修了の資格および大学入試資格の証明になる)にあるような問題でしたね。採点する先生は大変だったと思いますが、生徒それぞれの思考過程を見るという意味で非常に優れた試験だったと思います。

──他の人とは違う答えというのが、日本人には一番難しい気もします。

中野:新奇探索性が低いから創造性も低いかといえば、決してそうではありません。その証拠として私が考えるのは、イグ・ノーベル賞(ノーベル賞のパロディとして1991年に創設。「人を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に贈られる。)に、12年連続で日本人が輝いていることがあります。例えば、2018年に医学教育賞を受賞した堀内朗医師の研究は、「座位で行う大腸内視鏡検査──自ら試してわかった教訓」だそうです(笑)。その他、歴代の受賞者の研究を並べても、日本人の発想の豊かさや巧まざるユーモアに気付かされるでしょう。アートでも、例えば浮世絵や近年のマンガのように、世界のどこにもない独創的な世界を日本人は生みだしてきました。

ただ、それがビジネスなど真面目な場面になると、途端に鳴りを潜めてしまうのが残念ですね。「間違っていたらどうしよう」「他の人と合わせなくては」という不安が先立つのかもしれませんが、臆さずに自分の考えを表現すること、自分が選んだ答えを正解だと主張できる力を身につけることが、これからの社会にはとても重要なのだと思います。

後編では、これらの教えを親として子どもにどう教えればいいのかについてうかがいます。

(プロフィール)
中野信子氏
脳科学者・医学博士

1975年生まれ。東日本国際大学特任教授、横浜市立大学客員准教授。東京大学工学部卒業後、2004年東京大学大学院医学系研究科医科学専攻修士課程修了、2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程終了。2008~2010年まで、フランス原子力庁サクレー研究所で研究員として勤務。『東大卒の女性脳科学者が、金持ち脳のなり方、全部教えます』(経済界)、『脳科学者からみた「祈り」』(潮出版)、『世界で通用する人がいつもやっていること』(アスコム)、『サイコパス』(文藝春秋)、『ヒトはいじめをやめられない』(小学館)など著書多数。 

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
山田真理

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

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宝くじ購入はネットで archives/6625 Wed, 03 Apr 2019 01:00:14 +0000 ?p=6625
(写真=fizkes/shutterstock.com)

一年中、24時間どこでも購入ができる

宝くじの公式サイトにおけるネット販売が2018年10月から始まりました。そのメリットは、まず原則一年中、24時間どこでも購入できるということ。そして、宝くじの購入、抽せん結果の確認、当せん金の確認まですべてネットで完結するということです。また、指定した期間や頻度で自動購入できる「継続購入」や、発売開始日に自動で購入できる「予約購入」もあるので買い忘れもなし!ちなみに、2017年の宝くじの未換金は合計で149億円にものぼるそうですが、ネットで購入した宝くじが当せんした場合は、登録した銀行口座に当せん金が自動的に振り込まれるので、たった300円のために換金しに行くのはめんどうくさい…と思ったまま換金期限が切れてしまったなんてこともありません。

ポイントをためながら好きなタイミングで

なお、宝くじ公式サイトで購入すると、「宝くじポイント」がたまり、1ポイント=1円として宝くじ公式サイトでの宝くじ購入に使えるようです。大安や一粒万倍日(いちりゅうまんばいび)など、縁起の良い日に宝くじを買いたいけれど、寒いなか長蛇の列に並ぶのは嫌だという方や、そもそも忙しくて売り場に足を運ぶのが難しいという方は、今後、ネットで宝くじを購入してみてはいかがでしょうか。

年末の風物詩も変わる!?

毎年、年末の風物詩のようになっている西銀座デパートの1番窓口で年末ジャンボ宝くじを買い求める人の行列も、これから年末には短くなっているかもしれません。

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脳科学者中野信子が語る! 第2回 投資に必要な脳育とは!?(後編) archives/6611 Fri, 29 Mar 2019 01:00:50 +0000 ?p=6611

気鋭の脳科学者・中野信子先生に、脳とお金の関係について教えていただくシリーズ。その2回目の後編は、脳に与える「祈り」の影響についてうかがいます。脳科学的にみた、「祈る」ことの効果。商売繁盛や金運上昇を神様に「祈る」ことで、私たちが得られるものとは何か。投資に向かう心構えにも通じるお話をうかがいました。

ポジティブな祈りは脳を活性化させて、記憶力や集中力を高める

──先生はご著書のなかで、「祈る」ことは脳科学的に見ても効果があるとおっしゃっていますね。宗教や信仰というと、科学とは離れたことのようにも思えますが……。

中野:そうですね、平成には宗教にからんだ事件も多かったですし、神頼みなど単なる気休めで意味はないと考える人も多いかもしれません。ただ、脳の機能や神経伝達物質といった面からみると、「祈り」が脳に与える影響にも見逃せないものがあるのです。

人間の脳には前頭前野内側部といって、自分の行動の評価を行う部分があります。何かを祈るという行動も、脳は「良し悪し」のジャッジを下しています。例えば、「お金持ちになって、家族を幸せにしたい」といった祈りをしたとき、脳が「それはポジティブで良い祈りだ」と判断すると、βエンドルフィンやドーパミン、オキシトシンといった脳内快感物質(神経伝達物質のうち、多幸感や快感をもたらす物質)が脳内に分泌されます。なかでもβエンドルフィンは、脳を活性化させる働きがあり、記憶力や集中力を高めることが知られています。オキシトシンにも、記憶を高める作用があるといわれます。

しかし、「誰かを蹴落としたい」「あの人が損をすればいい」といったネガティブな祈りは、「悪い祈りだ」と脳にジャッジされます。その場合は、ストレス物質であるコルチゾールが分泌されます。これが脳内で過剰に分泌されると、記憶の重要な回路である「海馬」を萎縮してしまうことも分かっています。

具体的な目標を持つことで、自分に必要なものが見えてくる

──「祈り」の中身というのが、大切ということでしょうか。

中野:はい。人間には、「展望的記憶」といって、これから将来に向かって何をするかという予定を記憶としてインプットしておく機能があります。「今日はお昼にラーメンを食べよう」というのも展望的記憶なのですが(笑)、もっと広く、「将来に備えてしっかり資産をつくりたい」というビジョンを持って人生を歩むことができるのも、展望的記憶の能力があるからです。そうして人が未来を生き生きと思い描くときに、記憶をつかさどる「海馬」の活動が活発になることもわかってきました。

私が「祈り」という行為が面白いと感じたのは、それが自分と向きあう作業だからです。本当に何が欲しくて、どうしたいのか。自分は何を求めていて、どうしたらそれが達成できるのか。それを祈る「対象」に、伝えなければなりません。

神社へ参拝に行くと、商売繁盛や学業成就というように項目が分かれていますよね。例えば、そこから「2つ選んでください」といわれたら自分はどんな目的で、何を選ぶのか。例えば、金運上昇を1つめに選んだとして、それが家族の幸せのためならば2つめは家内安全。ライバルに勝つためなら勝負必勝、無理をして身体を壊したくないなら健康長寿かもしれません。それだけでも、ぼんやりしていた自分の願いが明らかになってくるはず。

また、日本ではお伊勢参りや富士登山、キリスト圏ではサンティアゴ・デ・コンポステーラなどの巡礼路、イスラム圏ではメッカ巡礼など、祈りのために長い旅をするというのも、それだけの苦労をして自分は何を祈りたいのかを考える時間を持つためだったと思います。今はそうした旅も便利になりましたが、目的地に向かうまでは仕事を忘れ、スマホも切って(笑)、自分と向きあう時間を持つ。そこから、新しい「展望的記憶」が見えてくることもきっとあると思います。

──投資の成功を「祈る」ことにも効果がありますか?

中野:まず、ぼんやりと「お金が増えるといいな」と考えて投資に向かうより、「リタイア後も夫婦円満でいるために老後の資金を貯めたい」とビジョンを明確にして、「成功させてください」と祈る方が動機付けになり、目標もはっきりします。

しかし、ただ「祈る」だけで投資が成功するはずはありませんよね(笑)。立てた目標に対してどのような行動を取るか、反省や振り返りもふくめて、「祈り」を続けることで工夫や努力も続けていけるでしょう。

「祈る」というと、思考を停止して何かにすがるというイメージもありますが、実際は逆です。熟考し、行動し、内省する。そのサイクルを日常に取り入れる仕組みとしても、「祈り」が役立つかもしれません。時間としては、朝日を浴びると気持ちを落ちつかせるセロトニンの分泌が促され、朝は前向きな気持ちになりやすいので、未来に目を向けた「成し遂げたい目標」を考える。夜は「今日は何ができたか」を振り返って集中して祈る。そうした習慣を始めてみてはいかがですか。

第三回では子どもと、その能力をどう育てていくか、「教育」に焦点を当てて紹介します。

(プロフィール)
中野信子氏
脳科学者・医学博士

1975年生まれ。東日本国際大学特任教授、横浜市立大学客員准教授。東京大学工学部卒業後、2004年東京大学大学院医学系研究科医科学専攻修士課程修了、2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程終了。2008~2010年まで、フランス原子力庁サクレー研究所で研究員として勤務。『東大卒の女性脳科学者が、金持ち脳のなり方、全部教えます』(経済界)、『脳科学者からみた「祈り」』(潮出版)、『世界で通用する人がいつもやっていること』(アスコム)、『サイコパス』(文藝春秋)、『ヒトはいじめをやめられない』(小学館)など著書多数。 

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
山田真理

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

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広がる駐車場シェア archives/6607 Wed, 27 Mar 2019 01:00:46 +0000 ?p=6607
(写真=Vadim Georgiev/shutterstock.com)

駐車場もシェア!?

移動に関するシェアリングサービスとして、自動車を共有するカーシェアをよく見かけるようになりました。駐車場シェアサービスは、外出先で一時的に駐車場を利用したい人と、空き駐車場や遊休スペースを持つ個人や法人をネットで仲介することです。既存施設が混雑する都市部や観光地、イベント会場など、その近くで駐車場が確保しやすくなるうえ、料金が比較的安いこと、さらにスマホで簡単に空き駐車場の検索・予約や料金精算を行うことができる便利さから利用が広がっています。今後も駐車場シェアの存在感が高まることが期待されます。

拡大が期待される駐車場シェアリング市場

駐車場シェアサービスの先駆的存在といえるのが、akippa(アキッパ・大阪市)や軒先(東京)といったベンチャー企業です。特にakippaは、電鉄や不動産会社、自治体など、幅広い企業・団体と提携して空き駐車場を確保し、足元で登録駐車場数を2万4,000ヵ所以上にまで増やしています。一方、今後の成長期待から、従来型の時間貸し駐車場大手のパーク24や三井不動産リアルティも2016年に相次いで参入。異業種でも、例えばNTTドコモなどのモバイル通信会社が利用者に専用アプリ、駐車場運営者にIoT技術を活用した入出庫管理機器を提供するビジネスモデルでサービスに乗り出しています。こうした専業各社の取り組みや新規参入拡大によって利用できる駐車場が増えることは、駐車場シェア市場にとって追い風となるでしょう。

シェアで変わる未来

カーシェアとのサービスの相互乗り入れもこの先、進むと期待されます。手軽に自動車を借りることができるカーシェアと、柔軟に自動車を止めておける駐車場シェアがつながれば、観光やイベント等に行く際の交通手段として、自動車がもっと選ばれやすくなると思われます。さらに将来的に自動運転が普及すれば、例えば目的の観光地に最も近くて安い空き駐車場を自動で探し出し、座っているだけでその駐車場に連れて行ってくれる、といった未来がやってくるのかもしれません。

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脳科学者中野信子が語る! 第2回 投資に必要な脳育とは!?(前編) archives/6593 Fri, 22 Mar 2019 01:00:16 +0000 ?p=6593

気鋭の脳科学者・中野信子先生に、脳とお金の関係について教えていただくシリーズ。第2回は、投資を成功に結び付けるヒントをうかがいます。日本人が投資に慎重なのは、なぜか。その慎重さを上手に生かすヒントについて、教えていただきました。

災害の多い日本では、慎重な遺伝子を持つ人が生き残れる

──前回までのお話で、日本人は「新しいチャレンジが苦手」だとうかがいました。投資にチャレンジしたくても、なかなか積極的になれないのはそのためなのでしょうか。

中野:脳の神経細胞にあるドーパミン受容体にかかわる遺伝子の影響で、日本人は「新奇探索性が高い人」が少ないというお話をしました。もう一つ、日本人の遺伝的な特徴として「不安傾向」が非常に高いということがあげられます。

第1回でもお話しましたが、脳内にはセロトニンという神経伝達物質があり、これが十分にあると安心感を覚え、やる気もでます。セロトニンの分泌量を調整しているのは、セロトニン・トランスポーターというたんぱく質。神経繊維の末端から分泌されたセロトニンを、もう一度細胞内に取り込む役割をしています。この数が多いほどセロトニンを使い回せるので、気持ちが安定する。逆に、少なければ不安を感じやすくなります。

セロトニン・トランスポーターの数は遺伝的に決まっているのですが、この数が少ない人の割合が日本人は約97%と、世界的にみても非常に高い。つまり、世界で一番不安になりやすい民族なのです。

──なぜ、日本人は遺伝的にセロトニン・トランスポーターの数が少ないのでしょうか。

中野:一つには、日本が災害の多い国だということがいえると思います。つまり、不安が高く、リスクになりそうなことはなるべく避けて、もしものときに備える人でなければ、生き残れなかった。例えば、水辺の近くに住んだ方が暮らしは便利かもしれませんが、大きな洪水が来ると生活にかかわります。「来年も天候はいいだろう」と楽観して、食糧を全部食べたり売ったりしてしまえば、翌年が日照りになったときが悲劇です。

また、災害の多い国では、共同体で生活することがリスクの軽減につながります。そうして一致団結して、協力しあうことで遺伝子を残してきたといえます。逆に、共同体を危険にさらすような冒険的な行為をする人、他の人の努力にフリーライド(ただ乗り)する人は、排除される傾向にあったでしょう。そうした排除の対象にならないよう、つねに慎重に、目立たないよう、不安を抱えながら周囲と合わせて生きることが、この国では生存に有利だったのです。

慎重派の日本人の投資は、工夫と成長が期待できる

──「不安傾向が高い」という特徴を、例えば投資という分野でうまく活かすにはどうしたらいいですか。

中野:例えば、コップに水が半分あるときに「まだ半分ある」と思うか、「もう半分しかない」と考えるか。「まだある」と思う人の方が楽観的、「もうない」と感じる人は悲観的で不安傾向が高いといえるでしょう。楽観的な人はプラスの面もありながら、現状に満足してそれ以上の努力をしないという点ではデメリットもあります。そうした視点から見ると、悲観的で不安傾向の高い人は「もう半分しかない」と思うからこそ、この状況を何とかしなければと工夫し、成長していけるというメリットを備えているといえます。

投資についていえば、そこそこの成果で満足して情報収集を怠ってしまうより、「○○円損をしてしまったから、次はどうすればいいか」と、地道にコツコツと努力をしたほうが、長期的にみてうまくいくのではないでしょうか。また、不安傾向の高い人は、「勝つ喜び」を脳に覚えさせることがポイントといわれます。まずは安全な範囲で、信頼できる専門家のアドバイスなども受けながら、少しずつ経験を重ねていってはいかがですか。

──セロトニンを増やす方法というのは、ありますか。

中野:セロトニンの原料となるのは、トリプトファンというアミノ酸です。赤身の肉やレバー、マグロなどの魚、乳製品、卵、大豆、落花生、ゴマなどトリプトファンを多く含む食品を食べるといいでしょう。生活は規則正しく、夜はよく眠り、朝はちゃんと起きて日の光を浴びるとセロトニンが体内で合成されるスイッチが入ります。適度な運動で身体を動かすこと、リラックスする時間を大切にすることも大切ですね。

後編では、投資に向かう心構えにも通じるお話をうかがいます。

(プロフィール)
中野信子氏
脳科学者・医学博士

1975年生まれ。東日本国際大学特任教授、横浜市立大学客員准教授。東京大学工学部卒業後、2004年東京大学大学院医学系研究科医科学専攻修士課程修了、2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程終了。2008~2010年まで、フランス原子力庁サクレー研究所で研究員として勤務。『東大卒の女性脳科学者が、金持ち脳のなり方、全部教えます』(経済界)、『脳科学者からみた「祈り」』(潮出版)、『世界で通用する人がいつもやっていること』(アスコム)、『サイコパス』(文藝春秋)、『ヒトはいじめをやめられない』(小学館)など著書多数。 

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山田真理

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意外に多い画像診断での病変見落とし AIが助ける archives/6582 Wed, 20 Mar 2019 01:00:53 +0000 ?p=6582
(写真=Gorodenkoff/shutterstock.com)

意外と多い、医師の見落とし

AI(人工知能)による画像診断支援に関する記事を目にする機会が増えています。こうした記事のなかに、大腸内視鏡検査においてポリープや微小がんの医師による見落としの比率が2割程度との報告もある、とありました。見落とし率の高さに驚きましたが、筆者は数年前にこの大腸内視鏡検査を受けたことがあります。当時は2割も見落とされることを知りませんし、検査担当が若い医師で、「大丈夫かな?」と少し不安になったことを覚えています。

AIによる画像診断支援の実用化に期待

冒頭で触れたように、画像診断支援に向けたAIの開発が複数の主体により進められています。大学等研究機関や、オリンパス、富士フイルムHD、日立製作所などの医療機器関連企業、医療従事者専門サイトを運営するエムスリー、AI開発に強みを持つ日本電気、また、非上場企業のエルピクセルなどです。AIに検査画像を学習させ、すでに90%台半ば以上の高い精度で病変の検知が可能とする開発主体もあります。さらに、2019年度には承認申請に向けた試験を開始する方針を示す開発主体も出てきています。厚生労働省でも、18年7月、「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」を立ち上げ、この中で画像診断支援の実現加速に向けた議論(関連学会の連携による画像データ構築等)も進んでいます。早期の実用化、精度向上が期待されます。 

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脳科学者中野信子が語る! 第1回 お金と脳の関係(後編) archives/6556 Fri, 15 Mar 2019 01:00:26 +0000 ?p=6556

脳科学の見地で、お金に対して「積極型」の人と「消極型」の人がいることがわかってきました。気鋭の脳科学者・中野信子先生に脳とお金の関係について教えていただくシリーズの後編では、そうした脳の特徴はどうして生まれたのか、自分の脳の特徴にあった「お金持ち脳」を育てるにはどうしたらいいのかをうかがいました。

日本人が貯蓄を好むのは、脳の遺伝的要素からくる行動だった!?

──前編でうかがった脳の特徴は、生まれつき決まっているものなのですか。

中野:脳内の部位の働きや神経伝達物質の作用は、遺伝的要素が強く影響しているといわれています。例えば、ドーパミンの感受性は、脳の神経細胞にあるドーパミン受容体にかかわる遺伝子によって、バリエーションが生まれます。この遺伝的傾向を持つ人の割合を世界各国で調べたところ、最もパーセンテージが高かったのがスペイン系の人々。また、ヨーロッパからアメリカに移住した人たちも高いことがわかりました。

前編でお話したように、ドーパミン感受性が高い人は快楽的で、過去にとらわれず、新しいことにチャレンジする「新奇探索性」が強い。例えば、スペイン系の多い南米アルゼンチンは、過去に何度もデフォルト(国家政府の債務不履行)を経験しながら、そのたびになんとか乗り越えています。また、移民たちは今までの生活を捨てて新大陸へ渡り、アメリカを世界有数の経済大国に育てました。その背景には、「お金持ち脳」になれる遺伝的要素を持った人が多くいたといえるでしょう。

対照的に、この調査で日本人は、「新奇探索性」の高い人の割合が世界的にみても低いことが明らかになりました。新しいものに挑戦するのが苦手、リスクよりも安定を好むというお金に対する態度にも現れているといえそうです。

貯蓄指向の脳は、勝負の楽しみを学習することで「お金持ち脳」に?!

──遺伝的に「お金持ち脳」ではないとしたら、もう変えられないのでしょうか。

中野:脳が働くことの面白さとして、「変化に対応して戦略を変えられる」ことがあります。
本来、生物が個体数の減少、あるいは種の絶滅を免れるために環境変化へ適応していくには、多くの世代を経なければなりません。遺伝子が規定する生物の生存戦略への適応は、一世代では為しえないのです。しかし、脳があることによって、世代を経なくても、一つの個体が「こうすればいいかもしれない」と思った時点で戦略を変えられる。もともと遺伝的に適した性質を持っていなくても、学習することで、その場に応じた戦略をとることができるのです。

例えていうなら、キリンが高い樹木の上の葉を取りたいと思っても、急に首は伸びません。しかし、人間は高枝切りバサミを発明できるし、テレビの通販で手に入れることもできます(笑)。また、お隣の人が使っているのを見て、「便利そうだな」と参考にすることも、脳があることで可能にしているのです。

──ということは、リスクよりも安定を好む日本人も「お金持ち脳」に変われるということですね。

中野:人間という種を考えると、また面白いことがみえてきます。地球上の生物のほとんどは、現在居る場所にそのまま居ようとします。なぜなら、長く居続けられた場所は食べ物が十分であったり、敵に襲われなかったり、子どもを育てやすい環境だったからです。しかし、人間といくつかの霊長類は、長く居た場所に「飽きる」。普通の生物ならずっと居るのに、なぜかその場所から出ようとするのです。

それを促進してきたのが、ドーパミンです。多少のリスクを取っても、次々と新しい土地をめざし、その環境に適応しながら繁栄してきたのが人間。だとすれば、その傾向に強い・弱いはあっても、人間は誰もが「新しいことをしてみたい、知りたい」という性質を持っているはずです。

例えば、自分は消極型のタイプであっても、その弱点を克服して、お金に対して積極的になろうとするのは、「脳が喜ぶ」行動だといえるでしょう。

──自分の弱点を克服して「お金持ち脳」を育てるには、どうしたらいいのでしょうか。

中野:消極型で「石橋を叩いている間にチャンスを逃してしまう」人は、スポーツやゲームで「勝つ喜び」を脳に覚えさせるといいでしょう。偶然が勝敗を左右するものよりも、知識や経験を積んで、「だから勝てたんだ」と自信が持てるような種類のものがおすすめです。

ギャンブラー気質は「勝たない」訓練で自己管理を学ぶ

中野:一方で、積極型なのはいいけれど、ギャンブラー気質で浮き沈みが激しい人は、「後出し負けジャンケン」で前頭前皮質を鍛えるトレーニングがおすすめです。これは、他の人が先に出した後で、その手にあえて“負ける”手を出す練習をするというもの。ジャンケンには「勝ちたい」ものですが、それをあえて「勝たない」訓練をすることで、自制心や自己管理能力といった前頭前皮質の機能を高めることができます。

リスクより貯蓄を好む「消極型」脳、安定よりチャレンジを楽しむ「積極型」脳。互いが学び合うことで、より確かな「お金持ち脳」になれるといえそうです。第2回では、投資を成功させる脳の特徴と、その学習法を紹介します。

(プロフィール)
中野信子氏
脳科学者・医学博士

1975年生まれ。東日本国際大学特任教授、横浜市立大学客員准教授。東京大学工学部卒業後、2004年東京大学大学院医学系研究科医科学専攻修士課程修了、2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程終了。2008~2010年まで、フランス原子力庁サクレー研究所で研究員として勤務。『東大卒の女性脳科学者が、金持ち脳のなり方、全部教えます』(経済界)、『脳科学者からみた「祈り」』(潮出版)、『世界で通用する人がいつもやっていること』(アスコム)、『サイコパス』(文藝春秋)、『ヒトはいじめをやめられない』(小学館)など著書多数。 

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
山田真理

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

【おすすめ記事】
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