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米国大統領はどのようなプロセスで選ばれるのか

(画像=Uliana/stock.adobe.com)

2024年は世界各地で国のトップを決める選挙が多く行われる「選挙イヤー」。中でも11月に行われる米国の大統領選挙は、世界の経済や安全保障に大きな影響を与える一大イベントとして注目されています。これからニュースなどで目に触れる機会も多くなるでしょう。

今回は、米国大統領がどのようなプロセスで決定されるのか、その選挙の仕組みを解説します。

目次
本選挙までの流れ
米大統領は「得票数」ではなく「選挙人の獲得人数」で決まる
3月5日の「スーパーチューズデー」に要注目
両候補が抱えるそれぞれのリスク

本選挙までの流れ

米国の大統領選挙は、予備選挙と本選挙が実施され、約1年間にわたって行われます。

① 予備選挙(1月~6月)
米国の大統領選挙は、政党が候補者を絞り込むところからスタートします。党の「指名候補者」を選出するために、全米の各州・地域で選挙が行われます。これは各党が個別に行う選挙で、この過程で指名を受ける見込みが薄い立候補者は撤退していきます。現在は、この予備選挙が行われているところです。

② 全国党大会(7月~8月)
予備選挙で絞り込まれた立候補者は、党ごとに開催される「全国党大会」を経て、正式に党の「指名候補者」となります。米国は共和党と民主党の二大政党制なので、この時点で本選挙は「一騎打ち」の構図になります。

③ 本選挙(11月)
本選挙の投票日は11月の第1火曜日と決められています。今回の投票日は11月5日です。指名候補者同士によるテレビ討論会などが行われたあと、全米の有権者が投票を行い、次期大統領が決定します。

これが、米国大統領選挙の大まかな流れです。

米大統領は「得票数」ではなく「選挙人の獲得人数」で決まる

本選挙では、単に得票数が多い指名候補者が勝者となるわけではありません。

有権者の投票結果は州ごとに集計され、州ごとに勝敗が付きます。勝利するとその州の「選挙人」を獲得することができ、より多くの選挙人を獲得した指名候補者が勝者となります。

選挙人とは、共和党と民主党がそれぞれの党員の中から各州に登録した、自党の指名候補者に投票することを宣誓した人です。各党は538人の選挙人を、各州の人口比率に応じて割り振ります。

例えばカリフォルニア州の選挙人は54名で、ワイオミング州では3名と決められています。有権者の投票によって勝利した指名候補者が、その州の選挙人を総取り(一部の州では得票数比率で分配)します。最終的に過半数である270名以上の選挙人を獲得した指名候補者が、次期大統領になります。

このように、有権者の投票によって選挙人が決められ、その選挙人の投票によって次期大統領が選ばれるのが、米大統領選挙の仕組みです。

人口が多く党勢力が拮抗している、いわゆる「激戦州」での投票結果が、本選挙の勝敗を分けるポイントになります。そういった目線でニュースを見てみると、より理解が深まるでしょう。

3月5日の「スーパーチューズデー」に要注目

ここからは、現在進行中である予備選挙の状況を確認しておきましょう。

〇共和党
トランプ氏のほか8人の立候補者がいましたが、そのうち6人は既に撤退を表明。トランプ氏とニッキー・ヘイリー氏の争いになっています。ヘイリー氏はインドからの移民2世で、1972年生まれの52歳。サウスカロライナ州で初の女性知事を務めたほか、前回のトランプ政権では国連大使を務めた人物です。

2024年1月15日のアイオワ州で共和党の予備選挙では、トランプ氏が勝利しました。

〇民主党
バイデン氏のほか2名の立候補者がいましたが、作家のマリアン・ウィリアムソン氏は既に撤退を表明。バイデン氏と下院議員のディーン・フィリップス氏の争いになっています。

1月23日のニューハンプシャー州、2月3日のサウスカロライナ州で行われた予備選挙では、いずれもバイデン氏が勝利しました。

両党の状況から、本選挙はバイデン氏とトランプ氏との一騎打ちになるシナリオが有力ですが、そのシナリオが現実になるかどうかは、3月5日に明らかになるでしょう。

この日は「スーパーチューズデー」と呼ばれ、15の州で同時に予備選挙が行われます。メディアでも大きく取り上げられ、全米が大統領選挙に注目する日になります。

最後に、バイデン氏とトランプ氏の一騎打ちとなった場合のポイントを確認しておきましょう。

両候補が抱えるそれぞれのリスク

2024年2月上旬に米国の通信会社ロイターが行った調査では、トランプ氏の支持率が37%、バイデン氏が34%で、その差は3%でした。他の調査では両者の差を1%とするものもあり、まだどちらに転ぶかわからないのが現状のようです。

両候補者が抱える固有のリスクが、今後の選挙に影響するかもしれません。

〇トランプ氏のリスク
トランプ氏のリスクとして指摘されているのは係争中の裁判をいくつも抱えている点です。トランプ氏は、選挙の妨害や機密文書の不正保管、業務記録の改ざんなど4つの罪に問われています。その他、3件の民事裁判など、15の州で係争中。選挙期間中にも公判が行われる予定です。その動向次第では、トランプ氏の再選に向けた高いハードルになるかもしれません。

日本人の感覚だと、複数の案件で係争中の人物が、その国のトップに立とうとしているのは理解しがたいかもしれません。しかし、米国ではトランプ氏が起訴されたあとに支持率が上昇したケースがあります。

〇バイデン氏のリスク
バイデン氏のリスクとして指摘されているのは年齢です。現在、バイデン氏は81歳で、米国の大統領では史上最高齢。再選した場合は85歳まで大統領の椅子に座り続けることになります。米国のABCテレビなどが行った世論調査では、「バイデン大統領は高齢過ぎて2期目を務められない」という問いに対して「イエス」と回答した人が86%に上りました。

最近では、各国首脳の名前の言い間違え(2月4日にラスベガスで開かれた演説で、仏大統領マクロン氏のことを、約30年前の仏大統領ミッテラン氏と言い間違えたことなど)が指摘され、大統領という職に対する不安が広がっているようです。

大統領選挙を巡る状況は刻一刻と変化しています。スーパーチューズデーやトランプ氏の裁判の行方などから、目が離せない状況が続きそうです。