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働き方が多様化する今、フリーランスに求められる考え方とは?公認会計士山田真哉さんに聞く

ベストセラー新書『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の作家にして、公認会計士&税理士としても活躍を続ける山田真哉さん。今回は、山田さんのユニークなキャリアを追いながら、フリーランサーとしての生き方や“自衛術”についてお聞きします。

自費出版があたり、気分もあがり調子!その先にみるどん底

――山田さんは過去に出された書籍(自費出版)がヒットされたとお聞きしています。そこから大きく流れが変わったのではないですか。

山田:「女子大生会計士の事件簿」は、1年で5万部売れました。そして、いち早く漫画化の話が舞い込んできまして、今はなき「ビジネスジャンプ」での連載が決まり、原作料として毎月20万円がもらえるという話になりました。しかもゆくゆく単行本化にでもなれば、さらに印税も入ってくる……。これで生活ができるから、監査法人を辞めてもいいのではないかと思いました。

このまま作家でやっていこうという強い気持ちがあったわけではないのですが、資格もあるし、いざとなったら監査法人に戻ればいい、という軽い気持ちでした。公認会計士という仕事に対する愛着はもしかすると今までずっとないのかもしれません(笑)。どこか“よそ者感”はありました。どうしても予備校講師に立脚点があって、公認会計士に向いているわけではないのでしょうね。

ところが、監査法人を辞める直前になって、ビジネスジャンプ連載の打ち切りが急に決まるんですよ。いわゆる“ジャンプシステム”というやつですね。人気が落ちるとすぐ打ち切りになる。すでに退職届を提出していたので撤回もできず、しかもその頃、結婚もしていました。そんなタイミングでいきなり安定収入がなくなったので、これはヤバいと思いました。

その頃になると、各方面から出版依頼がきていたので、片っ端から引き受けていました。でも、それだけでは足らないので、友人が経営する税理士事務所でアルバイトをさせてもらったりもしました。さらに、“新書を書いてみませんか?”というオファーがあって、“これまでにない会計の入門書を”という要望にあわせてアイデアが生まれたのが「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」だったのです。

フリーランスで生きるには自分の身の処し方を4、5つ準備しておくこと

――すさまじいリカバリー力ですね。

山田:偶然もあったとは思いますし、結婚はしていましたが、何よりも、とりあえず、この先どうしよう?と考えなくても良い、20代の特権というか、いざとなったら監査法人なり、予備校なりに戻れば良いという意識はありました。だから、切迫感がなかったのが功を奏したのですかね。

そのときに感じたのは、フリーランスとして生きていくうえでは、やはり人脈は大事だということですね。アルバイトをさせてもらったのは友人の事務所でしたし、監査法人時代の上司とも仲良くやっていたので、まあ、お願いすれば戻れるだろうと。

色々と考えましたよね。最悪、簿記の先生でもやって乗り切ろうかとか。今でもそうですが、自分の身の処し方については、常に4つか5つは準備しておきたいと思うのです。時代が変わったらこうしようとか。

どうしてかというと、阪神大震災で自宅が全壊したという経験は大きいですね。家ってつぶれないって思って暮らしているではないですか。でも、そんな当たり前が、あっさりと崩されてしまう。本当に、世の中何があるかわからないって、身をもって実感しました。

――人脈も仕事もそうですが、山田さんのその“マルチ感”がハンパないですね。

山田:2000年当時は、“スペシャリストの時代”と言われていました。いわゆるマネジメントができても、普通のサラリーマンでは使い道がないから、プロフェッショナルであれと。そんな風に言われていましたよね。確かにそうなのですが、私はスペシャルを複数持っていた方が良いと思っていて、今どき、スペシャルな武器がひとつではキツい、勝てない時代になっているような気がします。専門を複数持つのって、ある種、矛盾している話ではありますが、とはいえ、専門が1つというのはリスクでしかない。

――複数の専門を持つのって難しくないですか?

山田:趣味を複数持つ人っているじゃないですか。それと変わらないと思っています。1週間7日あって、すべてをそこに費やさなくてはいけない専門なんて、実はそんなにないのではないかと思うのですね。7日あれば、2日間は別なことをやって5日間は専業をやればいい。2日間でも、一年は52週あるわけですから、毎週やったら104日。それだけやればけっこうな専門家になります。365日あれば3つくらいの専門ができるはずなんですよ。

もちろん、その大本は1つでもいいと思います。見せ方の問題です。私の専門は、一般の方にわかりやすく会計を伝えることですが、片や芸能界専門の会計事務所を経営している。この2つはまったく別な仕事のようでいて、会計というベースは一緒。この世から会計がなくならないかぎり、私の役割はなくならないと思っています。

仮に、AIの進化によって税務とか会計の仕事が乗っ取られたりしたら、今度は会計の本を出した経験があるから出版コンサルの仕事をしようかなとか、もしくは出版のことや会計のことを人に教える、教育という専門も残しているので、それも可能です。

自由がほしいから複数の選択肢を持つ。これが鉄則

――状況に合わせて柔軟に対応するチカラが必要ということですね。

山田:そういう心配をしておいた方が良いということです。投資の世界でいえば、VIX指数、いわゆる恐怖指数って概念が好きで、やっぱり世の中、何があるかわからないじゃないですか。VIX指数を見ても波があるのですよ。どんな業種でも、その波は絶対にやってきます。

VIX指数が上がったら投資家の皆さんはどうしていますか?結局株とかは手仕舞いして、国債などに投資先を変えているわけですよね。そういう自由さって必要なのです。自由がほしいから複数の選択肢を持つのです。自由がほしいからサラリーマンを辞めて、自由がほしいから資格を取って、自由がほしいから複数の選択を持っているという感覚が一番近い。結局、ただひとつの手段だけでは怖いということなのです。

 

山田 真哉(やまだ しんや)
公認会計士・税理士
一般財団法人 芸能文化会計財団 理事長

神戸市生まれ。公認会計士・税理士。大学卒業後、東進ハイスクール、中央青山監査法人(現・PwCあらた有限責任監査法人)を経て、芸能文化会計財団の理事長に就任。
主な著書に、160万部のミリオンセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社)、シリーズ100万部『女子大生会計士の事件簿』(角川文庫他)。
現在は『浅野真澄×山田真哉の週刊マネーランド』(文化放送)・『坂上&指原のつぶれない店』(TBS)等にレギュラー出演し、約60社の顧問、内閣府の委員等を務めている。

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