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規制のサンドボックスは未来のためにすべての人に実証に参加してほしい 内閣官房中原裕彦氏に聞く

2018年に施行された日本の新たなイノベーション創出のプラットフォームという見方も可能な規制のサンドボックス制度。日本の創造性を発揮できる制度のひとつだと考えられますが、実際にどのような社会的な効果を得ることができるのでしょうか。内閣官房 日本経済再生総合事務局(未来投資会議)の参事官・中原裕彦氏から、規制のサンドボックス制度の詳細についてお聞きします。(このインタビューは2018年7月23日に行われました。)

規制のサンドボックス制度はビジネス創出に向けた動きを生み出すきっかけになり得る

−−「規制のサンドボックス」制度が成立したことによって、本当に革新的な技術や新規ビジネス創出に向けた動きが出てくるのでしょうか?これまでの規制改革のように、軋轢が発生したりはしないのですか?

中原氏:今回のサンドボックスの意義は何か?

この制度は、新しい産業やビジネスを生み出そうとする事業者の皆様が、社会の多様なニーズにお応えしたいと考えているときに、実証を経てどのように社会と接合していくのかを丁寧にすり合わせていく枠組みであると考えています。

(画像はイメージです 画像=PIXTA)

要するに、単なる規制緩和というよりは、スマートなレギュレーションを追及するものであることをしっかりお伝えしたいと考えています。規制のサンドボックス制度によって、新しい技術により変化していく社会に合わせて全体の底上げが図られ、日本の経済発展を目的とした建設的な結論が導き出されると確信しています。将来的には、あらゆる利害関係も超越し、アウフヘーベンしていきたいと思っています。

−−新しい挑戦をするときに、最初から一元窓口の方々に相談したほうが無意味な軋轢を生まずに、スムーズに問題解決ができそうですね。

中原氏:そうかもしれません。私たちにご相談いただければ、さまざまな立場の方々に配慮してアプローチさせていただきたいと考えています。ただし、今回の「規制のサンドボックス制度」を推進する立場としては、全体調整をするというよりもまずは相談者の方々がおやりになりたいことを最優先し、相談者の方々のお気持ちに寄り添って進めていければと考えています。

要するに、これまでの規制や慣習が足かせになり、実際に前に進めなかった事象の問題点を明らかにするのが私たちの役割だと思っているので、あくまで目線は相談者の皆様側にあります。

もちろん、実証を行っているときも革新的事業活動評価委員会とも繋ぐなどのご支援をしたいと思っています。専門家の方々のご意見と実証の成果を含めて、最終的に社会に実装されるまで丁寧に進めていくことができれば良いと考えています。

規制のサンドボックス制度に参加することで、新しいイノベーションが生まれる

−−この制度が機能していくことで新しいビジネスが創出されると、一般消費者にとってどのようなことが波及していくと考えられますか。私たちの生活にどのような変化、便利さをもたらすのでしょうか。

中原氏:規制のサンドボックス制度は、いわば限定された期間と限定された参加者のなかで実証をしていくものなのですが、ユーザーの皆様も、規制環境を理解していただいたうえで商品を購入してみる、サービスを利用してみるといった行動で実証にご参加いただきたいと思っています。

(画像はイメージです。 画像=PIXTA)

事業者が提供しようとしているのは、間違いなく世の中を便利にする商品やサービスですから、皆様の生活を根本から大きく変えるものになりうる可能性を秘めています。実証は市場におけるユーザーの皆様と発案者の対話であり、一連のコミュニケーションのなかで新しい便利なサービスが生まれていきます。これは国民の皆様が、実証による政策形成、いわば社会ルールを作る段階から参加していることになるのです。

これまでにも私どものところに、「イノベーションを起こしたい」という想いをもって、要望やアイデアを持ち込まれてきた方はたくさんいて、私たちもそれに対して一つひとつ真摯にお応えしようとしてきました。

しかし、いつでも問題になるのは、政策立案プロセスにおいて、そのビジネスプランがもたらすインパクトをどのように実証できるのかということ。正直、やってみてはじめてわかるというところはありますし、特に最近のIoT、ブロックチェーンなどの第4次産業革命に関する技術など見ていると、ものすごい勢いで技術の進歩が進んでいます。

その速度に対応するには、果たして、霞が関の机の上の議論だけで十分なのかどうかというと、それは疑問を抱かざるを得ません。やはり実証を通じて物事を考えていくということが、これまで以上に求められていると感じています。

規制のサンドボックス制度の反響は?

−−多くの事業者にどんどん活用していただきたいですね。実際に施行してからの反響はどのようなものでしたか。

中原氏:かなりの数のお問い合わせやご相談をいただいている状況です。私たちとしても、皆様のご希望にお応えできるように身が引き締まる思いでいっぱいです。私たちが想定していたご相談内容もあれば、新たな視点でのご相談もあり、本当に勉強をさせていただいています。これからも非常に楽しみですし、さまざまなご相談を頂戴できることを期待しております。

 

中原裕彦(なかはら ひろひこ)
内閣官房 日本経済再生総合事務局 参事官

1991年 東京大学法学部卒業、通商産業省入省、大蔵省証券局総務課、米国コーネル大学 Ph.D.candidate、法務省民事局参事官室、中小企業庁制度改正審議室長、経済産業省知的財産政策室長、内閣府規制改革推進室参事官、経済産業省産業組織課長等を経て2016年から現職。規制のサンドボックス制度の創設に尽力。

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