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ドル円、約1年5ヶ月ぶりの安値を更新、110円割れ

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(写真=PIXTA)

・ 4月5日の為替市場でドル円相場は3月17日の安値110.67円や節目とされる110.00円を割り込み、2014年10月以来の1ドル109.92円まで円高ドル安が進みました。その後もこの傾向が継続すると、4月11日には107.63円まで下押す場面もみられています。

・ 4月5日に特に大きなドル安円高材料が出たわけではありません。背景として、3月29日にイエレンFRB 議長が利上げに対して慎重(ハト派的)な発言をしたため、早期の利上げに対する期待が後退したことや、米金利が低下していることに加え、原油価格や株価の不安定さを受けたリスク回避ムードが指摘されています。

・ 3月終盤以降のイベントやポジション動向などからは、直近のドル安円高傾向に違和感を覚えるところです。

3月半ば以降のドル円の値動き 

 3月15日~16日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)で、参加者による2016年の政策金利の見通しが、2015年12月時点の見通しよりも下方修正されるなど、利上げに対する慎重な姿勢が示されたことなどから、ドル円は3月17日に一時1ドル110.67円まで下がりました。 

 しかし、その翌週には複数の米連邦準備理事会(FRB)関係者が米国経済に対する強気の見解や利上げに積極的(タカ派的)な発言を繰り返した(表参照) ことから、ドル円相場は反転し、3月29日には一時113.80円まで上昇する場面もみられました。

 一方、同日NY時間に行われたイエレンFRB議長の講演では、世界経済の動向がリスクであることに言及し、「12月に予想していたよりも、若干緩やかな利上げペースが必要になる可能性が高い」と早期の利上げに慎重な姿勢が示されたことから、ドルは反落したのです。

 4月に入ってもこの傾向が継続し、4月11日には2014年10月以来となる1ドル=107.63円までドル安円高が進む展開となりました。

【図1】ドル円、約1年5ヶ月ぶりの安値を更新、110円割れ

約1年5ヶ月ぶりの水準を記録

 4月5日、ドル円は東京時間午後に、3月17日につけた110.67円を割り込み、その後海外時間には2014年10月31日以来となる1ドル=110.00円を割り込む動きとなると、その後円高が加速する流れとなりました。

 材料としては、米経済紙が安倍首相のコメントとして、通貨安競争は回避すべきであり、恣意的な介入は慎むべきとの報道を行った程度です。1ドル=110.00円の節目を割り込み1年5ヶ月ぶりの安値を記録するほどの“これ”といったイベントや材料はみられていません。

【図2】ドル円、約1年5ヶ月ぶりの安値を更新、110円割れ

ファンダメンタルズなどからは違和感も強い 

 一方、足元でみられているドル安円高の進行には違和感が感じられます。直近、3月終盤以降のドルの軟調な動きについて、3月29日のイエレンFRB議長によるハト派的な発言がその要因の1つと紹介しましたが、その数日後には3月の米雇用統計やISM製造業指数などの良好な結果が発表され、米国経済の緩やかな回復が続いていることが確認されています。

 これを受け、「FRBの次の動きは利下げでなく利上げの公算(NY連銀ダドリー総裁4/1)、などタカ派的な発言が複数聞かれていますが、基本的に市場はこれを無視する流れです。日本サイドにおいても、4月1日発表の日銀短観は 総じて弱い内容となったほか、安倍首相は3月31日にオバマ大統領と会談し「しばらくはG7が世界経済をけん引すべき」と発言するなど、総じて日銀の景気対策(追加緩和)への期待が強まりやすい状況となっていましたが、やはり市場はこれを無視してドル安円高が進んでいるのが現状です。 

 この構図は先行きに関しても変わりません。サンフランシスコ連銀ウィリアムズ総裁は、米国の政策金利引き上げは緩やかなペースで進むため、「3年程度かかる可能性がある」としています。

 一方、日銀は2016年1月にマイナス金利の導入を決定しましたが、上述の通り年内にも追加緩和が期待されているうえ、消費増税等のスケジュールを考えれば来年以降も緩和姿勢を継続する可能性が高いでしょう。景況感格差などを背景に今後数年程度を見通しても「米国は利上げ、日本は緩和」という構図になりそうで、当然、日米金利差も拡大が想定される状況下、一方的なドル安円高の進展には強い違和感を覚えます。

 円高の要因として、2014年に10兆円を超えていた貿易赤字が、大幅に縮小したことが挙げられることがありますが、2015年も大幅に縮小したとはいえ貿易収支は若干の赤字です。そもそも貿易赤字の縮小は「円安要因の減少」であって「円高要因の増加」ではありません。逆に2015年6月から1割以上の円高となり、原油価格も底打ちの可能性が台頭するなか、今後は再び赤字が拡大する可能性も高まっています。 

本邦当局の口先介入も強まると想定 

 現状の日本の動向を確認すると、2015年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率1.1%のマイナスでした。日銀が+2.0%を目標に掲げる消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率は今年2月が前年比横ばいと、ゼロ近辺の低空飛行をしています。年末に1ドル120円だったドル円レートは110円割れまで円高が進み、同じく年末1万9,000円台だった日経平均は4月上旬には1万5,000 円台まで下がりました(2月半ばには1万4,000円台をつける場面もありました)。過去の相関から単純に推計すると、もしドル円が105円水準まで下落すれば、日経平均は1万4,000円を割る可能性があります。

 加えて、2015年4月にドル円相場が120円近辺で推移していたことをふまえれば、円高が輸入物価の下落を通じてデフレ圧力となり、日銀の物価安定目標(消費者物価前年比+2%)の達成は遠のくどころか、場合によってはマイナス、つまりデフレ状態に逆戻り、ということもあるかもしれません。 

 こうなると、黒田日銀総裁による異次元緩和も安倍内閣によるアベノミクスも台無しになり、消費増税先送りも予想され、5月の伊勢志摩サミットに向けて「世界経済はG7が支えていく」などとはとても言えない状況になりかねません。現実問題として日本政府はこの水準を容認しないでしょうが、実際には市場での為替介入は難しいと思われることから、口先介入等のけん制姿勢を強め、日銀が緩和に前向き姿勢を打ち出すことなどが考えられます。