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中国不動産、2016年も政府の支援策が続く見通し

China
(写真=PIXTA)

 2015年の中国不動産市場は、政府の支援策によって関連指標が改善されました。

 しかし、上海、深センといった一部の大都市では住宅価格が高騰する一方、2級以下の中小都市では過剰な不動産在庫が問題となっており、都市間での二極化もみられます(中国では都市を規模などから1級、2級などと分類されています。ただ公式な定義はなく、4級までしかないとの意見もあれば、5級都市といった表現が用いられることもあります)。

 不動産在庫の削減は2015年の中央経済工作会議(共産党と政府が年一度開催する経済関連で最高レベルの会議)や16年3月開催の全国人民代表大会でも重要課題として取り上げられました。中小都市の不動産在庫の削減と、大都市における不動産市場の安定化を同時に達成するという、難しいかじ取りが求められますが、政府の不動産市場への支援策は16年も続くことが予想され、今後の動向が注目されています。

支援策により不動産市況は回復傾向 

 中国では、住宅購入制限、住宅ローン規制といった不動産市場に対する引き締め政策が続けられていました。これは不動産市場の過熱、投機的な不動産の購入を抑制することが目的です。

 しかし、2014年頃から不動産市場の低迷が深刻化すると、地方政府が相次いで住宅購入制限を撤廃・緩和しました。中央当局も、14年9月に2軒目以降の住宅を購入する際の住宅ローンの頭金比率と貸付金利についての規制を一部緩和、金融政策では11月に12年7月以来の貸出基準金利の引き下げを発表しました。それまでの引き締め政策から一転、市場に対して緩和的な姿勢を示すようになったわけです。

 この緩和的な姿勢は2015年になっても続き、中国人民銀行は15年に計5回の貸出基準金利の引き下げと、計4回の預金準備率(RRR)の引き下げによる金融緩和を行いました。また、直近16年2月にも預金準備率の追加引き下げを発表しており、緩和的な金融政策が今後も続くことが予想されています。 

【図1】中国不動産、2016年も政府の支援策が続く見通し

 15年の不動産市場では、継続的な金融緩和策による住宅ローン金利の低下、3月、9月の2度にわたる住宅ローン頭金比率の引き下げを中心とした支援策が講じられました。これを背景に、消費者の住宅購入意欲が喚起され、住宅販売関連指標が改善しました。住宅販売面積の年初来累計前年同期比は、15年半ばにプラスに転換しています。その後、しばらく鈍化していたものの、16年2月の住宅の初回購入者および1軒目の住宅ローン完済後の2軒目住宅購入者への追加的な住宅ローン頭金比率の引き下げや、不動産取引にかかわる各種税率の引き下げなどを受け、1-2月の累計販売面積は前年同期比で再び大きく伸びました。 

【図2】中国不動産、2016年も政府の支援策が続く見通し

住宅価格は上昇が続くも都市間で二極化がみられる 

 3月18日に中国国家統計局が発表した2016年2月の住宅価格統計によれば、主要70都市の新築住宅価格が前月比で上昇した都市は47都市で、前月と比べて9都市増えています。下落は15都市で、前月から9都市減りました。平均価格は前年同月比1.9%の上昇と1月の同1.0%の上昇から伸びが加速、前月比では0.4%増と政府が市場を支援する方針に転換した14年後半から一貫して改善が続いています。

 都市別では1級都市の北京、上海、深セン、広州に代表されるような大都市における住宅価格の上昇が顕著となっており、中でも上海、深センにおける新築住宅価格は前年同月比でそれぞれ21%増、57%増と高騰が続いています。

 一方、2級、3級以下の中小都市では伸びが弱く、住宅価格に関して都市間での二極化がうかがえます。大多数の都市では住宅の購入に関する規制がすでに撤廃・緩和されているのに対して、深センや上海などの1級都市の一部では市場の過熱化や投機的な不動産取引を取り締まり、市場を安定化させるために、住宅購入制限や住宅ローン規制の継続および新たな規制の導入が予想されます。

【図3】中国不動産、2016年も政府の支援策が続く見通し

不動産在庫の解消に向けた取り組み 

 中小都市における住宅価格の伸び悩みの背景には、膨大に積み上がる不動産在庫があります。

 2015年12月に開催された中央経済工作会議では16年に取り組むべき5大任務として過剰生産設備の解消などとともに、この不動産在庫の解消が掲げられています。16年3月の全人代においても、李克強首相が政府工作報告の中で重点取組事項として言及しています。政府は不動産在庫削減のために、戸籍制度改革により農村部から都市部への人口移動を促すことで、都市部における住宅購入需要を拡大させようと目論んでいます。

 住宅・都市農村建設部によると、現在の都市部常住人口は7.7億人で、都市化率は常住人口ベースで56%。これを20年までに60%に引き上げることを目指すそうです。 

 今後、不動産販売面積の拡大、不動産販売の回復が大都市にとどまらず、その他の中小都市にも波及していくと見られており、16年の不動産市場の回復は、不動産価格の上昇がけん引すると予測しています。不動産在庫の解消が進めば不動産価格が上昇する傾向が、1級都市から2級、3級都市に広がり、加速することが期待されます。 

全国規模の大手デベロッパーに注目 

 中国当局は、中小都市の不動産在庫を削減し、かつ大都市で不動産市場を安定化させるという2つのことを同時に達成する難しいかじ取りが求められます。しかし、住宅ローン金利のさらなる緩和などを含む不動産市場への支援策は、2016年も引き続き実施されるでしょう。