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年代によって運用手法は変わる?年代別「より良い」投資の形とは

(画像=tadamichi/stock.adobe.com)

投資において、人それぞれで望ましい手法やスタイルはあっても、すべての人に当てはまる運用手法は存在しないでしょう。収入や家族の動向、生活環境、リスク許容度や考え方は人によって異なるためです。

また、運用手法は年代によっても変わります。年齢によって運用可能な余裕資金や期間が異なるためです。

この記事では、20代から60代までの年代別に、運用手法について考えていきます。

「貯蓄から投資」を促す政府の後押しもあり、証券口座数は増加が続いています。2023年の株式市場では日経平均株価が上昇を続け、7月にはバブル崩壊後の高値をつけました。複数のメディアで報じられたので、投資をしない方でもそのニュースを耳にしたことがあると思います。

また、2024年1月から「新NISA」がスタートします。株価上昇や新NISAの話題をきっかけに投資への関心が高まっており、投資を始めようという方もいらっしゃると思いますが、どのように投資をしていけばよいのか疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

ここからは、年代別の基本的な運用手法について考えていきましょう。

目次
「20代」 時間を味方につけた長期投資が可能
「30代」リスクの高い投資は控えたほうが無難
「40代」余裕資金があるなら新たな投資を検討
「50代」老後の資金を意識した投資を
「60代」これまでの投資による成果を確認する時期

「20代」 時間を味方につけた長期投資が可能

20代は「時間を味方につけた長期投資」ができるのが強みとなります。このため、資産形成の基本・王道と言われる「投資信託の長期・積立・分散投資」から始めるのが有効でしょう。

例えば、25歳から毎月2万円の複利運用(分配金を再投資する運用)を続け、結果的に利回り(年)3%で運用することができた場合、40年後の65歳時に積立の合計は約1,839万円になります(税金は考慮していません)。積立の元金は960万円なので利益は約879万円になります。

複利運用は、積立期間が長いほど効果が大きくなるため、積立開始時期が早ければ早いほど(若ければ若いほど)有利になると考えられます。

さらに、積立投資においては「長く続ける」ことが重要です。始めたばかりのころは、積み立てている投資信託の基準価額が下がって含み損の状態が続くと投資意欲がなくなりがちです。しかし、積立投資は「安い時には買付口数が多くなり、高い時には買付口数が少なくなる」ことで買付単価を平準化することができます(ドル・コスト平均法)。月々の積立金額の大きさよりも長く続けることを意識しましょう。

投資対象としては、国際分散投資の代表的なものとして「全世界株式型」や「全世界バランス型」の投資信託が挙げられます。また、つみたてNISAやiDeCoといった税制優遇制度を有効活用するとよいでしょう。

では、投信積立を25歳からスタートしたケースと、40歳からスタートしたケースをシミュレーションしてみましょう。

複利運用のシミュレーション
  シミュレーション① シミュレーション②
投資開始年齢 25歳 40歳
投資終了年齢 65歳
投資期間 40年間 25年間
積立金額/月 2万円 4万円
利回り(年) 3%
積立の元金 960万円 1,200万円
利益(約) 897万円 589万円
合計(約) 1,857万円 1,789万円
  • シミュレーション①
    25歳から月2万円の積立投資を始め65歳まで40年間継続、結果的に3%の利回り(年)で運用できた場合
    ⇒ 40年間で積立元金が960万円、利益が約897万円、元金と利益の合計は約1,857万円
  • シミュレーション②
    40歳から月4万円の積立投資を始め65歳まで25年間継続、結果的に3%の利回り(年)で運用できた場合
    ⇒ 25年間で積立元金が1,200万円、利益が約589万円、元金と利益の合計は約1,789万円

25歳から始めた①のケースは、40歳から始めた②のケースより元金が240万円少ないにもかかわらず、利益は約308万円多い結果となっています。早くから始めたら必ず利益が出る
というわけではありませんが、複利運用は早くから始めた方が有利になりやすいという一例です。ただし、運用パフォーマンスは市場環境等によって上下します。上のシミュレーションのように、一定の利回りが固定的に続くことはないので注意してください。

「あまり手がかからない」というのも積立投資のメリットです。定時定額買付を続ける投資手法であるため、積立投資を始めてからは、投資について毎日あれこれと深く考える必要はありません。資産形成をしながら仕事やプライベートの充実を図りやすいことも積立投資の魅力ではないでしょうか。

ただし、「長期積立なら絶対に安心」というわけではありません。投資対象によっては、投資の結果がプラスになるとは限らず、損失が生じる可能性もあることを留意しておきましょう。

「30代」リスクの高い投資は控えたほうが無難

20代に比べると収入が増えて、「投資に向ける資金に余裕が出てくる」と思われがちですが、20代後半から30代にかけては、結婚や出産、住宅の購入、子どもの教育といった重要なライフイベントが目白押しです。

どれも相応の支出を伴うライフイベントであり、保険などの関連支出も発生します。また、結婚や出産で家族が増えた場合、損失は自分1人ではなく、家族の生活や人生に直結するため、リスクの高い投資はよく考えて、控えた方がよいかもしれません。

収入が増えて投資に資金を回す余裕があれば、「個別株式への投資」や「株価指数などのベンチマークを上回ることを目指すアクティブ型投信への投資」などに挑戦するのも有効になってきます。一方、リスクを高めたくない場合は、続けてきた積立投資の積立金額を無理のない範囲で増やしたり、格付けの高い債券などへの投資を行ったりするのがよいでしょう。

「40代」余裕資金があるなら新たな投資を検討

40代は教育費の負担が大きくなる傾向があります。文部科学省の統計によると、幼稚園から大学まですべて公立の場合は合計で約774万円、すべて私立だと約2,228万円の教育費がかかると言われています(住居費、仕送りなどを除く)。

一方、収入の増加によって余裕資金が増えるケースが多いのも特徴です。総務省が公表した2022年の「家計収支報告」によると、可処分所得の平均は40歳未満の約49万円に対して、40~49歳が約53万円、50~59歳が約55万円と、年代が上がるごとに増加しています(60歳以上は収入が減るため約40万円に減少)。

あくまで平均額なので個々の家計によって事情は変わりますが、資金的に余裕がある場合は、株式投資など比較的リスクの高い投資に資金の一部を振り向けるのもよいでしょう。ただし、個別株式は、企業業績や株式相場の状況などの影響を受けて短期間に大きく下がることもあります。自身の取れるリスク許容度の範囲内なのかどうかを慎重に判断して投資しましょう。

「50代」老後の資金を意識した投資を

50代になると、子どもが経済的に独立する時期を迎えます。厚生労働省の「出生に関する統計」では、2019年の第一子出生時の母親の平均年齢は30.7歳です。仮に、同年代の相手と結婚した場合、父親と母親が50代に差し掛かるころ、第一子は20代になる計算です。

複数の子どもがいる場合、引き続き教育費はかかりますが、子どもが独立していくにつれて教育費は少なくなるため、積立金額を増やしたり、株式投資の比率を高めたりするのもよいでしょう。

一方、定年退職の時期が迫っていることも忘れてはいけません。2019年には老後2,000万円問題が大きな話題となりました。老後資金がどの程度必要なのかは人によって異なりますが、まとまった金額が必要なのは事実です。今まで積み上げてきた金融資産の一部をよりリスクの低い債券などに振り向けることも、老後資金の確保を考えるうえで重要です。

「60代」これまでの投資による成果を確認する時期

60代になったら、これまでの投資による運用成果を確認しましょう。

ここまで積み上げてきた金融資産に対して、老後の月次ベースの収入(年金やインカムゲインなど)と支出を割り出し、現在の生活水準を何歳まで維持できるかチェックしましょう。

人生100年時代に入り、長生きもリスクの一つになりえるため、無理のない範囲で積立投資は継続した方がよいでしょう。リスクの高い投資は基本的におすすめできません。老後の生活で「投資自体を楽しみたい」という方は、現在の生活水準を続けるために必要な金額を割り出し、リスク管理を心がけて投資を行うことが重要です。


いかがでしたでしょうか。ここまで述べてきた内容は、一般的と考えられる、基本的なシナリオをベースとしたものです。

パートナーや子どもがいないケース、個別の事情によって収入が減るケース、災害や事故などによる予想外の出費など、人それぞれで状況は変わりますが、これから有価証券投資や資産形成を始める方のご参考になればと思います。

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