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新興国・資源国通貨を取り巻く環境が改善方向に

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(写真=PIXTA)

新興国・資源国通貨は持ち直しの動き

新興国・資源国通貨を取り巻く環境が改善傾向にあります。

2015年夏の中国発の世界的な金融市場の混乱や資源価格の下落を受けて、新興国・資源国通貨は大幅に下落しました。しかし、2016年1月半ば以降は、中国当局の政策的下支え等による景気減速懸念の後退や原油価格の反発などから、それらの通貨に持ち直しの動きがみられ、米国の利上げペースが緩やかになるとの見方も為替相場の下支えとなりました。

さらに、①新興国・資源国の景気底入れ観測が高まりつつあること、②日本や欧州をはじめとする先進国の国債などの利回りの低下を受けたイールドハンティング(利回り追求)の動きがあること――などから、改めて相対的に金利の高い新興国・資源国通貨を見直す動きがみられています。

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国際通貨基金(IMF)は2016年の新興国の成長率見通しを上方修正

国際通貨基金(IMF)は10月に発表した最新の世界経済見通しにおいて、2016年の新興国の経済成長率見通しを前年比+4.1%から同+4.2%に上方修正しました。IMFは世界経済見通しを四半期ごと(1月、4月、7月、10月)に見直しますが、2014年以降、新興国の成長率見通しは見直しごとに下方修正が続いていただけに、ようやく悪化に歯止めがかかったことになります。

また、新興国と先進国の成長率の差は2009年をピークに縮小が続いていましたが、IMFは2016年以降、再び拡大に向かうと見込んでいます。

新興国・資源国の成長率見通しに大きな影響を与えている原油価格は、2016年夏場以降、1バレル=40米ドル~50米ドル台で底堅く推移しています。米国の原油生産量のピークアウトや石油輸出国機構(OPEC)による生産量調整の動きにより、原油の供給量拡大に歯止めがかかりつつあることが背景にあります。中長期的に需要と供給のバランスが収れんしていくにつれ、原油相場は徐々に底堅さを増してくるものと見込まれます。

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総じて取り巻く環境は改善も、国ごとの見極めは引き続き重要

このように新興国・資源国通貨を取り巻く環境に改善がみられますが、国ごとの安定度合いなどにばらつきがあり、主要な3テーマ、①経済ファンダメンタルズ、②政策への信認、③資源依存度、で通貨が選別される展開は継続するもの思われます。

具体的には、ブラジルではインフレ圧力が和らぎ、ブラジル中銀は2016年10月に景気下支えのため4年ぶりの利下げを実施しました。2017年は3年ぶりに景気回復が見込まれます。政治面でも8月にテメル新政権が誕生してから財政改革が進展しつつあり、ブラジルレアルの持ち直しにつながっています。

一方で、トルコは7月に発生したクーデター未遂事件後の粛清の動きが続くほか、内戦中のシリアの隣国であり、地政学リスクもくすぶります。こうしたトルコ固有のリスクが和らぐまでは、海外からの資金流入は抑制され、通貨トルコリラの下押し圧力が続く可能性が考えられます。

資源依存度に関しては、今後も需給の改善が進展することで原油価格の持ち直しが続くようであれば、資源輸出国経済の改善が続くとみられます。

米国経済の鈍化、欧州政治等がリスク要因

リスク要因のうち、インフレ圧力の高まりから米国の利上げペースが加速する可能性は低下しているようです。

実際、米連邦準備理事会(FRB)は、政策金利がゼロ近辺にあるなか、インフレ抑制のための利上げは十分にできるが、景気下支えのための利下げ余地は限られることを指摘しており、景気に配慮した緩やかな利上げを想定しています。

むしろ、米国の景気回復の鈍化により、世界経済の減速懸念が高まることに警戒したいところです。2009年6月を起点とする今回の米国の景気拡大局面は10月時点で88ヵ月に達します。戦後の拡大局面の平均期間(58ヵ月)を大きく上回っており、景気拡大局面は後半戦に入っているともみられます。また、中国経済、英国の欧州連合(EU)離脱を巡る政治動向なども、引き続きリスク要因として注意しておく必要があるでしょう。

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