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人生100年時代、必要な保険、不要な保険を見極める (後編)

(写真=iStock by Getty Images)

人生100年時代に備えた保険の見極め。前編では、ファイナンシャルプランナーの清水香さんに、「ヒト」のリスクに対しての公的制度による保障についてお聞きしました。後編では、引き続き清水さんに、公的制度だけでは備えることが難しい、「モノ」のリスクに対する保険について教えていただきます。

モノのリスクへの公的な補償は限定的

前編でお話しした通り、「ヒト」のリスクに対しては公的制度により一定の保障が確保されています。一方、住まいなど「モノ」のリスクに対しては、公的制度による補償は限定的です。「例えば、地震や風水害などの自然災害により住まいを失っても、公的な補償は『被災者生活再建支援制度』による最大300万円(※1)の支援金のみです。住まいは私有財産なので、国は税金で補償する立場をとっていません。民間の保険による備えがなければ、家計が破綻するおそれがあります」(清水さん)。

※1 住宅が「全壊」した世帯(「住宅の被害程度に応じて支給する支援金(基礎支援金)」の支給額100万円)で、住宅を建設・購入する世帯(「住宅の再建方法に応じて支給する支援金(加算支援金)」の支給額200万円)の場合。

30代、40代は持ち家率が高くなるだけに、住まいの購入とともに万全な備えをしておきたいものです。「特に住宅ローンを組んで間もなく被災した場合、保険による備えがないと、住宅ローンが残るうえに新しい住まいの費用も必要になり、二重の住居費がのしかかってくることになります。これこそ保険で備えるべき経済的リスクです」。

風水害には火災保険、地震には地震保険で備える

「風水害には損害保険会社で取り扱う火災保険で備えられます」。下図の通り、火災保険は複数の補償を束ねたパッケージ型が主流です。火災保険では風水害のことを水災、風災と呼びますが、シンプルなタイプだと水災補償がない場合があります。「住まいがマンションの高層階で水害の恐れがまったくないなら不要ですが、それ以外の場合は水災補償があるタイプを選びましょう。現状、加入している火災保険が水災補償が対象外の場合には、あるタイプに加入し直すことをお勧めします」。ただし、補償内容が手厚くなるほど保険料が高くなるので、下図の「手厚いタイプ」あたりを基準に選ぶといいでしょう。

地震には地震保険で備えます。「地震保険は必ず火災保険にセットで加入する決まりになっています。地震保険は国と損害保険会社が共同で運営しているため、補償内容はどこも同じです。補償額は火災保険の50%が上限になります。火災保険の補償額が2000万円なら、地震保険の補償額は1000万円までです。建て替え費用には不足しますが、一定のまとまったお金が受け取れるので、いざというときには心強いと思います」。

図表2 火災保険のタイプは?

持ち家の場合、火災保険と地震保険は建物と家財の両方に掛けましょう。「賃貸住まいの場合には建物の保険は不要ですが、自然災害により家財が被害を受けるおそれがあります。家財に火災保険と地震保険を掛けておくことをお勧めします」。なお、上述の通り、住まいがマンションの高層階で水害のおそれがない場合には、水災の補償は不要なので、外したプランに加入してもいいでしょう。

優先順位トップの「個人賠償責任保険」

もう一つ、滅多に起こらないけれど起こると家計が破綻するリスクとなるのが、日常生活のなかで他人を死傷させたり、他人のモノに損害を与えて、法律上の賠償責任が問われた場合です。「自転車事故でも億レベルの賠償請求の事例があります。こうしたリスクへの備えとなるのが『個人賠償責任保険』。数ある民間の保険のなかでも、加入すべき保険として優先順位のトップとなります」。

ただし、個人賠償責任保険は単体では加入できません。「個人賠償責任保険の保険料は年間で1000~2000円程度と非常に安いので、火災保険や自動車保険とセットにされていたり、クレジットカードに付帯していたりします。補償額が無制限で、示談交渉付きが安心です」。

賃貸住宅の場合、少額短期保険(※2)の火災保険(家財)を勧められるケースが多いのですが、「少額短期保険は補償額が最大で1000万円までのため、セットされている個人賠償責任保険の補償額も1000万円が上限で、示談交渉も付いていません。いざというときに役立たないおそれがあるので、しっかりした個人賠償責任保険が付帯した火災保険を自分で選んで加入したほうがいいでしょう」。

※2 少額(1000万円以内)で短期(1年以内)の保険を引き受ける少額短期保険業者が取り扱う保険のこと。

【コラム1】「保障」と「補償」、どう違う?

保険の話のなかによく出てくるのが「ホショウ」という言葉です。民間の保険でいうと、生命保険の分野で「保障」を使い、損害保険の分野で「補償」を使います。保障とは、所定の要件を満たした場合に、契約通りの額の保険金(給付金)を支払いますという約束です。死亡保険金3000万円の保険に加入すれば死亡時に3000万円が受け取れます。一方、「補償」とは契約した保険金額を上限に、実際に損害を被った額を保険金として支払うという約束です。住まいに2000万円の火災保険をかけていた場合、全損であれば2000万円の保険金が支払われますが、損害の程度が30%なら保険金額も30%の600万円となります。

【コラム2】保険ショップを上手に活用するには?

ショッピングセンターや商店街などで必ずといっていいほど見かける保険ショップ。複数の保険会社の商品を取り扱い、無料相談を行っていることから、公平な目でお客にぴったりの保険を選んでくれるところだと期待していないでしょうか。「実態は保険の代理店で、その人に一番向く保険商品を提供しなければいけないという義務もありません。漠然と相談に行くと、手数料が高いなど保険ショップにとって都合のいい商品を勧められかねないので注意です」。

上手に利用するには、自分に必要な保険商品の種類を考えてから出向くこと。「それに該当する商品にはどんなものがあるのか、情報収集の手段としてなら利用価値があります。その際もいきなり契約をするのは避けましょう」。

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
ライター 萬 真知子

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。