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「リーマンショックから10周年」― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話 

「異例の説明の解釈如何で」

リーマンショックから10周年。
あるミーティングで「リーマンショック直前の日経平均株価はいくらだったでしょう?」と質問してみました。
ところが、「え?いくらでしたっけ」という人ばかり。
ある外資系証券の最前線で長年活躍してきたOBさんは「15,000円位だったかな」。
記憶というのは意外とそんなものなのかも知れません。
答えは12,000円水準でした。

2008年9月12日金曜日。
日本経済新聞1面トップは、「住宅公社救済 米財務省、異例の説明」でした。
記事によると、米当局高官が住宅公社債を保有する日本の機関投資家へ直接説明したというもの。
「異例の」という修飾語が付いていました。
私の推測では、週明けの9月15日に起こることになるリーマン破綻を前にした当局の動きだったのではないかと思っています。
そこが的確に読み取れれば、当時の日経平均株価は12,000円台。
その後のリーマンショックにつながる株価の下落を予測できていれば、打撃は少なかった筈、といつも痛恨が甦ります。

とはいえ10年という時間軸で見てみると・・・・。
(10年前と、2018年9月4日時点の比較)

★当時のNYダウ:11,421ドル → 25,952ドル。
NASDAQ:2,261ポイント → 8,091ポイント。
GDP:14.8兆ドル → 20.4兆ドル。
小売売上高:3,667億ドル → 5,075億ドル。
ISM製造業指数:44.8 → 61.3。
新築住宅販売件数:43.3万戸 → 62.7万戸。
家計債務:12.86兆ドル → 13.29兆ドル。

★株式の時価総額ランキング比較。

☆2008年8月末
(1)エクソンモービル(4,155億ドル)
(2)GE(2,795億ドル)
(3)マイクロソフト(2,491億ドル)
(4)ウォルマート(2,329億ドル)
(5)中国移動(2,301億ドル)
(6)P&G(2,117億ドル)
(7)J&J(1,968億ドル)
(8)HSBC(1,902億ドル)
  ▼
  ▼
  ▼
☆2018年8月末
(1)アップル(10,994億ドル)
(2)アマゾン(10,000億ドル)
(3)マイクロソフト(8,613億ドル)
(4)アルファベット〈グーグル〉(8,521億ドル)
(5)バークシャー(5,171億ドル)
(6)ファイスブック(5,078億ドル)
(7)アリババ(4,536億ドル)
(8)テンセント(4,124億ドル)
(9)JPモルガン・チェース(3,850億ドル)
(10)J&J(3,613億ドル)

10年という月日で、相場環境は様変わりした印象です。
言えるのは「アップル」や「アマゾン」という超主役が登場したということ。
10年前に主役だったエネルギーや日用品の大手は、ほとんどランキングを下げているということ。
日本にはこの「主役」が不在だったというのが、太平洋の向こうとこちらの相場観、投資感覚の隔たりであるような気がします。

「ターバイとかカバコーとか」

ところで「ターバイ」とか「カバコー」という言葉が市場にはあります。
一体どこの言葉と思うほどですが、言われてみればそんなに難しくはありません。
「ターバイ」は「ターゲット・バイイング」。
将来、株価が下がれば購入したいと考えている株式がある場合に取る戦略です。
購入希望価格を権利行使価格とするプットオプションを売却すると・・・。
株価が権利行使価格を下回って権利行使日(満期日)を迎えた場合は、買い方から権利行使を受けることになります。
結果的に、権利行使価格でその株式を手に入れることになります。
株価が権利行使価格を上回って権利行使日を迎えた場合は、買い方から権利行使が行われません。
(時価よりもわざわざ安く売る投資家さんはいないハズです)。
この場合、株式を手に入れることはできません。
でも、最初に受け取ったオプション料は手元に残ります。
日本では、債券オプション市場で金融機関等が多用する戦略の1つでもあります。
これは、「ここまで下がったので買いました」という言い訳が通じるからかも知れません。

一方で「カバコー」。
これは「カバード・コール」の略語。
株式を保有しながら、その株式を対象とするコールオプション(買う権利)を売却する取引手法。
これもオプションの売りによるオプション料を得ることで、配当以上の収益獲得を狙う取引です。
満期日に株価が権利行使価格を下回っていれば、株式を手元に残したままオプション料が収入になる仕組みです。
満期日に株価が権利行使価格を上回っていた場合には、オプション料収入に加え権利行使価格での株式売却による収入があります。
言い換えれば、当初の目標価格で売れたと言うことになるわけです。
どちらも魅力的に映る手法。
市場の先行きに対して「強気ならカバコー、弱気ならターバイ」。
滅多に使われない言葉ですが、覚えておくといいかも知れません。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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