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バブルから30年、あの頃は・・・・。― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「バブルの頃」

最近「バブルの頃」ってどうだったのでしょう?と言う質問をよく受けます。
「 ゆとりでしょ? そう言うあなたは バブルでしょ?」という川柳に代表されるように、昭和バブルから約30年。
バブルを知る世代も全部から半分になってきたような時期でしょう。
騒ぎのさなかにいるとすべてが当たり前で気がつくことはあまりないのですが、今から考えると「変だ」ということはたくさんありました。
例えば、「夜の盛り場でタクシーを拾うには1万円札をピラピラと振ればよかった」。
確かにそういう風景に出くわしたこともあります。
しかし、実際は「タクシー会社の直通電話にかけて裏通りまで来てもらう」というのが正解だったような気がします。
携帯電話はまだほとんど出回っていませんでしたから(肩からかける大きな電話はありました:ショルダーホン)、この直通が意外と使えていたような気がします。
しかも・・・。
ほとんどタクシーが捕まらないことが多く、最後のお店に入った瞬間にタクシー会社に電話して数時間後のタクシーを確保するという方法もありました。
電話といえば、社有車に上司と同乗すると決まって「今、自動車の電話からかけてるんだ」と言って電話をされていた記憶もあります。
あれが精一杯の最先端だったんですね。
特に、地区営業担当役員は必ずといっていいほど自動車電話大好き人間だったような記憶があります。「今日はどうなってるんだ」と言いながらすぐに都内の支店に現れて「今から会議だ」とくるのですから、結構きつかったものです。
とても良い時代だったとは思えません。
もっとも、タクシーチケット使用は当たり前。コーポレートカードの限度は月間数百万円。
そこだけ見れば、「良かった」というより「懐かしい」でしょうが・・・。
「女性の送り迎えをするアッシーくん、プレゼント作戦のみつぐ君、食事をおごるだけのメッシーくん」など、など・・・・。
私より少し下の世代の男性は、クリスマスは超高級な贅沢なディナーを当たり前のようにセットする時代でもありました。
「木曜金曜に有給休暇を取って、ハワイや香港でリフレッシュ」。
これが冗談ではなかったのです。
平成の登場とともに消えたのが土曜日の仕事。
証券界はそれまで土曜は半日立会い。
メーカーなどはすでに週休2日でしたが、金融は遅れていました。
もっとも、週休2日の導入と同時に起こったのは、大納会の12月28日→12月30日への移動。銀行は31日→30日になったので良かったでしょうが、証券界は中小の証券会社の営業機会を確保するという理由で年末休暇が減りました。

ただ、表面上も実質的にも仕事があふれていたことは間違いありません。
例えば、証券会社の仕事でも、今では10億株なんて出来高は当たり前で瞬時に出来値がわかりますが、当時は人手だけ。
2013年5月のように76億株なんて出来高には翌日になっても対応できなかったでしょう。
今では東証1部の売買代金は15分ごとに開示されていますが、当時は手作業だったので売買高しか掲示されませんでした。
その名残りが東証1部の売買高なのかも知れません。
システム化が進んでいなかったので、どんな業界も飲み会も含めて長時間労働だったことは否定できません。
振り返ってみると、あちこちで派手な飲み会が行われていたように錯覚されますが、実態は仕事量が半端でなく多く、終業が10時、11時は当たり前。10時に支店の近くの居酒屋さんに集合して、一気に注文して1時間程度で引き上げるというのが支店の株屋さんの飲み方でありました。
だからいまだに酒席でのピッチは早いですし、2時間以上の宴席にはなかなか耐えられません。
「24時間働けますか」のキャッチコピーのCMなんかもありました。
「金融、証券、不動産、建設」などの業界がバブルを代表する業種だったでしょうか。
「ウォーターフロント」と評された土地が現実に魚市場になる時代。
「24時間金融都市東京」という夢も戻って来て欲しいものです。
東京23区の土地の値段でアメリカの土地が全部買える、なんて計算をした学者さんもいました。
「明日は今日より良い日。明日は今日より高い」。なんだかんだと言っても特に根拠が合ったわけではありませんが、世相は希望に包まれていたような気がします。根拠のない自信で溢れた虚構の世界だったかも知れませんが、少なくとも「明日は今日より悪い日が来る」なんて発想はめったに遭遇しませんでした。

あれから30年。
平成元年大納会の終値ベースの日経平均株価は38,915.87円、ザラバ高値は38,957.44円。もう一度あの風景を見てみたいものです。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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