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大手製造業の社内体制変革に注目――GE、シーメンス、日立

大手製造業の社内体制変革に注目――GE、シーメンス、日立-画像
(写真=PIXTA)

 米ゼネラル・エレクトリックは、自社内での研究開発成果を効率的に新製品開発に活用する「GEストア」を導入しています。高付加価値製品の開発に貢献しているようです。独シーメンスは、製品開発から生産までを自動化する「デジタル工場」の普及にシフトした事業体制を確立しています。日立製作所は、社会イノベーション事業推進のため、2016年4月にマーケット別の事業体制を導入すると発表しました。

GEでは社内資源の効率的な活用を促す体制を導入

 国内外の製造業で、市場のニーズなどに応じて事業体制を刷新する例が増えています。

 ゼネラル・エレクトリック(GE)では、米国内外の計10カ所の研究開発拠点や事業セグメントの間で、素材などに関する技術・知見を共有し、高付加価値製品の開発を促進するための体制として、「GEストア」を導入しました。

 これにより、例えば新型のディーゼル機関車を開発するにあたり、エネルギー管理や配電用の技術を活用して出力を高めると同時に、窒素酸化物(NOx)の排出量を76%削減することに成功しています。オイル&ガス部門(原油・天然ガス生産設備の開発・製造)や 航空部門(ジェットエンジンの開発・製造)の技術も応用して、ターボチャージャー(エンジンに多量の空気を送り込むことにより、エンジンの出力や燃費などを改善する装置)の効率向上を実現しました。

 また、もともと航空部門でエンジンのファン・ブレード用に開発した強化炭素繊維の技術が、GEストアにより風力発電機のタービン・ブレード、オイル&ガス部門での海底掘削装置、ヘルスケア部門におけるMRIシステムなどに応用されているそうです。

 GEの研究開発拠点では、3,000人もの研究者や技術者がさまざまな研究開発に取り組んでおり、15年12月期中に3,100件以上の特許を取得しています。今後もGEストアにより、これらの研究開発成果が高付加価値製品の開発に効率的に活用されることが期待されます。

大手製造業 図1

 またGEストアは、企業内のシェアード・サービス導入促進による、販管費の削減にも貢献しています。シェアード・サービスとは、グループ企業や企業内で事業部ごとに分かれていた人事・経理・総務といった間接業務・サービスを1カ所に集めて標準化することで、業務を効率化、人件費などコストの削減をめざす経営手法です。

 産業部門における売上高に対する販管費の割合は、13年12月期の実績が15.9%でしたが、15年12月期には13.9%まで低下したそうです。

 今後もGEストアが、同社の製品開発やコスト削減のドライバーとなることが期待されます。

シーメンスは3つの事業セクターを再編成

 ドイツのシーメンス(SIE)では、15年9月期に、従来の4つのインダストリー・セクター(エネルギー、産業、インフラストラクチャ&都市、ヘルスケア)の内、ヘルスケアを除く3つを再編成しました。

 エネルギー・セクター内の発電設備部門の一部(石油・ガス生産設備関連ソリューション)と、産業セクター内の産業自動化部門の内、機械間の情報交換のための製品やセンサを製造する事業などを、ドライブ技術(数値制御装置、電力変換装置、電動機およびそれらを作動させるアプリケーションやシステムなど)の大部分と組み合わせて、プロセス産業&ドライブ部門を設置しました。またドライブ技術部門の内、工作機械向けの自動化システムなどの事業と産業自動化部門の残りの事業を組み合わせて、デジタル工場部門を新設しています。

 その他、エネルギー・セクター内の送電設備部門と、インフラストラクチャ&都市セクター内の送電ソリューション部門の内、鉄道電化を除く事業をエネルギー管理部門に統合しました。また鉄道電化は輸送機械部門と統合してモビリティ部門としています。

 再編成前後の事業概要図は以下の図のとおりです。

大手製造業 図2

 ドイツでは、政府主導で「インダストリー4.0(第4次産業革命)」が進められています。

 これは製造業の現場で、情報端末を持った従業員やICタグを付けられた部品が、生産ラインと情報を自動的にやり取りすることで、従業員の熟練度、部品、その生産ラインで作られる製品に合わせて、生産ラインが自ら考えて最適な生産方法を実現するというものです。

 また、生産現場と本社、部品や原材料のサプライヤー、顧客に至るサプライチェーンの中で、(場合によっては競合企業も含めて)情報のやり取りをします。顧客の要望に応じて、原材料・ 部品の仕入れ先や生産プロセスを自在に組み替え、コストの問題から実現できなかったテーラーメード製品の生産(個別大量生産)を実現しています。

 シーメンスの「デジタル工場」は、産業・社会全体の自動化を実現する有力な手段と考えられています。事業セグメントの再編成により、関連技術や製品の開発が迅速になったり、さまざまな産業顧客に対して幅広い製品やソリューションが提供できるようになったりということが期待されています。

マーケット別の事業体制を導入する日立製作所

 日立製作所 <6501> では、情報技術(IT)で高度化された、安全・安心な社会インフラをグローバルに提供することを目指す「社会イノベーション事業」を推進しています。その目的は、環境、エネルギー、教育、医療などさまざまな課題の解決に貢献して、持続可能な社会を実現することです。

大手製造業 図3

 日立は2016年4月に、2009年以来の事業カンパニー制から、マーケット別の事業体制に移行しました。これは、社会イノベーション事業の拡大に向け、顧客との「協創」を加速し、サービスとプロダクトの両輪によって価値あるイノベーションを提供するためだそうです。

 マーケットを4つに分類――1 電力・エネルギー、2 産業・水、3 アーバン、4 金融・公共・ ヘルスケア――するとともに、サービス主体の事業群と、製品、部品、 材料などを提供するプロダクト主体の事業群に細分しています。

 サービス主体の事業群では、業種・地域別に営業やエンジニアリング、コンサルティングなどのフロント機能を強化した12のフロント・ビジネスユニット(BU)を設立し、イノベーションをサービスの形で提供するといいます。

 それと同時に、オープンな共通プラットフォームをフロントBUやパートナー企業などに提供することで、フロントBUが顧客のために提供するサービスの価値を高め、社会イノベーション事業の拡大を後押しするために、サービス&プラットフォームBUを設立しています。

 カンパニー制の下で稼ぎ頭の1つとなっていた情報・通信システム部門では、例えば企業向け情報システムや公共機関向け通信システムを手掛けている部隊が、新設の「金融BU」や「公共BU」に移管されます。注目されるのは、情報・通信システム部門の大部分が12のBUを支援し、将来はサービス&プラットフォームBUに合流する構想です。

 市場のニーズに応じて事業体制を刷新する大手製造業は今後も増えてくると思われます。企業業績にどのような影響を与えるのか、慎重に注目していきましょう。