みずほ証券 公式チャンネル 今月のマーケット動向は?
Home / マーケットを知る / 土木関連優位の展開が予想されるゼネコン業界

土木関連優位の展開が予想されるゼネコン業界

土木関連優位の展開が予想されるゼネコン業界 -画像
(写真=PIXTA)

 2016年の年明け以降、株式市場の不安定な動きが続く中で、ゼネコンの株価は比較的堅調に推移しています。各社の業績が順調に推移しており、17年3月期も土木工事を中心に増益基調を維持するとみられることが背景にあります。

 一方で、当面はカタリスト(株価や相場など状況を変えうる材料のこと)に乏しい展開となることも予想され、17年3月期第1四半期決算までは個別選別色が強まると考えられます。 

順調な業績を背景に株価は堅調。ただし、当面はカタリスト不足が予想される

 下のグラフは2015年12月30日を100とした東証:業種別指数 建設業(建設株指数)と 東証株価指数(TOPIX)の推移です。

 TOPIXは2015年8月から低調で、16年に入りさらに大きく下げていることが分かります。これに対し、建設株指数は年初来8%の下落(4/4現在)となりましたが、TOPIXの同16%下落(同)に対し、相対的に堅調に推移しています。 

 土木関連優位 図1

 建設株指数が比較的堅調な背景には、16年3月期は業績上振れ着地となるゼネコンが多いとみられ、また17年3月期も順調な推移が予想されるためと考えられます。

 しかし、ゼネコンの見通しは保守的な傾向があり、17年3月期計画については減益とする企業もあるかもしれません。株式市場はゼネコンの保守性を意識しており、ネガティブな反応は少ないと思われます。ただ足元の経済環境は不透明感がただよっており、悪材料が出尽くして株価が上昇する――ということも期待しにくいでしょう。

 次に業界全体が見直されるような材料が出る可能性があるのは、16年4-6月期の決算発表時でしょう。しかも、保守的な会社計画に対して、各社の業績が上振れ気味に推移していることが確認されればという条件付きです。現時点でその可能性の高低を判断することはできませんが、少なくともQ1発表時まではカタリストに乏しい展開になると考えています。 

17年3月期は土木関連の大型工事の発注が注目される

 下のグラフは国土交通省が公表している建設工事の受注動向です。2015年4月以降、建設受注が前年割れとなる月が増え、15年4月~16年2月の累計で、建設受注は前年同期比4.2%の減少となっています。民間工事は同5.9%増えたものの、公共工事が前年度の景気対策による大幅な前倒し発注の反動で同20.8%減となっています。ただし、建設受注は2013年度20.1%増、14年度8.2%増と増えてきており、15年度は高水準を維持しているととらえるべきでしょう。

土木関連優位 図2
 
 大型工事案件の動向では、ここまで「南アルプストンネル」(山梨、静岡、長野3県にまたがる約25キロメートル)などのリニア関連の工事を大手ゼネコン4社が受注しています。今後も「中央アルプストンネル」(長野、岐阜にまたがる約23キロメートル)などが予定され、大手ゼネコンだけでなく、準大手がスポンサーを務めるジョイントベンチャーによる受注の可能性もあり注目されています。

 その他、東京外環道や第2東名(新東名高速道路)など、土木関連の大型工事の発注が予想されています。経済対策としての補正予算の可能性もあり、当面は土木関連が注目を集める可能性があるでしょう。 

完工利益率はすでに高水準だが、土木工事を中心に改善の余地あり

 次のグラフはゼネコンの収益性を示す指標として使用されることが多い、各社単体の完成工事総利益率(完工利益率)の推移を示したものです。

大手4社(大成建設、大林組、清水建設、鹿島建設)、主要な準大手4社(西松建設、前田建設工業、戸田建設、五洋建設)の完工利益率については、準大手は13年3月期、大手は14年3月期を底に改善傾向にあります。

 16年3月期第1~3四半期(15年4-12 月)の完工利益率は、大手ゼネコン4社の加重平均で前年同期比4.0ポイント改善の10.1%、準大手4社は同2.0ポイント改善の8.8%となりました。通期会社計画については、それぞれ同8.7%、8.1%とされています。第1~3四半期の実績が計画を上回っていることから、それぞれ全般的に上振れの可能性が高いと考えています。

 一方で、完工利益率は16年3月期で、直近ピークの 11年3月期を超えるとみられ、すでに高水準にあるといえます。また16年後半からは東京オリンピック・パラリンピック関連工事が本格化し、足元で落ち着いている労務費などの建設コストが上昇する可能性もあります。現在の建設需要の高さを考えれば、コスト増は価格に反映できるでしょうが、タイムラグが発生するかもしれません。以上のことから、17年3期の工事の採算改善傾向は緩やかなものになるでしょう。 
 
土木関連優位 図3