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イギリスのFinTech事情

FinTech
(写真=PIXTA)

 2014年8月、ジョージ・オズボーン英財務相が国を世界的なFinTechの中心地にしていくことを宣言、その試みが軌道に乗り、ロンドンは瞬く間に世界屈指のFinTech都市に成長しました。

英国金融市場のイメージを一新したFinTech

 アーンスト・アンド・ヤング社が2016年2月に発表したレポート「On The Cutting Edge」によると、ロンドンのFinTech市場の規模は2015年で66億ポンドとなっており、ロンドンは世界7大FinTechハブの1つといえるまでに成長しています。

 ここまで発展した最大の要因は、政府の支援策(税制上の優遇措置、規制体制、支援プログラム、スタートアップ専用融資など)が手厚いことでしょう。特に、数ある支援プログラムの中でもキャメロン政権が2010年に打ち出した「Tech City計画」が大きかったようです。

 以前、ロンドン東部は治安の悪さで敬遠されがちでしたが、ここに最先端のテクノロジー企業を集結させました。Googleなど国際大手企業の支援のもと、将来有望なテクノロジー・スタートアップが成長できる“英国版シリコンバレー”を誕生させたのです。

 また政府認定の国際事業促進団体も、今年3度目となった欧州最大のFinTechイベント「London FinTech Week」など、コラボレーションとイノベーションを刺激するイベントを開催しています。

英三大スタートアップが世界の金融産業に革命を起こす?

 イギリスを代表するFinTechスタートアップとして、ファンディング・サークル(Funding Circle、P2P融資)、アトムバンク(Atom Bank、オンラインバンク)、トランスファーワイズ(TransferWise、P2P海外送金サービス)などがあります。これらは、KPMGなどが作成した「2015年版FinTech100」のトップ50にランク入りしています。

 2010年設立のファンディング・サークルは、小企業用小口融資のオンライン仲介サービスを提供しています。利用企業数は1万5,000社で、仲介総額は2016年7月9日現在、13億5,307万ポンドに達しています。

 2014年に誕生したアトムバンクは、英国初のモバイル専用バンクとして話題を呼んでいます。支店をもたない銀行に対する消費者の不安感を和らげるために、24時間365日アクセス可能なカスタマーサービスを提供し、「顔が見えなくても安心で便利な銀行」と好評を得ています。

 トランスファーワイズは、低コストなP2P海外送金システムで人気が沸騰しています。海外送金というものの、実際には送金を各国内で処理し、為替手数料がかからない仕組みを実現しているのです。設立6年間にして送金総額はすでに10億ポンドといわれます。全送金の94%が24時間以内に完了するというスピーディーさも魅力です。また、ヴァージン・グループの創設者、リチャード・ブランソン氏も出資しています。

 そのほか、オンラインバンクのMondoやの決済サービスのGoCardless、外貨両替サービスを提供するRevolutなど、ユニークなスタートアップが続々と登場しています。

 英国ならではFinTechのさらなる発展は、今後も目が離せないものとなるでしょう。

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