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ブレグジットは世界に新たな金融危機を引き起こす?

Union Jack
(写真=PIXTA)
2016年10月2日の保守党大会で英国のメイ首相は、2017年3月までに欧州連合(EU)から離脱する手続きを開始することを明言しました。これを受けて英ポンドが急落するなど金融市場が動揺する場面もみられています。英国のEU離脱は新たな金融危機を引き起こすのでしょうか。

英国は英語でブリテン、離脱のことを英語でイグジットということから、これを合わせて英国のEU離脱のことをブレグジットと呼びます。そもそも、英国はなぜEUから離脱しようとしたのでしょうか。

その大きな理由とされるのが移民、難民問題です。EUは「財、サービス、人、資本」の移動が自由な単一市場ですが、EUがポーランドなど東側に拡大したことやシリアの難民問題によって英国に移民が流入しました。「安い賃金で働く移民に仕事が取られる」「難民によって社会保障費が使われてしまう」などといった不満が高まりました。

一方で、英国にとってEU内での自由な貿易や金融における単一免許制度は魅力的です。英国民が移民問題と単一市場のどちらを選択するかが注目されましたが、2016年6月24日に行われたEUから離脱するかどうかを問う国民投票で、英国民は離脱することを選択しました。

英国の輸出に占めるEU向けの割合は約50%(2015年)、輸入に占める割合は56%(同)にも及びます。EUとの貿易の自由を失えば、英国の産業界や経済に与える影響は大きなものとなるでしょう。

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そのため、難民問題を優先し貿易の自由を犠牲にする離脱のやり方を、経済に大きな悪影響を与えることから「ハードブレグジット」、貿易の自由を優先しつつ離脱を行うことを「ソフトブレグジット」とよんだりします。

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メイ首相は2日の演説で移民問題を優先させる姿勢を見せたことからハードブレグジットへの懸念が強まる場面がありましたが、その後、議会の関与を認めたことで拙速な離脱は避けられるのではないかとの安心感が広がりました。

ブレグジットにはもう1つ、スコットランド独立問題も潜んでいることも忘れてはならないポイントです。英国は北アイルランド・スコットランド・イングランド・ウェールズの4つの地域で構成されていますが、この中で、スコットランドはEUに残留することを強く望んでいるとされます。

実際、EUからの独立を問う国民投票ではスコットランドはEU残留派が過半数を占めました。スコットランド自治政府首相は英国がEUから独立するなら、英国からの独立を問う住民投票を行う可能性を示唆しています。

今後、スコットランドが本格的に英国からの離脱を目指す傾向が強まれば、事態は英国のEU離脱のみならず、英国の分裂となり、英ポンドや英国国債は大きく売られ、不透明感から世界の金融市場に悪影響となる可能性が強まります。

このように英国が拙速にEUからの離脱に向かえば英国経済のみならず世界経済に対しても大きな悪影響を及ぼす可能性があるだけに英国議会も悪影響をできる限り解除しつつ慎重に事を運ぶとみられます。来年序盤にかけて予断は許さないものの、基本的には影響がより小さいソフトブレグジットが選択されると予想されます。

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