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景気下振れリスク払しょくに金融緩和で臨む欧州

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(写真=PIXTA)

2016年4-6月期の実質GDPはユーロ圏、英国とも緩やかな成長の継続を確認したものの、英国のEU離脱決定によって先行きには不透明感が漂っています。当面は、景気下振れ回避のため、中央銀行には機動的な追加金融緩和の実施が求められる状況です。しかし、欧州は政治リスクや地政学リスクを抱えるなか、景気安定に向けた協調的な財政政策等を打ち出しにくく、2017年にかけても景気下振れリスクを払しょくできない公算が大きいと考えられます。

4-6月期はユーロ圏、英国とも緩やかな成長維持も、2極化が鮮明に

2016年前半、ユーロ圏を含む欧州経済は緩やかな成長が続いたことが確認されました。具体的には、4-6月期の実質GDP成長率(前期比、以下同じ)は、ユーロ圏が+0.3%、欧州連合(EU)全体も+0.4%となり、いずれも1-3月期の+0.6%、+0.5%に比べ減速したものの、ともに13四半期連続のプラス成長を記録しました。

ユーロ圏主要国をみると、ドイツとスペインが高めの成長を続ける一方、フランスとイタリアは低調な動きにとどまり、主要国間の2極化が再び鮮明になりました。実際、ドイツは暖冬で建設投資が好調だった1-3月期(+0.7)の反動から4-6月期は+0.4%と減速したものの、家計や政府の消費が底堅かったほか、純輸出(外需)も成長にプラス寄与となったもようです。一方、フランスは個人消費が横ばいにとどまったこと、またイタリアでは在庫削減が響きました。

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また、これはドイツも同様ですが、通貨安、原油安、海外景気の拡大、金融緩和等という追い風にもかかわらず、民間設備投資の低迷が長期にわたっていることも、ユーロ圏景気の回復を緩やかなものにとどめる要因であることは見逃せません。2016年は新興国を中心とした海外景気の減速等、これらの追い風が弱まることが見込まれる一方、金融市場の不安定さも実体経済に向かい風となることが懸念されています。

他方、英国経済は4-6月期に+0.6%と1-3月期の+0.4%から成長率を高めました。もっとも、英国では6月下旬のEU離脱決定以降、足元にかけて企業景況感や消費マインド等のセンチメント指標の悪化が確認され、今年後半にはその影響が実体経済に及ぶとの見方もあります。たとえば、英国立経済社会研究所は8月9日に7月時点で英国の月次GDP(暫定値)が前月比マイナスに転じたと報じ、英国が今後2017年末にかけて景気後退に陥る可能性を指摘しています。

中央銀行の追加緩和に期待も、それだけで景気下振れリスク払しょくは困難か

当面、こうした景気の下振れリスクを抑えるため、ユーロ圏では欧州中央銀行(ECB)、英国ではイングランド銀行(BOE)が、ともに機動的な追加緩和を実施することが求められています。すでにBOEは8月4日に政策金利の引き下げと量的緩和の拡大を柱とする包括的な追加緩和パッケージを発表し、今後の景気動向をにらみつつ追加措置の検討も打ち出しました。ECBも9月8日開催予定の政策理事会で、追加緩和の必要性を検討することを表明しています。

ただ、ユーロ圏、英国とも景気下振れを回避し、成長力を取り戻すことを金融政策だけで達成するのは難しいとみられます。持続的な景気の回復には、すでにEU首脳会議で合意されている協調的な投資計画を実行し、設備投資の低迷や高い失業率等の問題解決に取り組むことが求められるでしょう。しかし、開始時期やその内容等がいまだ明確でない英国のEU脱退交渉を筆頭に、政治リスク(イタリア国民投票等)や地政学リスク(頻発するテロ、難民受け入れ問題等)を抱える欧州主要国は、2017年にフランス、ドイツで国政選挙が予定されていることもあってそうした余裕を失いつつあります。このまま金融政策頼みが長期化すれば、景気下振れリスクを払しょくできない公算が大きいとみられます。

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