これらのインパクトは時として大きく市場を動かします。
金融不安や金融危機が予想され、投資家たちが「相場の先行きが不透明だ」と感じると、急落や混乱に備えてよりリスクの少ない資産(国債や短期金融商品など)に資金を移したり、価格の下落を見越しての売買をしたりして値動きが激しくなりやすく、思わぬ損をしてしまうこともあります。
そもそも世界の投資家たちの「不透明だ」という心理は、どうやったらわかるのでしょうか?
投資家たちの心理を反映する「恐怖指数」とは
日々ニュースを見ていると今の相場が楽観的なのか、悲観的なのか、なんとなくわかるような気もしますが、漠然とした投資家たちの心理を具体的な数値で表そうとしたのが「恐怖指数」と呼ばれるものです。
「恐怖指数」は“近い将来、株価がどれくらい動くのか”という投資家の予想を数値化したもので、相場が大きく動くと投資家たちが予想すると高くなる特徴があります。
恐怖指数が高まるということは、急な価格変動のリスクが高まっている状態を意味します。
恐怖指数は何をもとに算出しているの?
この「恐怖指数」の正体は、「ボラティリティ・インデックス(VIX指数)」で、1ヵ月先の株価の予測変動率=ボラティリティを表しています。
世界のどの場所でリスクが高まっているかによって、恐怖指数にも色々と種類がありますが、通常はシカゴ・オプション取引所がS&P500(米国市場に上場している代表的な500銘柄で構成される株価指数)のオプション取引(将来的な価格変動を見越してあらかじめ決めた価格で通貨や金利を売買すること)のボラティリティをもとに算出したものが一般的な恐怖指数として知られています。
恐怖指数の計算式は、金利や先渡価格のインデックスなどをもとに計算しているのですがとても難しい公式で、公式を覚えて自分で計算することは大変なのでとにかく、「恐怖指数が高くなったら、市場の不安が高まっている!」と覚えておけばよいでしょう。
数値の目安としては10~20が平常。30台でパニック状態、40を超えるとメガ・ボトム(大底)といわれています。
過去に恐怖指数が高まった主な出来事
過去に金融不安を引き起こした出来事と、恐怖指数を振り返ってみると、株式市場の歴史的にもインパクトのある出来事が浮かび上がってきます。
リーマン・ショックを発端とした世界的な金融危機では史上最高値の“89.53”を記録するなど、未曾有の金融危機であったことが分かりますね。
出来事 | 恐怖指数 高値 |
アジア通貨危機(1997年7月2日) | 48.64(1997年10月28日) |
ロシアデフォルト(1998年8月17日) | 49.53(1998年10月8日) |
アメリカ同時多発テロ(2001年 9月11日) | 49.35(2001年9月21日) |
エンロン不正会計事件(2001年10月17日) | 48.46(2002年7月24日) |
ワールドコム破綻(2002年7月21日) | 45.21(2002年8月5日) |
リーマン・ブラザーズ破綻(2008年9月15日) | 42.16(2008年9月18日) |
世界金融危機(2008年9月29日) | 89.53(2008年10月24日・史上最高値) |
ギリシャ財政問題・欧州債務危機(2009年10月) | 48.20(2010年5月21日) |
S&Pが米国債を格下げ(2011年8月5日) | 48.0(2011年8月8日) |
ギリシャのデフォルト危機(2011年10月3日) | 46.88(2011年10月4日) |
中国経済失速懸念(2015年8月11日) | 53.29(2015年8月24日) |
上の表を見て、「あれ?」と思った方もいるかもしれません。
ブレグジットやトランプ氏が勝利したアメリカの大統領選など、2016年は世界的にも投資家たちの予想を覆すビッグインパクトが起こったのは記憶に新しいところ。
しかしそれでも恐怖指数のほうはブレグジットが26.72、大統領選が23.01という平常時のレンジ上限の目安より少し高い程度の水準にとどまっています。
このことをふまえると、過去の歴史的な出来事がどれほど投資家たちを震撼させたかということを感じることができますね。
そして実は、本当の史上最高値は1987年に起こった「ブラックマンデー」だといわれています。現在とは異なる算出方法ではありますが、旧VIX指数によると最高で“172.79”という驚異的な数値を叩き出しています。
恐怖指数を投資のリスク回避に役立てよう
投資家心理を反映してくれる恐怖指数。株価の急落で思わぬ損失を被ることを防ぐためにも常に意識しておきたい指数です。
今後のリスクヘッジのためにぜひ参考にしてみてくださいね。
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