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【第2回】2017年、知っておきたい経済の話 金融市場を揺るがすリスク~英国のEU離脱②~

EU
(写真=PIXTA)

2016年半ばにかけてはさまざまなリスクが世界の金融市場を揺るがす局面がみられてきましたが、2016年終盤にはリスクに対する懸念は大きく後退し、トランプ次期米大統領の政策期待が盛り上がるなど、環境は改善しつつあるかのようにみえます。しかし、2017年に再び金融市場を揺るがすリスクが顕在化するのでしょうか。

ここでは金融市場で2017年のリスクとして懸念されている英国のEU離脱について整理、解説する第2弾です。

前回の記事は <こちら> からご覧ください。

英国史上2人目となる女性首相誕生。移民に対しては厳しい姿勢

2016年6月24日の国民投票で、英国民がEUからの離脱を選択したことを受け、残留を支持していたキャメロン首相(当時)は辞任し、同じ保守党のテリーザ・メイ氏が首相に就任しました。キャメロン首相のもとで内務大臣を務めたメイ氏は国民投票が実施された時にはキャメロン氏の方針に従う形で残留を支持していましたが、EUに対して厳しい考えをもっているとされます。と言うのも、メイ氏が務めた内務大臣は移民問題を担当するため、EUからの移民が英国に与える悪影響を良く知っているからです。

イギリスを悩ます移民問題と経済問題

英国民がEUからの離脱を選択した大きな理由は移民・難民問題です。

一方で、EU残留を唱える人たちの主張は統一経済圏に残ることによる経済的なメリットです。英国はEUの「ヒトの自由」は拒否したいけれど、「モノとカネの自由」は欲しい、というわけです。加えてEU加盟国に課せられている分担金も払いたくないといいます。

しかし、そんな都合のいいことを他のEU加盟国は許すわけにはいきません。EUからの離脱は、統一経済圏からの離脱でありいいとこ取りは許さない、というのがEUの基本的な姿勢です。

2017年3月までに正式に離脱の申告を行う見込み

国民投票で英国民はEUからの離脱を選択しましたが、この国民投票には法的拘束力はありません。正式に離脱にむけて手続きを進めるには英国がEUに対して離脱を申告する必要があります。実際にはEU首脳会合でメイ首相が申告するとみられますが、メイ首相はこの申告を2017年3月までに行う方針を明らかにしています。

「ハードブレグジット」と「ソフトブレグジット」

英国のEU離脱を「ブレグジット」と呼びます。英国のことを「ブリテン」と呼び(正式名称は「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」)ますが、ブリテンがEUから出ていく(exit:イグジット)のでブレグジット、というわけです。

英国がブレグジットをどんな形で行うのかにも市場の関心は集まっており、「統一経済圏への残留を優先し、経済にやさしい離脱」を「ソフトブレグジット」と呼び、「移民排除を優先して、経済に厳しい離脱」を「ハードブレグジット」と呼んでいます。

英国の姿勢が「ハードブレグジット」に傾けば、2017年の金融市場に動揺が起こるかもしれません。そしてこの「ハードブレグジット」にも、さらに大きな“リスク”が潜んでいることを覚えておく必要があります。

今後の最悪のシナリオとは?

最悪のシナリオは「ハードブレグジット」に「スコットランド独立問題」が加わるシナリオです。

正式名称にもある通り、英国は連合王国です。厳密には「イングランド」「スコットランド」「ウェールズ」「北アイルランド」が連合して英国を形成していますが、そのうちの1つ、スコットランドはEUの残留を強く望んでおり、場合によっては英国からの独立もありうる、との立場をとっています。当時は否決されたものの、スコットランドは2014年に英国からの独立を巡る住民投票を行った実績もあるのです。もし、この話が現実化すれば、「英国のEU離脱」だけではなく「英国の分裂」という懸念も加わることで、金融市場に混乱をもたらしかねません。英国が分裂に向かうとなれば、通貨であるポンドや国債が大きく売られる可能性もあります。

市場の緊張の高まりには要注意

メイ首相は3月までに離脱を申告するとしているものの、離脱にむけたプロセスやプランはほとんど明らかになっていません。しかし、経済への悪影響が事前にわかっているだけに、これを最小限にするため統一経済圏への残留を含めさまざまな対策を講じるとみられています。したがって、世界の金融市場の混乱は避けられるだろう、というのが基本的な見方です。とはいえ、2017年に入ると3月にかけて英国のEU離脱を巡る緊張は高まる可能性があることから、一定の注意は必要でしょう。

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