個人にまつわるデータの新しい活用方法として「情報銀行」という概念が注目を集めています。政府の成長戦略としても検討が始められているこの「情報銀行」、はたして国民の理解を得ることができるのでしょうか?
データはあっても活用できないジレンマ
個人情報保護法の施行以来、名前や住所、電話番号などの基本的な個人情報をはじめ、ネットショッピングの購買履歴や健康情報など、個人情報にひもづく様々なデータは企業ごとに厳重に管理され、あらかじめ決められた範囲に限り利用を許されています。
個人情報に対する国民の意識も高まり、ひとたび個人情報を流出させてしまった企業は多大な信用低下と損害を被ってしまうため、その扱いについてはかなり慎重になっています。
利用価値があるからこそ、お金を払ってでも欲しがる者がいる訳ですが、個人にまつわるデータは、悪用する者に利用されるのを防ぎたい反面、有効に利用することができれば新しいサービスの開発や生活の利便性向上に大きく役立つと考えられます。
しかし、現状では個人にまつわるデータを様々な企業をまたいで横断的に収集・集約、安全に管理して活用させるようなしくみがないため、政府は新たに「情報銀行」というしくみを実現させようと動き始めたのです。
政府が構想する個人データの一括管理のしくみ「情報銀行」とは
政府で検討されている「情報銀行」。いったいどのようなしくみなのでしょうか。
「情報銀行」は企業が保有している個人にまつわるデータを銀行の預金のように“本人”から預かり、情報という資産を運用(=情報を必要とする企業に提供)することで得られた便益を、本人に還元します。
主な情報としては購買履歴や位置・移動情報・健康状態などが想定されていて、預けるかどうかについては本人の意思で選ぶことができます。
多くの人から預けられた情報は安全に蓄積・管理され、情報銀行が融資の審査をするように、審査を通過した信頼できる企業へ適切に提供することにより、個人のニーズにこたえた商品やサービスを作りたいと思っている企業の活動に役立てられます。
このように「情報銀行」が、個人にまつわるデータを欲している企業との間に入ることで、データを活用してもっと商品やサービスを良くしてよ、という個人と、データが欲しいという企業が安心してつながることができるようになるのです。
国民の理解を得られるか、安心して管理を任せられるかが今後の課題
2015年から運用がはじまったマイナンバー制度についても、抵抗があると感じた人は多いのではないでしょうか。
個人にまつわる情報については、悪意のある者に悪用されてしまう恐れがあり、他者に渡したくないという意識が国民に根強くあるため、「情報銀行」の実現は一筋縄では行かないかもしれません。
ビッグデータを有効活用してより便利な未来を実現するための一歩として、今後は情報活用のメリットを広く世の中に知らせるとともにセキュリティ面や情報の提供先の安全性の強化が課題となるでしょう。
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