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変わりつつある日本の寄附制度 控除の計算方法と対象が拡充

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(写真=PIXTA)

内閣府の資料によると、寄附に対する世界的なランキングでは、主要国が軒並み上位に位置しているなか、日本は下位に位置していることがわかります。

このランキングは寄附金額だけでなく、ボランティア活動、人助けなどの調査項目から総合的に算出しているものですが、世界から見ると日本は「寄附文化が発展していない国」ということなのでしょうか。

米国の寄附文化

米国ではビル・ゲイツ氏や投資家のウォーレン・バフェット氏などの、富豪と呼ばれる富裕層が積極的に寄附しています。ただそれだけではなく、富豪というわけでもない人々もボランティアや寄附をあたりまえのように行っており、「寄附文化」が広く自然な形で根付いているようで、米国と比べて日本の個人寄附総額には大きな開きがあります。

税制面で優遇されるという理由も一つでしょうが、それだけではなく、宗教に基づいた思想や考え方が背景にあるともいわれています。内閣府による資料中の「寄附等の実態」によると、米国の寄附額の分野別割合(2012年)は、宗教が32%、教育と福祉事業がそれぞれ13%を占めています。日本でも2012年の個人寄附の分野別割合のトップは、宗教が33%、緊急災害支援9.6%、国際協力9.6%、教育研究8.5%と続きます。

2011年に改正された寄附税制

一方日本では、NPO法人の健全な発展や、ボランティア活動・寄附を促進するため、2011年6月に「特定非営利活動促進法(NPO法)」が改正されています。国や地方公共団体、特定公益増進法人などに寄附をすると、「寄附金控除」を受けることができます。それまで寄附金控除は所得控除のみでしたが、所得控除または税額控除の選択制となるなど制度面での拡充が図られました。

「寄附金控除」は所得控除によります。2011年分までは、個人住民税における寄附金控除の適用下限額は5,000円でしたが、2012年分以降の個人住民税では2,000円を差し引いた後の額を所得控除できるようになりました。一方「寄附金特別控除」は税額控除によりますが、認定NPO法人への寄附なら所得控除または税額控除のどちらか有利な方を選択して税額控除金額を計算し納税することができます。

個人が支出する寄附金の控除については、どこに寄附をしても控除の対象になるというわけではありません。NPO法人の場合は、基準を満たして認められた認定NPO法人、あるいは仮認定NPO法人(2016年に一部法改正があり、2017年4月1日の施行後は「特例認定NPO法人」と名称変更)である必要があります。

実は、2011年3月末の時点で寄附金控除の対象として認められていた認定NPO法人は、わずか198法人しかなかったのです。2011年3月のNPO法人数が4万法人を超えていたことと比べると、かなり少ないことが分かります。2012年4月1日の改正NPO法施行後、認定数が増加し、2017年3月17日末現在では997法人に増えています(「認定NPO法人等」の一覧は、内閣府ホームページ(www.npo-homepage.go.jp)をご覧ください)。

寄附を行うきっかけや動機と制度による後押し

東日本大震災後、多くの寄附金が寄せられ被災地にボランティアが集まったように、最近では日本でも「寄附文化」が醸成されつつあるように感じられます。

日本ファンドレイジング協会の「寄付白書2015」によりますと、2009年の調査時には、5,455億円だった日本での個人寄附総額が、東日本大震災が発生した2011年には1兆182億円に倍増し(うち震災関係が5,000億円)、その翌年2012年には6,931億円となるなど、東日本大震災を機に寄附を積極的に行ったことが数字からもうかがえます。

また、2008年にスタートした「ふるさと納税」は、寄附をすればその土地の特産品などがもらえ、後に税が還付されます。「税金」として納めるはずだったお金を、特定の自治体を「寄附」という形で応援することができ、寄附金の使い道も指定できることで自分の満足度も高まるという仕組みになっています。自分の意志を形にできたりすることが、寄附をする動機として有効な例だといえます。

なかなか寄附という行動は普段実行に移せないものですが、寄附を行うきっかけや動機とそれを後押しする制度があれば日本人の意識も変わるのかもしれません。これまで以上に寄附をしやすい制度になることが期待されます。

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