Home / お金のコラム / 車の自動運転で起きた事故の責任は誰が取るのか

車の自動運転で起きた事故の責任は誰が取るのか

car
(写真=PIXTA)

人が飛び出してきたら自動で検知して回避する、ウィンカーを出すだけで安全を確認のうえ自動的に車線変更してくれる、さらには目的地を指定するだけで到着する……。これまで夢見ていたような自動運転が実現されつつあります。(※)

(※)国土交通省によれば、現在実用化されている自動運転機能は、運転者が責任を持って安全運転を行うことを前提とした「運転支援技術」であり、運転者に代わって車が責任を持って安全運転を行う自動運転ではありません。

では自動運転が実現された下で、万一事故が起きた場合、責任は誰が負うのでしょうか? たとえ自動運転であっても、やはり運転している人なのでしょうか? それとも自動運転の車を開発したメーカーが負うべきなのでしょうか?

今回は、自動運転車にまつわる事故の責任の所在や新しい自動運転に対処する保険についてお伝えします。

自動運転の定義

自動運転といっても、すべてが自動化された車がすぐに登場するわけでありません。現在、日本では高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)が「官民ITS・ロードマップ2016」の中で安全運転支援システム・自動走行システムの定義を以下のように定めています。

現在日本ではレベル2以上を「自動走行システム」と定義していますが、今後、欧米などで採用されているSAE(Society of Automotive Engineers、航空機、自動車、自動車等の関連技術の技術者や専門家が参加する団体で、標準規格の開発などを行っています)による自動運転レベルの定義を採用しようという動きがあるため、分類に変更があるかもしれません。

自動運転車が事故を起こしたら?

自動運転といえども、事故の発生率がゼロとはいえません。では、自動運転車で事故が起きたら、その責任は誰が負うのでしょうか? いまは政府や保険業界でさまざまな議論が繰り広げられている段階ですが、自動運転と損害賠償責任について、おおむね次のような考え方が示されています。

上述のレベル 1~3では、程度の差はありますが運転に人の手が介在するので、人為的ミスによる事故が起きる可能性があります。現行の制度では、運転者や車の所有者の責任を問われますから、自動運転といえども賠償の対象となります。レベル3では、走行モード中の場合はシステム責任となりますが、状況に応じて人間が運転することになるため、責任の所在が複雑になるでしょう。

レベル 4の自動化システムのエラーによる事故となれば、自動車メーカーに対する製造物責任も生じえます。このため現行のPL(製造物責任)法では、メーカーの過失責任が認められる可能性は十分にあります。

一方で、車の持ち主やドライバーの責任が問われるケースも考えられます。たとえばセンサー部に汚れが付いていたので正常に機能できなかったケースでは、持ち主の整備不良、つまりは管理責任が問われるかもしれません。

このようにさまざまな検討課題が浮上しているので、今後は自動運転システムのレベルごとに、責任の所在もドライバーやメーカーに対して細かく分類されることになることが予想されます。

自動走行車時代の保険はどうなる?

自動運転車が普及するにつれてさまざまな課題が浮上しているため、現行の道路交通法や自賠法、PL法改正の検討が進められようとしています。それにともない、自動車に関連する各種保険の内容も、今後ますます多様化・複雑化することも考えられます。

最近の動きでは、2016年11月に東京海上日動火災は各種自動走行システムが普及するなかで、自動車事故が起きた場合でも迅速に被害者救済を実現するため「被害者救済費用等保障特約」の開発を公表し、2017年4月1日から提供しています。対象は、レベル3までの自動運転で、レベル4の「完全自動運転」については未だ実用化されていないため現段階においては対象とはならないようです。また、損保ジャパン日本興亜も自動車保険の特約として自動運転車のシステム起因の事故で運転者に責任がないケースでも、補償を提供することを発表しました(2017年7月開始予定)。

今後自動運転車の購入を考えている方、自動運転車購入を機に自動車保険への新規加入や更新を考えている方は、自動運転に対する特約などを検討してみてはいかがでしょうか。

【おすすめ記事】
本格的なEV時代が到来する? 次世代自動車の開発競争が加速
人工知能の技術革新を後押しする半導体の性能向上
大阪府で「自転車保険」の義務化? その仕組みと注目されている理由
ペットのいる世帯は4世帯に1世帯の時代 「ペット保険」は必要?
話しにくいことだけど「生命保険」--お正月やお盆に実家で話しあってみませんか