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任天堂=トランプ?生粋の株屋しかわからない面白風習 ― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

こんにちは、兜町カタリスト・ストックVOICEキャスターの櫻井英明です。
40年近く株式市場の現場でその動きを眺めてきました。
そんな視点から株式市場で気がついたことや多少のウンチクをお伝えしていこうと考えています。よろしくお願いします。

「場」

チャートの世界で日足の陽線・陰線の基準は寄付き値。
これには議論の余地はないでしょう。
でも週足や月足、あるいは年足ではどうなのでしょう。
個別銘柄では寄付き値で異論はないのでしょうが、個別銘柄の集合体ともいえる指数となると人によって意見が異なります。
日足のように寄付き値が基準という声もあれば、いやいや「週初や大発会の終値」だという指摘もあります。
つまり、基準が始値か終値かは、見解がわかれます。
でも、始値というのがもともとの兜町の流儀とも聞きます。
その昔は「撃柝(ゲキタク)売買」と呼ばれる競争売買(セリ売買)もあったし、気配で寄らない銘柄もあったというのが理由といわれています。あるいは、当時、今のような寄り付きの日経平均株価は算出されず、9時15分頃になっていたからという説もあります。
今ではそれこそまたたく間に、日経平均株価やTOPIXはほぼリアルタイム(5秒間隔)に計算されるのが当たり前ですが。
でも、長い間、日経平均株価は9時15分、10時、11時の前引けと13時15分、14時、15時の大引けの6本値しか算出されていませんでした。その後1985年から1分間隔のリアルタイム算出となり、今は寄り付きの算出は9時05秒となっていて、当時と比べ約15分も短縮されたということです。

今は閑散としているアローズ(東証Arrows)。
昔は取引所の職員と売買注文の付け合わせ業務を行う才取会員、それに証券会社の社員、合わせて2,000人近くが一堂に会した騒然とした取引の「場」でした。今では、投資家に対してはリアルタイムの市場情報の提供を行う場や、イベント等を行うスペースとなっています。
「場」とは「取引所内の売買をする所。立会場のこと」。
「場が立つ」という使われ方もありました。
今でも「前場・ザラ場・後場」と「場」は残っています。
その「場」で行われていたのが「撃柝(ゲキタク)売買」。
「撃柝(ゲキタク)売買」とは、多数の売方と買方が特定ポスト(高台)の前に集まり、値段を競いながら売買を集団的に行い、売りと買いの全注文を単一の値段により成立させるものです。東京証券取引所が指定した特定銘柄の始値および終値の決定時、取引の始めと値段決定の合図として柝(たく)を入れる(拍子木に似た二枚のヒノキ製の板を打ちならす)ために使用した「撃柝」によることからです。

買いと売りが同株数でなければ成立しないのです。
合致すれば「デキ」で拍子木がカーン。
合致しなければ「出来申さず」カーン。
こんな光景は今では遠い昔のこと。
商いの対象は特定銘柄(後に指定銘柄)。
始値と終値の決定に用いていた値段決定方法です。
「複数の売り手と買い手とを相手に担当者が適当と思う値段を唱えて仮の商いを進める。
売買量が一致したときに拍子木を打って商いを成立させるもの」。
特定銘柄(後に指定銘柄)って何でしょうか。
「証券市場の市場動向についてすばやい反応を示し、市場性が高く、かつ業種を代表するような人気の高い銘柄を証券取引所が特に指定した株式」のことです。
1954年(昭和29年)、市場を活発化させることを目的にスタートしたのが特定銘柄です。
1978年(昭和53年)から1991年(平成3年)までは指定銘柄として存在していました。
どんな銘柄だったのかと振り返ってみると・・・。
特定銘柄は平和不動産、日本石油、小松製作所、松下電器産業、本田技研工業、三井物産、東京海上火災保険、日本郵船など。
その後の指定銘柄は平和不動産、東レ、旭化成工業、日本石油、住友電工、日本電気、松下電器産業、三菱重工業、トヨタ自動車、三井物産、東京海上火災保険、日本郵船など。
各業種の指標的存在という位置づけでした。
寄り付き平和不動産で、順次、撃柝(ゲキタク)売買が進行。
撃柝(ゲキタク)売買の最後は平和不動産で終了し大引けというのが兜町の約束だったなんて今では忘却の彼方で、東証Arrowsではグルグルと株価が回っているだけ。
でもそんな歴史を知っていると少しはウンチクを傾けることができるかもしれません。

「通称」

平和不動産の株は兜町では「ボロ」と呼ばれていました。取引所が平和不動産から借り(borrow)ていたので、建物自体が古かったなど理由は定かでありません。一説によれば・・・。
平和不動産は東証の大家さんであり相場の指標は材料株として大人気の株式でした。
そのために流通が激しく株券がボロボロになっていたから付けられた通称ともいわれています。
古くから上場している銘柄にはいろいろな通称があります。
アトランダムにあげてみると・・・。
任天堂=トランプ(花札)(ゲームの前は花札やトランプが主力製品だった)
日本製鋼所=アーム(アームストロング砲を作っていた)
日軽金=オカル(オカル寛平とゴロが合った)
兼松日産=マッチ(製品がマッチだった)
東洋鋼板=ブリキ(製品から)
極洋=クジラ(捕鯨会社として設立から)
ニチロ=シャケ(製品から)
日新製鋼=テッパン(亜鉛鉄板を作っていた)
住友鉱山=ベッシ(別子銅山から)
三井金=カミオカ(神岡鉱山から)
旭硝子=ガラス(ガラスの代表)
東京製網=ロープ(製品)
飛島建設=トンビ(ゴロ)
旭化成=ベンベル(ベンベルグという製品名)
NIPPO(日本鋪道)=アベック(大昔はアベックで舗道を歩いた)
三菱地所=丸ビル(本社所在地)
不二家=ペコちゃん(愛称)
ブリヂストン=ビーエス(BS)(愛称)
花王=セッケン(製品)
三菱電機=サンデン(社名の読み)
富士重工=スバル(製品)
日本通運=マルツウ(愛称)
東亞合成=アゴ(社名の読み)
日本化薬=カヤク(社名の読み)
武田薬=タケチョー(代々の社長の名前が長兵衛)
ニッパツ(日本発条)=バネ(製品)
常磐興産=ハワイ(ハワイアンセンターから)

その他に社名を短縮したベニ=丸紅とかチュウ=伊藤忠とか枚挙にいとまがありません。

「カツカレー?」

そもそも「生き馬の目を抜く」といわれた兜町。
時間が大切なことはいうまでもありません。
間違いなく素早く伝えるために短縮した言葉が多用されました。
電話は「もしもし」ではなく「もしも」。
「もしも」と話す人に遭遇したら古き良き時代の兜町の人かもしれません。
また、指示代名詞をこよなく愛するのも兜町の風習。
「アレはどうした?」。「あれはコッチです」。
これで会話が通じていたのですから不思議な場所ですね。

ウナギを好むのは「うなぎ上り」を連想するから。
「下がった日のお昼はカツカレー」というのがストックボイスの不思議な風習。
これらは、兜町をこよなく愛する人たちの特性かもしれません。

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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