「狐狸(こり)」
マーケットは「狐狸の同床異夢」。
時折そんな思考法に陥ることがあります。
市場参加者の欲望のベクトルは同一方向で「儲けたい」。
しかし、その思いと戦略・戦法などは多種多様です。
「買いたい強気」と「買いたい弱気」。
「売りたい強気」と「売りたい弱気」。
大きく分けるとこのマトリックスになるでしょう。
もっとも「買いたい強気」と「売りたい弱気」は当然の心理。
あたり前のことだからそう不自然ではありません。
むしろ「強気だから買いたい」、あるいは「弱気だから売りたい」ということが多いでしょう。
この心理はヒトの摂理。
しかし、ややこしいのは「売りたい強気」と「買いたい弱気」。
すでに保有している株を売りたい向きの強気の見方やコメントが登場することがあります。
あるいは、まだ保有していない株を安く買いたいから存在する弱気の見方やコメント。
これが散りばめられて集約されたのが「株価」です。
人それぞれ考え方や感じ方は百人百様で違うのでしょうが・・・。
もっとも、欲しいものがあると「安く買いたい」というのは古今東西不変の真理。
だから株は下げた後に上がりますし、上げた後に下がります。
子供でも理解できるこの簡単すぎる図式が、資本市場とか立派な名前をつけた場所になると見えなくなります。
横文字を使っても専門用語を使っても、機械プレイが増えても、所詮市場はヒトの心理の集合体。
簡単な図式にまとめることは格好悪い訳ではないのでしょうが、イージーな相場観測は幼稚と錯覚されてしまいます。
ものごとは単純明瞭にして簡素に考えた方が間違いは少ないもの。
それを敢えて難しく考えよう、格好良く論じようと誤解錯覚した人たちの解釈が多いからわからなくなります。
聞く方も聞く方で「それはわからない」と、恥ずかしくて言えないのでわからないままに解釈は進行。
結果的には、わかっていない者がわからない者に語ってそれでわかった気になるという笑えない話。
わからない説は自分が悪いのではなく、わかるように説明できない方が悪いのは当たり前。
このわからないだらけが市場をますます暗くして壁を高くしているような気がします。
「売る人が多いから安い。買う人が多いから高い」。
この原理原則を放れてアレコレ論じる空虚さはそろそろ理解されてもいいでしょう。
「安く買いたい人は株価が下がって欲しい」。
「高く売りたい人は株価が上がって欲しい」。
つまり、売り方にとって株価上昇が歓迎で、買い方にとっては株価下落が歓迎。
この大きな流れでのパラドックスが現実なのに、逆の解釈をすると予想は真逆になってしまいます。
「バフェット指標」
バフェット指標というのがあります。
「その国の名目GDPと上場株式の時価総額の総和を比べるもの」です。
日本のバフェット指数は、1989年のバブルの頃は140%を超えていました。
リーマンショック前の2006年から2007年にかけては100%超。
2015年のチャイナショック前も100%を超えていました。
今年の2月も東証1部の時価総額は700兆円を超え、バフェット指標は100%超。
ココが一部の警戒感と、上昇への疑念の背景だったことは記憶に新しいところです。
直近の2018年1~3月の名目GDPは547.9兆円。
東証1部の時価総額は682兆5198億円。
バフェット指標は124.57%。
2017年10~12月の名目GDPは550兆円。
1月末の東証1部時価総額は690.68兆円。
バフェット指標は120%を超えていました。
ココを超えてバブルの頃の140%まで行ければ、767兆円まで行けると計算上は可能です。
ちなみに767兆円になった時の日経平均株価は25,770円の想定。
150%ならば27,610円となります。
ココを限界と見るか、限界の先に期待するかは自由。
ちなみにGDPが600兆円になれば、バフェット指標の150%は時価総額900兆円。
日経平均株価は計算上は37,665円。
アベノミクスの「未来戦略」が本当に見えてくれば、日経平均株価はバブル最高値(終値ベース38,915円)に計算上接近することになります。
計算だけは自由です。
そういえば・・・。
日経平均株価は2万円台を固めつつあります。
次のターゲットとして、
1982年11月から1987年11月まで続いた中曽根内閣時の株価が取り沙汰され始めたのです。
中曽根内閣は7,898円からスタートし、2万2795円まで上昇。
「安倍内閣はこの2万2,795円を超えたいのではないか。そういう見方が台頭しています」と言ったのは2015年5月26日。
1年半後の2017年10月にこの目標は達成。
バブル崩壊後の半値戻しも示現しました。
累積売買代金などよりもよほど役に立つかも知れません。
ちなみに安倍内閣スタートの兆しだった2012年11月。
日経平均株価は8,900円レベルでした。
櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長
日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。
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