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歴史・・・・。― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「プロジェクトX」

ある投資家さんの言葉にすごく共感しました。
「お医者さんが、患者の顔を見ないでパソコンばかり見ているといいます。
市場関係者もそうでらっしゃる方が多いのでしょうか。
高学歴ゆえに理屈・データ重視なのですかね。
理屈・データもいいのですが、いうまでもなく現実が最も重要ですよね」。
「多くの銘柄がプロジェクトX。企業も投資家もプロジェクトX」。
最近そう感じることが多くなりました。
無から有を生むという点で一緒。
つまり、「市場価値の創造」こそ、市場の醍醐味であるということ。
そこに機関投資家も個人投資家もありません。
皆一緒に「プロジェクトX」を歩んでいるのです。

ある地方のセミナーで遭遇した90歳の投資家さんの矍鑠(かくしゃく)とした言。
「相場は上がることもあれば下がることもある。損もしたし儲けもした。
1億円以上儲けたこともある。しかも人の言うことを聞いて儲かったためしはない」。
けっこうシニカルでした。
でも、結局最後には「60年以上株をやってきた。でも株はやめられない」。
「最初に買ったのは船株。儲からなかった。だから必死に勉強した。
若いころに勉強したことは忘れないね」。
歴史の年輪に裏付けされた結構重い言葉。
株は売ったり買ったりの世界。
その売ったり買ったりを休むことなく継続されてきたことがすごい。
個人的には大学卒業後に株の世界に入って30余年。
60年の歴史の域にはまだまだ到達できません。
というか、奥はかなり深いものです。
おそらくこの投資家さんが常に追い求めてきたのは、もちろん利益。
でもそれだけではなく、相場のドラマチックな驚きだったのではないでしょうか。
目を見張るような動き。
ハッとするような展開。
実人生では経験できないような意外感こそ株式投資のだいご味。
明日が今日の延長線上にはない世界と求めて投資マネーはさまよっていると思います。
それにしても・・・。
この投資家に見せていただいたのは、セピア色の方眼紙と昭和30年代始めの薄い会社四季報。
まさに歴史でした。

「追いかけて、見つけて」

人類のDNAは均衡というテーマを持っているような気がします。
どこかが凹めばどこかが凸になる構図。
戦後のベビーブームなんていうのはその一例なのかも知れません。
そう考えれば市場がゼロサムという構図もスッキリ理解できるでしょう。
それも永遠のゼロサムなのです。
リーマンショックだってNYダウの結局過去最高値への一里塚でした。
2012年の日経平均株価8,000円台だってバブル崩壊後の半値戻しへの序章でした。
言い換えれば人類社会に無限はないということになります。
市場も有限社会。
無限というのは錯覚。
市場には無限も無常もありません。
これは結構大切なことでしょう。
「願はくは花の下にて春死なん その如月の望月の頃」は西行法師。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」は鴨長明。
「永遠なるもの」はゲーテのファウストでさえ見つけられませんでした。
「上がれば下がるし、下がれば上がる」。
そんな単純さでは満足できないのもまた市場なのでしょう。
「上がった銘柄を追いかけたがるのが市場関係者。
上がっていない銘柄を見つけたがるのが個人投資家さん」。
これは意外と正しいような気がします。

「ゴルフの全米オープンで見えたこと」

今の相場というのは、米国ニューヨーク州のシネコックヒルズGCでのゴルフ全米オープンみたいなもの。
世界のプロがしのぎを削っても通算アンダーパーになりません。
日々でみれば7アンダーで回れるプロもいます。
しかし、容易にトリプルボギーも出ます。
最終日の10オーバーが複数。
プロがパーを取れない荒涼とした市場で戦っていました。
フィル・ミケルソンは、ボギーパットが下り傾斜で止まらず途中で打ち返して2打罰。
前代未聞のプレイまで飛び出しました。
米国ゴルフ協会はコース設定のミスまで認める始末。
グリーンが硬かろうと、風が強かろうと、自然と戦うのがゴルフだと思いますが、彼らの発想はどうも違うようです。
市場が荒れている時に「市場設定が悪かった」なんて甘えた言葉は絶対に聞かれません。
金融危機だろうと財政危機だろうと、あるいは通貨危機だろうと自然災害だろうと市場は開きます。
そしてあるがままで参加者はプレイします。
市場というのはそういうもの。
ゴルフだって一緒でしょう。
そこでマネーを稼ぐプロが市場に文句を言ってはいけない筈。
市場外では「ここは注意。ここはチャンス」という解説が聞かれます。
しかし、実際に戦ったプレイヤーの言葉以上の重みは感じられません。
これはゴルフも市場も一緒でしょう。 

 

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長

日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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