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お金のキャンパス 東大卒アイドル桜雪と学ぶ! 投資レッスン 第3回

東京大学出身でありながら、地下アイドルグループ「仮面女子」のメンバーとして活躍する桜雪さん。常に新たな学びを求め続ける彼女の最近の関心ごとは“経済”と“投資”なのだとか。
生活と密接に関係しているはずなのに、いざ学ぼうとするとハードルが高い印象のある「お金」について、桜雪さんと一緒に学んでいきます。

【プロフィール】
桜 雪(さくら・ゆき)
1992年、三重県生まれ。東京大学文学部(心理学専修)卒業。アイドルユニット「仮面女子」のメンバー。著書に「地下アイドルが1年で東大生になれた! 合格する技術」。
仮面女子オフィシャルサイト:http://www.alice-project.biz/kamenjoshi/jp

講師はこの人!
みずほ証券 投資情報部 副部長
チーフFXストラテジスト 鈴木健吾(すずき・けんご)

為替の基本は需要と供給のバランス

 

 

 


前回は「株式投資」についてお話ししました。今回は「為替」についてお聞きしたいと思います。「円高」や「円安」は、なんとなくはわかるけど、ちゃんとは理解できていない。私を含めて、そのような方が多いように感じます。


たしかに「為替」はとっつきにくい印象があると思います。まずは、為替が何なのかを説明しましょう。私たちがよく耳にする為替は、「外国為替取引」を指しています。「外国為替取引」とは、外国の通貨と日本の通貨、または異なる2国間の通貨を交換すること。旅行はもちろん、商品の輸入や輸出、企業の海外進出、海外の金融商品や不動産への投資など、国際的な取引をする際に通貨の交換が必要となります。
通貨を交換するときに重要になってくるのが、交換比率を示す「為替レート」です。為替取引の市場は世界中で開かれているため、為替レートは24時間市場で常に変動しています。ニュースなどで「1ドル=○○円」と報道されているのを見たことはないでしょうか?

 

 

 


よく見ます! 為替レートはどのようにして決まるのでしょうか?


為替取引における通貨の価格は、株式などと同じようにその通貨を欲しい人(買いたい人)が多ければ上がりますし、逆に手放したい人(売りたい人)が多ければ下がります。世界中の個人や企業がそれぞれの目的で通貨を交換していくなかで、需要と供給が均衡する価格が為替レートとして使用されるのです。
さらに、各国の金融政策や経済・政治情勢、投資家の動向などの影響により、為替レートは変動します。

 

円高と円安、どう違う?

 

 

 


「円高」と「円安」の違いについて教えてください。


ニュースや新聞などで見る「円高」と「円安」は、一般的に日本の円とアメリカのドル(以下、米ドル)の動きを示しています。
「円高」とは文字通り、円が高くなること。つまり、円の価値が上がるということです。円の価値が上がれば、同じ1万円でもそれまでより多くの外貨と換金できます。円が高くなると相対的にドルが安くなるので、「円高ドル安」とセットで表現されることも。反対に、円の価値が下がると「円安ドル高」になります。

では、問題です。「1ドル=100円」を基準に考えたとき、「1ドル=80円」は「円高ドル安」でしょうか? それとも「円安ドル高」でしょうか?

答えは「円高ドル安」です。「1ドル=80円」ということは、80円で1ドルが手に入るということ。「1ドル=100円」のときと比較すると、1ドルの価格が20円安くなります。基準時よりもドルの価値が低く、円の価値が高い。つまり「円高ドル安」になるのです。

 

 

 


ドルの価値をベースに考えるとわかりやすいですね!日本にとって、円の価値が高い「円高」の方がいいのでしょうか?


一概にそうとはいえません。たしかに円高のときは、円の価値が高くなることで外貨を割安に購入できます。海外旅行をする場合は、円安のときよりも得なのは間違いありません。
ところが、企業にとっては円安の方がよい場合があります。例えば、仮面女子がアメリカでライブを開催したとしましょう。公演のチケット2,000枚を50ドルで販売すると、売上は10万ドルになります。「1ドル=100円」のとき、チケット1枚あたりの価格は5,000円、売上は1,000万円です。しかし、「1ドル=80円」になってしまうと、1枚あたりの価格が4,000円になり、売上に換算すると800万円となり、200万円も減ってしまいます。

反対に、「1ドル=120円」のときにライブをすれば、チケットの価格は6,000円に。つまり、売上が1,200万円となり、200万円増えるのです。

 

 

 


アメリカのファンは同じ50ドルを払ってくれているのに、日本円に換算するとこんなに変わるんだ!


このように海外でビジネスする場合は、円安の方が有利に働くことが多いです。日本には自動車メーカーを筆頭に、商品を輸出して海外で販売する企業が多いため、円安の方が日本経済に与えるメリットが大きいといわれています。

まずは世界の経済情勢に関心を持つこと

 

 

 


実際に為替取引をしたり、外国通貨で金融商品を買ったりする際に、気をつけた方がよい点を教えてください。


米ドルや豪ドル、ユーロなどで運用される外貨建て金融商品は、その通貨発行国のカントリーリスクや為替の変動リスクがあります。カントリーリスクというのは、国の政治・経済・社会情勢が変化するリスクのことです。その結果、商品の価格が大きく変動する可能性があります。そして、カントリーリスクにともない為替が円安や円高に変動するリスクがあります。そのため、為替取引をする場合は、投資をする国の情勢や通貨についてきちんと調べてからにしましょう。

 

 

 


私のような投資初心者が為替や経済について学ぶためには、何に着目すればよいのでしょうか?


まずは、日本や世界の経済情勢に関心を持つことが大切です。ニュースなどで「昨日は大幅な円高となった」との報道があれば、なぜ円高になったのか、自分で要因を考えてみるといいでしょう。

ある程度、経済の知識が備われば、法則のようなものがみえてくるはずです。例えば、世界経済が良好になると、投資家は金利の低い日本円を売って、金利の高い海外資産を購入する傾向があります。そのため、円安になりやすい。

逆に、世界的な景気不安や政治情勢の混乱などがあると、リスクが高い海外資産を売って、比較的安全な資産とされる日本円が買われやすくなります。すると、今度は円高の要因に。株価や為替レートが大きく動くときは、必ず何かしらの理由があります。パズルを解くように、経済の仕組みを分析してみてはいかがでしょうか。

ファンの疑問を解決!

世界規模で共通の通貨にするべき?

 

 

 


ここからはみなさまの質問に答えていただきます!世界経済全体の調子が悪いとき、日本円が買われやすいと聞きますが、なぜでしょうか。


金融市場では、政治的なリスクや紛争、テロのようなカントリーリスクの懸念が強まるとリスク回避の動きが高まり株価が下落します。そして、債券市場は債券価格が上昇し、金利が下がる傾向があります。また、為替市場では、安全通貨といわれる日本円やスイスフラン、米ドル、ユーロなどが買われる一方で、新興国通貨の下落につながることがあります。

そのため、世界のどこかで大きな問題が起きると、所有する資産が大きく値下がりする前にリスク回避のため金融商品を売却する傾向があります。また、それらを売却した資金で買われやすいのが日本円などの安全通貨になります。

それから、日本円が安全通貨といわれている理由は、ほかの国と比較して国の信用力が高いとみられているから。日本はGDP(国内総生産)が世界3位 の経済大国であり、日本政府や企業、個人が保有する対外純資産(海外に保有する資産から負債を引いたもの)も世界最大です。そのため、対外資産よりも対外負債が多いほかの国と比べて、日本が破たんするリスクは低いとみなされているのです。
必ずしも本当に安全というものではありませんが、相対的にみて安全通貨だと考えられていることを覚えておいても損はないでしょう。

 

 

 


ほかの国よりもカントリーリスクが低いと考えられているんですね!では、次の質問です! 将来的にはユーロのように世界規模で共有の通貨が望ましいのでしょうか。それとも各国が通貨を持っている方が望ましいのでしょうか?


どちらがよいかは一概にはいえません。それぞれにメリットとデメリットがあります。
まず、通貨を共通化するメリットとして、企業が外国と取引をする際に為替変動のリスクを考えなくてよくなることや、換金による手間を省けることなどがあげられます。これにより、貿易取引の活発化はもちろん、ヒトやモノが世界中を自由に移動するなんてことが期待できるでしょう。

一方デメリットとして、景気が悪くなったときに経済政策によって立て直しを図るのが難しくなります。通貨と同じように、金融政策なども各国共通に行う必要がありますから、一部の国に対してのみ、景気の刺激策をとるような政策はできません。すべての国共通の政策となり、景気の悪い国に政策の基準を合わせると、景気の良い国はますます景気が良くなるということになります。

 

 

 


そっか! 共通の通貨を発行するのって、良いことばかりじゃないんだ!


その通りです。また、自由にヒト・モノ・カネが移動できるようになると、人口が多い国や税率が低い国など、特定の国にお金や資源が集中し、格差が広がる可能性があります。

 

 

 


メリットもあるけど、デメリットも多いんですね。
今回もありがとうございました! 次回はいままでにファンのみなさまからいただいた質問で、聞きそびれたものについて伺います!

みずほ証券 投資情報部 副部長
チーフFXストラテジスト
鈴木健吾(すずき・けんご)
【保有資格】
日本証券アナリスト協会 検定会員(CMA)
日本テクニカルアナリスト協会 認定テクニカルアナリスト(CMTA)
公認金融監査人(CFSA)
ファイナンシャルプランナー(AFP)
経営学修士
【略歴】
証券会社や銀行で外貨の資金繰りや送受金、デリバティブの組成や管理などさまざまな為替関連業務に従事。特に為替ディーラーとして10年近い経験を持つ。2012年より現職。
【メディア出演(TV&新聞)】
東京MXテレビ(地デジ092ch)「ストックボイス」(隔週火曜日)、日経CNBC(スカパー251ch)「前場NOW」(隔週木曜日)、TV東京(地デジ7ch)「モーニングビジネスサテライト」、BS-JAPAN「モーニングプラス」、CS-TBS「ニュースバード」などへの出演のほか、各種新聞やロイター、ブルームバーグ、クイックなどへのコメント多数。

 

【桜雪さんと一緒に投資を学ぼう!】
東大卒アイドル桜 雪と学ぶ! 投資レッスン 第1回
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