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元気なうちに片付けたい! 生前整理は親子の共同作業 (前編)

(iStock by Getty Images)

モノがあふれている実家のことが気になってはいませんか? 親が元気なうちに片付けを始めれば、後の苦労も大幅に減少できます。そのためには、親の“頭が柔らかい”うちに、親子でコミュニケーションを図りながら、一緒に片付けを進めることが大切。実家にものが増える理由を解き明かしながら、親も納得する生前整理の秘訣を紹介していきます。

なぜ親の家は片付かないの?!

実家に帰省するたびにモノが増えている。30年以上も前の着ない服や贈答品などが押入れに眠っている。さらには、以前の子ども部屋が不用品の物置状態になっている等々。こんな兆しがあったら、実家の片付けに取りかかるタイミングです。その機会を逃すと、次第に整理されない不用なモノが床や廊下にまで放置されるようになり、親がそれにつまずいて転倒したり、骨折する大事故にもつながりかねません。では、なぜ年を重ねるにつれ、親の家は片付かなくなるのでしょうか。そこには3つの大きな理由があるといわれています。

その第1は親の心理面の変化です。子どもが独立してしまい、家を訪れる人もいない寂しさを紛らわすために、知らずにモノに執着し、家がモノであふれてしまうのです。また、親世代は、戦後復興期の貧しい時代を体験している人も多く、豊かな時代になっても「もったいない精神」を抱き続けるため、モノが増えても捨てられないというケースも目立ちます。

第2の理由は、親の体力面の問題です。加齢により体力が衰えてくると、戸棚の上に手を伸ばしたり、しゃがんだりすることがつらくなり、片付けが苦痛になってしまいます。さらに認知機能が衰えてくると、トイレットペーパーなど同じ日用品を繰り返し購入したり、要介護状態になると、自分の手の届く範囲内で生活しようとするため周辺にモノが置かれたままになってしまいます。

こうした状態をさらに悪化させてしまうのが第3の理由。親子間のコミュニケーション不足による子どもの不用意な発言です。たまにしか実家に顔を出さない子どもが、「早く片付けろよ」「捨てろ」と強い言い回しで切り出すと、親は反発し意固地になって片付けに拒否反応を示してしまいます。そして、自分の子どもにも理解されない寂しさから、さらにモノに固執する「片付かない悪循環」に陥ってしまうのです。

図 親の家が片付かない悪循環

早めの生前整理で親も子も楽になる

「親とは離れて暮らしているのだから自分には関係ない」と片付かない実家を放っておくと、子世帯にも思わぬ被害が及ぶことも。

郊外の戸建住宅に一人暮らしの母親がいるAさんの場合がその典型です。母親は一人の寂しさからかモノが捨てられなくなり、やがて家のなかをゴミ屋敷状態にしてしまいました。実家の台所にあった大量の食品や何本もの瓶に入った果実酒などが腐って、大量の虫が発生。隣の家にも虫が移動してしまい子どもであるAさんに苦情が回ってきました。

父親が庭木いじりを趣味とするBさんのケースでは、実家の玄関前に置かれた数十もの植木鉢が、台風の強風で倒れて道路を塞いでしまい、ご近所から警察へ連絡される騒ぎに。結局、高齢の父親に代わって周囲に謝りに回ったのは子であるBさんでした。

また、親の家で家族だけでは片付けられないほどモノが増えため、生前整理の専門業者に片付けを依頼したものの、その費用負担を巡って兄弟間トラブルに発展した事例もあります。

こんなトラブルに巻き込まれたくないなら、早いうちから片付けの意識を親子で持つようにすべきでしょう。実家の生前整理で苦労する理由の一つに親の高齢化があります。70代、80代になると気力、体力ともに知らないうちに衰え、頭も固くなってきます。そうなる前に、親が50代、60代で判断力、体力ともに高いうちに親子で作業を進めておけば、後々とても楽になります。また、新しい服を買ったら古い服を1着処分するというような、モノを増やさないための習慣付けも頭が柔らかいうちなら身に付きやすいものなのです。

後編では、実家の片付け(生前整理)を実践する際、親の協力が得られやすく、効率的に片付けも進む具体的な手法を紹介していきます。

日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
礒部道生

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

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