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第4回 30代、40代の悩みを解決 住まいと教育にいくらかかるの?

【第4回】
住居費と教育費は人生のなかでも大きなお金がかかる費目です。第3回では、住まいに関して30代、40代の方が多く悩まれる、「持ち家or賃貸」をはじめ住居に関するさまざまな注意点について考察しました。第4回では引き続き、マイホーム資金計画や家計運営アドバイスに定評のあるファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんに、子どもの教育費についてお聞きします。

高校卒業までの教育費は月々の収入で賄う

30代、40代はこれから子どもを持つか、子どもがいてもまだ小さいお宅が多いでしょう。保育園または幼稚園入園から大学を卒業するまでにいくら教育費がかかり、いくら準備すればいいのか気になるところだと思います。

教育費についてはよく「子ども1人につきオール公立なら1000万円、オール私立なら2000万円」などといわれます。「総額を出すとそうなりますが、一度に準備しなければならない金額ではないのでひるまないように」とファイナンシャルプランナーの深田晶恵さん。「高校卒業までの費用は月々の収入で賄い、まとまったお金のかかる大学や専門学校などの費用は、子どもが小さいうちから積み立てで用意するというのが基本となります」。

つまり、高校を卒業する18歳までは、その時にかかる教育費を「払いながら」、並行して将来の大学等への進学に向けて「貯めていく」ことになります。「『払う金額 + 貯める金額』が家計から教育費として負担するお金になるわけです」。

大学資金用の積み立ては毎月いくら?

まず、払う金額はいくらぐらいになるのでしょうか。「図表1は学校などの種類別に、現状の教育費の平均的な金額を示したものです。それぞれ年額を月額換算した金額もあげました。実際には毎月同じ金額がかかるわけではないでしょうが、教育費の負担感がイメージしやすいと思います」。

では、貯める金額はいくらにすればいいのでしょう。「将来の大学進学用の貯蓄には、子どもが生まれたらすぐに取り組んでください。目安として、子どもが生まれてから保育園または幼稚園に通っている間は月1万円ずつ、小学校時代は一般的にあまりお金はかからないので月2万円ずつ、中学校と高校時代は塾や部活などのお金がかかるので再び月1万円に戻して積み立てをします」。

すると大学入学までに288万円貯まります。「大学などへの進学資金は最低限300万円は作りましょう。積み立てに祖父母や親戚からのお年玉や入学のお祝い金なども足せば300万円以上になるでしょう」。

図表1 教育費として払う金額と貯める金額は?

家計に余裕があれば児童手当も積み立てに

家計に余裕があるなら、子どもが中学を卒業するまで受け取れる児童手当も積み立てに加えましょう。「これにより、先程の300万円の貯蓄に200万円前後(所得制限に該当する家庭は90万円前後、いずれも第1子か第2子の場合)上乗せできます。ただし、制度の内容や手当の額は将来見直される可能性があることも頭に置いておいてください」。

図表2 児童手当の支給額

支給対象年齢等 支給月額(注)
0歳~3歳未満 1万5000円
3歳〜小学校修了前

1万円(第1子、第2子)

1万5000円(第3子以降)

中学生 1万円
所得制限世帯  全期間5000円(当分の間の特例給付)

(注)実際には2月、6月、10月に4ヵ月分まとめて振り込まれる

「教育資金は確実に用意したいので、元本保証のある預金商品で。銀行の自動積立定期預金などがいいでしょう」。以前は学資保険が教育資金作りの定番でしたが、ゼロ金利政策のため運用難となり売り止めになっているところがほとんどです。

なお、この積み立ては教育資金専用なので、住宅資金や老後資金など他の資金については、別途積み立てをする必要があります。

「中学から私立へ進学」は慎重に

話を「払う金額 + 貯める金額」に戻しましょう。図表1から、公立小学校の費用は年間約32万円、月額換算すると2万7000円になります。これが小学校時代の「払う金額」です。一方、小学校時代の「貯める金額」は月2万円。したがって家計から教育費として負担する金額は、月2万7000円 + 月2万円の貯蓄 = 4万7000円となります。「これは1人分なので、小学生が2人いれば9万4000円となります」。比較的お金がかからないとされる小学生時代でもこの負担です。

都市部では中学から私立に進学させたいと希望する傾向が高まっています。文部科学省の「学校基本調査」(2017年度)によると、私立中学への進学率は全国で7.2%ですが、東京都では24.4%と4人に1人ぐらいの高い割合を占めています。

仮に私立中学・高校に進学するとどうなるのでしょう。「中学時代は『払う金額』が月11万1000円で『貯める金額』が月1万円なので、合計12万1000円となります。高校時代は8万7000円 + 1万円で9万7000円。子供1人につき、毎月10万円前後の教育費負担が生じます」。かなり重いことが実感できるのではないでしょうか。

「また、私立中学に進学させるには、小学校4年生から塾に通う必要があり、6年生までの3年間に目安として300万円かかります。中学・高校では『払う金額』だけで毎年100万円以上かかるので、家計にとっては小学校4年生から大学に進学させるような負担になります」。しかもこれは1人分の金額。「上の子が私立に進学したら下の子も続くものです。費用は倍に膨らみ、子どものために毎年200万円以上の金額が出ていく計算になります」。実際に私立への進学を考えるなら、希望する学校ではどのぐらい費用がかかるか調べて、家計が耐えられるかどうか慎重に検討する必要があります。

積み立てを継続し、家計のサイズにあった進学コースの選択を

大学に進学したら、それまでに貯めてきた教育資金を取り崩しながら大学の費用を賄います。不足分は、教育資金以外の貯蓄を活用したり、大学進学後も教育資金用の積み立てを続けるなどしてカバーしましょう。「コツコツと積み立てを継続し、家計のサイズにあった進学コースを選択すれば、何とか乗り越えられるはずです」。

一方、大学進学の前に家計が耐えられないような進学コースを選んだり、積み立てを怠ったりしていると、いざ子どもが大学に進学したときに、資金ショートするリスクが大きくなります。「そうなると教育ローンや奨学金で賄うことになりかねません。実際、日本学生支援機構の奨学金の利用者は、2014年度には大学生の4.2人に1人だったのが、2016年度に大学生の2.6人に1人に増えています」。

教育ローンは親の借金、奨学金のうち貸与型は子どもの借金です。「教育ローンは親の老後資金作りの妨げになりますし、貸与型の奨学金が多額になると、返済が子どものライフプランの妨げになりかねません」。

最低限、親にしてもらったことを子どもにしたいはNG

「親に私立中学・高校に通わせてもらった人は、親からしてもらったことを子どもにもしてあげたいと考えがちですが、今の経済環境は親が教育費を出してくれた時代とは異なります」。税金や社会保険料の負担増により手取り収入が減り、超低金利により預金の利息はほとんど増えません。昔のように教育費を「子どものためだから」と聖域扱いするのが難しく、常に他の費用とのバランスを考えながら家計運営をする必要がある時代なのです。

「ですから繰り返しになりますが、コツコツ積み立てを継続しながら、家計のサイズにあった進学コースを選ぶことが非常に重要なポイントになります。将来、子どもが大学進学を考えるときには、費用のことも含めて親子でよく話し合うことをお勧めします」。

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日経BPコンサルティング 金融コンテンツLab. 
ライター 萬 真知子

日経BPコンサルティング「金融コンテンツLab.」(https://consult.nikkeibp.co.jp/financial-contents-lab/)は、難しくなりがちなお金の話題を、わかりやすいコンテンツに仕上げることをテーマとして取材・情報発信にあたっている制作研究機関。月刊誌『日経マネー』編集部の在籍経験の長いベテランスタッフが中心となり、マネー系コンテンツを提供している。

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