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「準天頂衛星システム」の今後の本格化運用で注目される企業は?

Space
(写真=PIXTA)

今となってはあたり前のようになったカーナビやマップアプリなどの位置情報サービス。

GPS(全地球測位システム)の利用によって、見知らぬ土地でも自分の現在地が分かって目的地にたどり着くことが簡単にできるようになり、とても便利な世の中になりました。

最近でいうと「ポケモンGO」が話題になりましたが、これもGPSを利用したサービスです。他にも天気予報や地殻変動の観測などあらゆる場面でGPSは利用され、私たちの生活に欠かせないものになっています。しかしながら現在運用されているGPSには、数10メートルほどの誤差が発生することもあり、位置情報を利用したより高度なサービスを生み出すうえで課題となっています。

安定した高精度測位が可能になる「準天頂衛星システム」とは?

現在利用されているGPSは米国の衛星測位システムで、地球全体に衛星が配置されていますが、地球の裏側で視野に入らない衛星があり、どの地点でもおおむね6機程度しか見ることができません。衛星測位を行うには4機以上の衛星で可能ですが、安定した高精度測位のためには8機以上の衛星が見えることが望ましいといわれています。

そこで現在のGPSを補完するものとして注目されているのが、日本の「準天頂衛星システム」です。

GPS衛星を補完する準天頂衛星
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準天頂衛星システムとは、「準天頂軌道」という日本のほぼ天頂(真上)を通る軌道をもつ人工衛星を複数組み合わせた衛星測位システムのことです。日本版GPSとも呼ばれ、「みちびき」という愛称が付けられています。

準天頂システムの軌道
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この準天頂衛星システムは2010年に初号機、2016~2017年度には追加3機が打ち上げられ、2018年度から4機体制で運用される予定で、このうち3機からの電波が日本で常に受信できるようになります。準天頂衛星はGPS衛星と同じ測位信号を配信するため、GPS8機以上から受信しているのと同じ状態となり、安定した高精度測位が可能となるのです。

また、上図のように準天頂衛星システムは日本と経度近いアジア、オセアニア地域でも利用できることから、それら地域の国々に利用拡大を進めていくことも目指されています。

国の「宇宙基本計画」では、2023年度をめどに準天頂衛星をさらに3機追加して7機体制を目指すことが盛り込まれています。これは都市部や山間部においてはビルや樹木等で電波が遮られ、準天頂衛星4機体制でもなお測位が安定しないことが考えられるためです。

誤差数センチになるとどんなサービスができる?

衛星測位システムは、子どもや高齢者の位置情報サービス、ロボットの制御、荷物の位置情報管理、天気予報、津波の監視等、利用範囲が広がっており、それにともない精度や信頼性の向上が求められるようになっています。準天頂衛星システムは、1メートル程度、さらにはセンチメートル級への測位精度向上が目指されていますが、位置がより細かく把握できるようになることで、従来にない位置情報を生かしたサービスが可能になるとの期待も高まっています。

準天頂衛星システムの利用により見込まれる新たなサービス3

実際、準天頂衛星システムを使ったさまざまな実証実験もすでに行われています。例えば、自律走行型のロボットトラクターを用いた「無人農作業」の実験等です。ドローンによる荷物の無人配送実験等も計画されています。そうなると、将来的に人間が行っていた仕事をロボットが担うことも多くなってきて、人間側の仕事がどんどん変わっていくかもしれませんね。

関連銘柄に注目

準天頂衛星システムの関連銘柄では、準天頂衛星システム事業への参画企業、受信機メーカー、地図・測量を手掛ける企業のほか、同衛星を活用して新たなサービスの創出を目指す企業等が挙げられます。今後の投資テーマとして注目される可能性があるので、個別銘柄を探してみるのもよいかもしれませんね。

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