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「爆買い」下火でも成長余地は未知数 高度化する中国自動車マーケットの今後は?

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(写真=PIXTA)

今、世界一自動車が売れている「中国」。

その自動車(新車)販売台数は2006年に日本を抜き、2009年にアメリカを抜いて世界一になりました。それから現在にいたるまで右肩上がりに販売台数が伸び続けています。

中国・米国・日本の自動車販売台数の推移
(年次:1999~2015)
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自動車市場が成熟し、販売台数が下降もしくは横ばい状態にある人口約1億2,000万人の日本や、約3億2,000万人のアメリカに対し、約13億7,000万人と文字通りケタ違いの人口を誇る中国にはまだまだ大きな潜在マーケットがあると言えそうです。

自動車販売好調の背景に「経済成長」と「道路インフラの整備」

中国の自動車販売台数が伸びてきた背景には中国が世界貿易機構(WTO)に加盟した2001年以降、経済成長により可処分所得が増えたこと(日本での「爆買いブーム」が記憶に新しいですね)、道路インフラが整備されたことなどがあります。

また、名目GDPが3,000ドルを超えると、自動車普及が拡大するとされていますが、中国では2008年にこの水準を超え、順調に需要が拡大していました。

しかしながら近年、消費者のニーズが多様化し「車を作れば売れる」という時代は終わりを告げ、より消費者の嗜好に合った高機能のものが求められるようになってきたため、メーカーはその対応に迫られています。

「1人っ子政策」の廃止で人気を伸ばしているのはSUV車。

とくに中国で今人気を集めているのはSUV(スポーツ用多目的車)で、2016年に「1人っ子政策」が廃止されたことを受け、「多数でも乗れる」という理由から、今後はさらに需要が高まりセダンに匹敵するマーケット規模に成長することが見込まれます。


中国の乗用車販売台数推移(車種別)
(年次:2005~2015)
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大気汚染問題の解決のため、電気自動車に需要

灰色にかすんで先が見通せない中国の都市部の映像をテレビなどで目にした人も多いかもしれませんが、中国ではこの大気汚染が深刻な問題となっています。

大気汚染は決して自動車だけが原因ではありませんが、中国政府はこの大気汚染問題の解決策の一環として電気自動車(EV=電気のみで走行)やプラグイン・ハイブリッド車(PHV=電気とガソリンで走行)の普及を進めようとしています。政府は2020年までにこれらの累計販売台数目標を500万台とし、購入に際しての補助金も出しています。さらに、大都市では専用ナンバープレートを優先交付したり、税金・諸費用の減免をしたりと、政府主導で普及に注力していることがうかがえます。

中国の新エネルギー車販売台数推移
(年次:2012~2016)
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その結果、電気自動車、プラグイン・ハイブリッド車の販売台数は2015年から爆発的に増加し、関連企業の成長も期待されています。

今後はITをはじめとした異業種による参入による市場の変化も

人工知能による自動運転など、米IT企業による自動車産業参入が始まっていますが、中国でも同様にIT大手による自動車産業への参入が盛んになっています。

車に最低限必要な機能があればよかった時代から、機能的でデザインが優れた車、エコな車、そしてIT技術を駆使した自動運転車へとめまぐるしく市場の主役が変わっていくなか、中国という巨大マーケットで日本の自動車メーカーは存在感を示し続けることができるのでしょうか。今後の発展に注目したいところです。

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