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為替-オセアニア 豪ドル、NZドルともに追加利下げ観測が重しに

AUD
(写真=PIXTA)

・ 豪州準備銀行(RBA)は低インフレ継続を警戒して1年ぶりの利下げを実施
・ 市場がインフレに注目する中、豪ドルは下値を探る展開に
・ NZドルは金利先安観測から上値の重い推移が継続

豪ドル相場はインフレ指標の悪化とRBAによる利下げを受けて下落

RBAは低インフレを警戒して利下げを実施

 豪ドルの対ドル相場は1月以降、鉄鉱石等の商品市況反発や米利上げ観測後退等を背景に堅調な推移が続いてきましたが、4月下旬に発表された1-3月期の消費者物価指数が予想を大幅に下回ると早期利下げ観測が台頭して反落しました。さらに5/3の豪州準備銀行(RBA)金融政策理事会で実際に利下げが実施され、インフレ見通しが引き下げられると、追加利下げへの思惑から一段安となり、対米ドルでは一時3月上旬以来となる0.71ドル台後半、対円では2月安値に迫る78円台前半まで値を下げました。

RBAは低インフレが続く可能性を警戒、指標次第で追加利下げの可能性にも留意が必要

 4/27に発表された今年1-3月期の消費者物価指数は前年比+1.3%と予想(同+1.7%)を下回り、コア指標である基調インフレ率は同+1.55%とRBAのインフレ目標レンジ(前年比+2%~+3%)を大幅に下回るとともに、史上最低の伸び率となりました。これを受けてRBAは5/3の金融政策理事会で昨年5月以来1年ぶりとなる利下げを実施、政策金利は過去最低の1.75%となりました。これまでもRBAはインフレ率の低さに言及してきましたたが、今回のCPIの結果を受けて、今後も予想以上に低インフレが続く可能性を警戒し始めた可能性があります。実際、5月の金融政策報告(SMP)では非貿易財価格の抑制要因として①予想外に低い労働コストの伸び、②小売業の価格競争の激化、③不動産賃貸・建設市場の鈍化、④燃料代等の企業の投入コスト低下等を挙げ、今後のインフレ率の見通しを大幅に引き下げているのです。このため、指標次第では追加利下げの可能性が否定できない状況となっており、インフレの動向に注意が必要な場面が続くでしょう。

豪州経済への前向きの姿勢は変わらないが、豪ドルは調整を余儀なくされる状況に

 一方、RBAは豪州経済の先行きについては、「16年も成長が続くが、より緩やかなペースになる可能性が高い」等として、やや慎重な見方を示しつつも、おおむね前向きな姿勢を維持しています。低金利や豪ドル安の効果等から、住宅市場の底堅い伸びや資源輸出、サービス純輸出の増加がけん引役となり、成長率は徐々にトレンドを上回るペースに加速していくとの見方は変わっていません。また、為替相場についても「豪ドル高が必要な経済的な調整を複雑にしてしまうおそれがある」としたものの、かつてのような強いけん制は控えられています。
 
 豪ドル相場は、市場の関心がインフレ動向にシフトする中で調整を余儀なくされており、当面は追加利下げの有無を巡って下値探りの場面が続くとみられます。ただ、インフレ指標に持ち直しの動きがみられてくれば、徐々に底堅い動きに転じてくると思います。

NZドル相場は豪ドル安や米ドル高を背景に値を下げる展開に  

NZドルは金利先安観測から上値の重い動き

 NZドルの対ドル相場は、4/28のNZ準備銀行(RBNZ)金融政策理事会で金利が据え置かれたことから反発となったものの、RBAによる予想外の利下げを受けた豪ドル安につれ安となったことや、米利上げ先送り観測の一服による米ドル高等を背景に反落、対ドルでは0.67ドル台前半、対円では一時72円台半ばまで値を下げる場面がありました。

NZ準備銀行(RBNZ)は金利を据え置いたが、引き続き追加利下げの可能性を示唆、NZドルは上値の重い推移が続く

 4/28の金融政策理事会の声明では、国内のリスクとして引き続き酪農セクターの弱さやインフレ期待の低下等を挙げました。また、「原油価格の下落効果一巡や需給圧力の高まりとともに、インフレ率は上昇する」と予想しつつも、「さらなる金融緩和が必要となるかもしれない」として追加利下げの可能性を示唆しています。一方、オークランドの住宅価格が再び上昇している可能性に言及、住宅市場の過熱への警戒感を示しました。実際、5/11に発表された金融安定報告書では、住宅価格の再上昇に懸念を示しましたが、一段の規制について踏み込んだ記述が見られなかったことから、市場の追加利下げ観測はやや後退しています。
 もっとも、引き続き期待インフレ率の低さに対する警戒感は根強く残っており、RBNZによる利下げ観測は今後もくすぶる公算が大きいことから、NZドル相場も上値の重い推移が継続するでしょう。

オセアニア図1出所:公表資料より作成

オセアニア図2出所:公表資料より作成

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