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お金とのかかわり方が変わる今、上手にお金と付き合うコツとは。FP風呂内亜矢さん

『その節約はキケンです-お金が貯まる人はなぜ家計簿をつけないのか』や『超ど素人がはじめる資産運用』など、数多くの初心者向けの金融系書籍を発表し、テレビや雑誌など多岐にわたるメディアで活躍中のファイナンシャルプランナー・風呂内亜矢さん。風呂内さんの書籍やコラムにはお金との関わり方についてご説明されているものも多くあります。お金とはどのようにかかわるのがベストなのでしょうか。風呂内さんにお聞きしてみましょう。

お金との上手なかかわり方とは?

──お金と上手にかかわると、お金に操られなくなると聞きますが、お金のかかわり方で大事なポイントを教えていただけますか。

風呂内さん:お金の話を日頃からするということですね。私は26歳の頃にマンションを購入したのですが、それをきっかけに同僚や周囲の人のお金の相談や質問をするようになりました。でも、こちらが真面目に聞いているのに半笑いで真面目に答えてくれない人たちもいたんです。

後にわかったのですが、それは「お金の話をすることが後ろめたい」と考えている人たちだったんですね。今の若い人には少ないかもしれませんが、30代後半くらいの方はお金の話をするのが格好悪いと思っている人がかなり多いように感じます。

なかには「僕はこういうふうに考えてここを選んだよ」って真剣に返してくれる人もいて、そういう人とはディスカッションできるので情報交換もできるんですね。けど、半笑いの人はそこで話が終わってしまいますよね。だから、お金の話が出たときにフラットに会話ができるっていうのは、お金の情報や理解を深めるということで有効だと思います。

──お金の話題は下世話だと感じる人がまだまだ多いということでしょうか?

風呂内さん:お金の話というのは難しくて、これだけ貯めているという結果の方にフォーカスすると、上手く貯蓄できた場合、単に羨ましがられたり、やっかまれたりしますので不快な思いをしてしまうんですね。ですから「あなたは、どういうこだわりでこの貯蓄方法を試すようになったのか?」など、プロセスに重きを置いて話を深め合うと良いと思います。

または、良い情報を教えてあげるのも良いと思います。私の場合ですが、ある日、いいクレジットカードの情報を聞いたので友人に教えたところ、その友人がさらに良い情報を教えてくれたんです。「○○ホテルのカードは、10泊すると1泊無料になるんだよ。レディースカードは5泊で1泊無料らしいですよ」と。

最初は私が先にいいカードを見つけて教えてあげたことが、最終的にはもっといいカードを教えてもらって得したわけです。相手がいい人ならそれを上回る良い情報を返してあげようとして教えてくれたりするんですよね。そうすると、私もそれをもとにもっといい情報を探すので、相乗効果でどんどんいい情報を得られるようになるんですよ。

ところが、半笑いの人はそういうお金の情報には興味がないということなので「この人は興味なさそうなので、お得な話があるけど話題にするのはやめとこう」ってなってしまうんです。だから、お金の話を日常会話で話せるというのは大事かなと思いますね。

ですから、お金と上手にかかわっていきたいと思うならば、情報のわらしべ長者を目指すと良いですね。お金の話がOKな人かどうかは見た目ではわかりませんから、自分からシグナルを出して積極的に情報を交換しましょう。

「見えないお金」と「見える化」すべきお金の違いとは?

──お金の考え方のひとつに「見えない場所に置くと良いお金」と、「見える化した方が良いお金」というものがありますが、具体的にはどうすればよいのでしょうか?

風呂内さん:見えない場所に置いた方が良いのは貯蓄するお金ですね。人というのは目の前にあるものには、つい手を伸ばしたくなるのが通常の考え方ですから。貯蓄用口座を分けて作る、財形貯蓄やiDeCo、NISAなどの制度を利用して、お金を見えない場所に置く仕組みを作ると貯蓄のスピードが上がります。

そして、見える化した方が良いお金は、今使っているお金=支出です。見える化と聞くと家計簿を連想する方もいらっしゃるかもしれませんが、実は通帳をじっと見るだけで、家計簿をつける必要はなくなります。クレジットカード派の人はカード明細を見るだけでも効果があります。

きちんと見るだけでも、自分がどこでいくら使っているのか把握できるようになりますから。たとえば、「私は普段からこのお店におおむねいくら使っている」「家賃って高いんだな」と考えるようになり、自然とその後の行動が変わっていきます。

──支出に関しての把握はおおざっぱでいいんですか?

風呂内さん:基本的には貯まっているお金を大事にした方が良くて、支出の内訳というのは意外と大事ではないと私は考えています。貯蓄が何割ペースでできているかという点が重要なんです。

──理想の貯蓄配分は、どのようにお考えですか?

風呂内さん:夫婦2人子どもなしの家庭の場合は、手取りの20~30%。子供がいてお金がかかる時期でしたら、手取りの5%ほど貯蓄できればいいと考えています。この配分を気にしていれば自然とお金が貯まっていくようになります。

でも、強いていうならお金を使うときに、「この出て行ったお金は、繰り返し恩恵をくれるのかな?」と考えるとよりいいですね。たとえば、飲み会ひとつとっても、ただただお酒を飲んで愚痴をいってるだけであれば行く価値を感じませんね。でも、気は進まないけどこの飲み会に行くことで、関係性が良くなるかもしれないと思うと、同じ場にいて同じ6,000円を使うのに、その6,000円の価値が変わります。

資格の取得もそうですね。そのスキルが仕事上で役に立って繰り返し使えるのなら取得した方が良いですし、どうやって工夫してもどうにも役に立ちそうがない、この場で終わるお金になりそうだと思うのでしたら、なるべく避けたい出費ですね。

お金の使い方で最も好ましいのは、「繰り返し効果を発揮しそうなもの」に支払うということなのです。

──それが無駄遣いと自分への投資の大きな違いでしょうか?

風呂内さん:すべての消費に対してその判断をするのは難しいのですが、判断に迷ったときには「このお金はもう一度戻ってくるのか?」と考えるといいですね。それがお金に対する考え方の一つとして覚えておくと。

実際は難しいですから、時々でもいいですよ。無駄な出費が増えていると気づいたときに、このお金を支払う意味があるのかなとちょっと考えるだけで、お金に対する考えは変わったことになりますから。だって、どんなに無駄な飲み会だと思っても、仕事上、どうしても欠席できない場合もありますよね。だったらその6,000円を回収するためにはどうすべきなのか考えればいいんです。いかに有効に使うかを考えても、いやいや払っても同じ6,000円ですが、なるべく有効にと考えればそこでいい人間関係を作りやすくなりますから。

とにかく支出に関しては、金額よりも考え方が大事です。自分が満足したい、納得したいということに使いましょう。

今後は、キャッシュレス生活が、貯まる体質を作るための王道になる

──浪費に関して、風呂内さんご自身が気をつけていることがありますか?

風呂内さん:浪費を防止する意味も含めて、私自身は完全にキャッシュレスの生活を送っています。今年は、はじめてお賽銭を電子マネ―で払ってみました。興味と取材を兼ねて。お賽銭や自販機などレシートが出ない出費は記録できないですよね。でも、電子化すればきちんと履歴が残るんですよ。そこが電子決済のいい効果なんです。

現在のところは、電子決済の方が現金よりも使いすぎるという傾向があるので、みんなクレジットカードや電子マネ―を使うことを嫌う傾向があるのですが、今後はそうではない世界が広がりそうだと思います。

──それはなぜですか?

風呂内さん:今後、オリンピックに向けて、キャッシュレスに対応する店舗が増えていくことが発表されています。ですから、これからは現金でやりくりする場合と、カードや電子マネーで支払う際の行動のスタンスを変えないということが、貯蓄ができる体質か否かを決めていくと考えられます。

その根拠のひとつにアメリカの脳科学者が行った研究があります。データによるとカード決済の方が現金より、支出が23%アップするといわれています。さらに、少し前に行ったECサイトの勉強会で、電子決済を導入した店舗の客単価が23%増しになったと聞いて、同じ数字だったので驚いたのですが、それによっておおむねその数字は正しいと考えるようになりました。

ところが、その一方で、きちんとお金の管理をして、計画的に貯蓄をしている人がキャッシュレスの生活を徹底している例も知っています。ですから、貯蓄の超初心者は現金でお金を管理する方がお金の節制ができるけれど、突き詰めていくとキャッシュレスにして行動を変えないということが、最終的に目指すべき所なのではないかなと思っています。

──小さなお金でもしっかり管理することが大事ということでしょうか?

風呂内さん:それもありますが、払い方が変わったからといってテンションが変わっては困るということですね。

女性誌のお金に関するお悩みのアンケートを集計した際「私はカードを使うからお金が貯まらない」というものが上位にランクインしました。しかし、本当はカードを使うからお金が貯まらないのではなく、使っているからお金が貯まらないんです。

ですから、カードと現金で行動が変わってしまうことが問題だということに気づかなければ、今後、世の中がキャッシュレスになるにしたがって、資産を作るのは難しくなるでしょうね。

──そのようにお金に対するかかわり方が変化するなか、お金が貯まる仕組みというのはどのように作っていけばよいでしょうか?

風呂内さん:気をつけていてもどうしても無駄な出費が増えてしまう人は、決済の前に3回自分に問いかける習慣をつけるといいですよ。「本当にそれが欲しいのか?」「ないと本当に困るのか?」「使いきれるのか?」と何回も自分に聞くと浪費の抑制になりますよ。

私自身はインターネットショッピングを良く利用するのですが、気に入ったものがあるとどんどんお気に入りに登録していくんです。でも、そのなかから実際に買うのは20分の1程度。3回聞いても欲しいものしか買わないという習慣を徹底すれば、一生涯を通じてみたときに大きな差がでてきますよ。

もちろん目に見える出費は見直しをして、大事にすべきことではありますが、今後は手もとのお金ではなく、口座から引き落されるお金から先に見直すと良いでしょう。家賃、通信費、保険、など一度見直したらずっと節制の効果が続く固定費がその代表です。

年金、保険、NHK受信料など月払いではなく年払いにするとお得になるものは、積極的に年払いに切り替えましょう。そして、毎月定期的に口座の履歴をじっと見る。これが、今後はお金が貯まる人の習慣になっていくといえるでしょう。

風呂内 亜矢さん(ふろうち・あや)

ファイナンシャルプランナー
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
26歳独身の時、貯金80万円しかもたずマンションを衝動買いしたことをきっかけに貯蓄、投資、お金の勉強を始める。現在は夫婦で4部屋のマンションを所有し、賃料収入も得ている。2013年独立。身近で親しみやすいお金の解説に定評があり、新聞、テレビ、ラジオなどで、情報発信を行っている。

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