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英国民投票をにらんで神経質な展開が続く

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(写真=PIXTA)

【先週のレビュー】英国のEU離脱懸念や日銀の追加緩和見送りに円独歩高の展開

 先週の為替市場は、英国のEU離脱(Brexit)懸念の高まりによるリスク回避や、日銀金融政策決定会合での追加緩和見送りを受けて円買いが加速、主要通貨の中で円が独歩高となりました。ドル円相場は直近安値を割り込み一時103円台まで急落しました。

 ドル円は前週末以降、英国のEU離脱支持が残留支持を上回るとの世論調査の結果が相次いだことで、週初から円買い優勢の動きとなりました。6月14日(火)には米5月の小売売上高等の経済指標が予想を上回ったことで、翌日にかけて106円台前半に値を戻しましたが、6月15日(水)の米連邦公開市場委員会(FOMC)で予想通り政策金利が据え置かれる一方、FOMCメンバーの金利見通しで年内1回の利上げを予想する人数が増えたこと等がハト派的と評価されるとドル売りが優勢となりました。
 
 6月16日(木)には日銀金融政策決定会合で追加緩和が見送られると、英国のEU離脱懸念ともあいまって株安・円高が加速、一時103.56円と2014年8月22日以来の水準まで下落しました。その後は英国でEU残留支持派の下院議員が銃撃されて死亡との報を受け、残留支持が高まるとの思惑に株価が上昇、104円台に値を戻す動きとなっています。

【今週の見通し】英国民投票の行方をにらんで神経質な展開、結果次第で振れの激しい動きに

 今週のドル円相場は、6月23日実施予定の英国の国民投票の行方をにらんで、引き続き神経質な展開が予想されます。日本時間の6月24日昼ごろに判明するとみられる開票結果次第では、上下に振れの激しい動きになる可能性に留意が必要となるでしょう。

 これまでの世論調査では、残留支持が離脱支持を小幅ながら上回る状況が続き、基本的にはEU残留をメインシナリオとする向きが多かったようです。しかし、先々週あたりから離脱支持が残留支持を上回る状況となるなかで、にわかに経済的な悪影響への懸念がクローズアップされ始めており、市場も想定外のリスク実現への対応に動き始めています。このため、世界的に株価が下落しボラティリティは上昇、先進国の金利は低下し、為替市場では円等の逃避通貨が買われる動きがみられます。

 先週、残留支持派の英下院議員が殺害されたことで、残留支持が優勢になるとの思惑が強まりましたが、投票日までは予断を許さない状況が続くでしょう。仮に離脱となれば、①英景気悪化懸念から英国を含む欧州株が下落し、ポンドやユーロも下落、②リスク回避が世界的に広がる中で、主要国の株式市場が下落、商品市況も下落し、ドル円相場は1ドル=100円程度まで下落する可能性があります。

 また、先週の米FOMCではメンバーの金利見通しで年内に1回の利上げを予想する向きが前回3月の1人から6人に増加、来年以降の中央値も下方修正されました。
 
 イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は7月利上げを否定しませんでしたが、労働・消費関連指標の確認が必要、英国のEU離脱を不透明要素の1つとしたこともあり、早期利上げのハードルが上がった感は否めません。実際、金利先物市場における7月FOMCでの利上げ織り込み度は足元4%程度まで低下しています。
 
 いずれにせよ、英国の国民投票の行方が混とんとするなか、今後も世論調査の結果に一喜一憂する場面が続くでしょう。仮に離脱支持が上昇するようでえあれば再び円買い圧力が強まる可能性が高いですが、こうした動きが強まるほど、投票後には材料出尽くしとなる公算が高まるでしょう。結果が残留ならリバウンドが大きくなる可能性にも留意が必要となります。

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