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ゴルフと相場の共通点は?― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話

「ゴルフ」

絶好のゴルフ日和となった2018年4月のフロリダ。
日米首脳が3時間かけて18ホールを回りました。
その後行われたのは日米首脳会談。
トランプ大統領は「われわれは巨額の対日赤字を抱えているので、できれば均等にしたい。
比較的短期間で何がしかのことができると信じている。
日本はすでに多数の飛行機、ジェット戦闘機と旅客機の購入を予約している。
私は金融や経済の世界が大好きだ。
おそらく最も得意としている分野であり、課題を解決できるだろう」とコメント。
安倍総理大臣は「アジア太平洋地域は世界経済をけん引する強力な成長センターだ。
日米で力を合わせて日米両国の貿易と投資を拡大していきたい。
自由で公正な枠組みをアジア太平洋地域に日米で拡大させていくことが大切だ」。
ジェット機を買えば良いだけなのでしょうか。
「金融や経済の世界が好き」というトランプ氏の言葉は気にかかるところでした。

「上がれば下がるし、下げれば上がる」。
月だって満ちれば欠けるのですらこの自然の節理やリズムを会得しなければなりません。
といってもそんなに難しいことではありません。
一つは枝葉を取り除くこと。
日々の移ろいに惑わされないこと。
今日だけを考えるからものは見えなくなります。
ゴルフだって手元だけを見ていればティーショットは曲がりますし、パターはカップに入りません。
遠くの風景を目標にすることが重要です。
パッティングの時にカップからボールに視線を移すとラインが見えるような気がします。
フツーはボールからカップへの視線。
それを逆にすることで見えないものが見えたように思えるから不思議なもの。
株だって同じでしょう。
着地から今へと視点を移せばいいのだと思います。
今から明日への視線ばかりで市場を見ますからますます見えなくなる気がするもの。
そして重要なのはフツーに考えて芯を探すこと。
地球だって太陽を中心に回転。
相場だって何か一つの芯を中心に回っている筈。
でも月が気になるから太陽の動きが見えなくなるのでしょう。
複雑に考えずに単純に考える方が良いでしょう。

「株・株・株」と「株のめり」になることは良いことかもしれません。
でもパフォーマンスを高めるためには弊害になるかも知れません。
そんな時には他の世界の格言なども覚えておくと良いでしょう。
例えば、ゴルファーに対する戒め。
「ドライバーで飛ばさない・グリーンには乗せない・カップをねらわない・カップに入れない」。
飛ばしたい、カップに入れたいというゴルファーの欲望が体を緊張感でみなぎらせ、悪い結果を招いてしまうことに対する注意書きです。
「儲けたい。この銘柄しかない」とう欲望を抑えて淡々とマーケットに対峙する方が投資成績は不思議と良くなってくるもの。
狭い視野で相場を見るのではなく大らかな気持ちで市場を眺めることが結構大切です。
ゴルフをやる方ならご理解いただけるでしょうが、力んでドライバーを振るとOBが出やすいもの。
「ゆったり大きく」は株の世界にも通じるに違いありません。
あるいは競馬の達人がパドックで馬の良否を見極める時の心構えというのもあります。
・自分をなくすこと。
・先入観や固定観念を捨てること。
・見間違っても気にしないこと。
・雑音は聞き捨てること。
・気を入れて見ること。
加えると「全体を繰り返し見よ」でしょうか。
ギャンブルチックな競馬と資本市場の権化と称される株式市場。
似て非なるものですが、結構共通点がありそうな気がします。
休みの時にゴルフをやる機会があれば思い起こしてみてください。

「高層ビルの建設は株価の先行指標?」

今世界では「高層ビル建設ラッシュ」だそうです。
高さ200メートル(およそ40階)以上の「超高層ビル」があちこちで建設中との話。
今年は世界で前年比6割増の約230棟が完成予定。
うち6割が中国だそうです。
多額な資金と長期の建設期間が必要な超高層ビルは経済の「遅行指標」の側面もあるといわれます。
「適温経済で育ったカネ余りのピークアウト現象かもしれない」との声もあります。
世界の完工棟見通しは2019年に約170棟、2020年約80棟と急変(急減)の予想です。
都市伝説みたいなものですが、高層ビルが立つと相場のピークというアノマリーもあります。
東京証券取引所の新館完成が1988年。
振り返ってみるとバブルピークの1年前でした。
ドバイタワーでドバイショック。
上海タワーも株安につながっていました。
ということは高層ビル建設ラッシュは売り方には格好の都市伝説材料かも知れません。
ただ東京スカイツリーの開業は2012年5月。リーマンショックを乗り越えてアベノミクスがスタートする約半年前でした。
日経平均株価は8,000円台、TOPIXは700ポイント台。
ひょっとすると「高層ビル完成株安アノマリー」は消滅したかも知れません。

「絶頂」

昭和バブルの日経平均株価の高値は1989年大納会の38,915円。
この前哨戦がおそらく1987年2月のNTT株の公募・売出しにともなう上場でした。
公募・売出価格119.8万円。
上場初日は買い気配で値がつかず翌日付いた初値は160万円(時価総額18.7兆円)。
それが3月4日に301万円、4月22日には318万円の高値を付けました。
公募・売出金額2兆2,145億円、195万株の公募・売出しでしたが、
公募・売出株の当選ではじめて株の味を知った層が株式市場に参入する役目を果たしたことになるでしょう。
NTTの上場時の1987年2月に19,000円台だった日経平均株価は6月には26,000円近くまで上昇。
その後38,915円に向かっていった訳です。
NTT株はその後87年11月に195万株(255万円)、
88年10月150万株(190万円)と売り出されました。
バブルが崩壊したため第4回目の売出しは98年12月の100万株(85.5万円)、
99年11月に95.2万株(166万円)、2000年11月に100万株(94.9万円)。
6回に分けて13年あまりをかけての政府持ち株が放出されたことになります。
だんだん尻すぼみになっていきましたが最初の売出しがセンセーショナルだったことは間違いありません。
アッと言う間に一攫千金、濡れ手にアワを体感できた多くの投資家さんは株式投資と不動産投資にのめりこんでいきました。

バブルが崩壊し、北海道拓殖銀行(拓銀)・山一証券が倒産し金融システムもおかしくなってから株式市場に人気が戻ったのは、後世いうところの2000年ITバブル。
起爆剤は1998年10月22日のNTTドコモの上場でした。
公募・売出総額は2兆1,255億円(時価総額8.9兆円)で東証1部時価総額の約4%と巨大だったので市場は心配モード。
しかし、公募・売出株数の2倍の申し込みがありました。
初値は公募・売出価格390万円を18%上回る460万円。
この間、日経平均株価は5日続伸というおまけまでつきました。
その後ドコモ株は翌1999年4月30日には700万円を超えました。
これをきっかけにITバブル相場が展開されることになりました。
ドコモ株も結局上場後2年足らずで株価は5倍に。
ドコモ上場時に17,000円前後だった日経平均株価は2000年4月に20,833円まで上昇。
携帯電話にITを絡めたシナリオ相場が成就した時の歴史です。
市場には株価の復活感が漂ったことは間違いありません。
残念ながら日経平均株価はその後2003年にバブル崩壊後の安値を付けに行きました。
ただ当時のPERは132倍。PBRは2.6倍でした。
PERなどの常識を無視して突出した相場ではなく、学習効果を十分に積んだ市場は、今後はおそらくバブルに走ることはない筈。
知的に冷静な展開というのが本来の学習効果なのでしょうが・・・。

櫻井 英明(さくらい えいめい)
ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長
日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。
幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。

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