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民泊事情 反対の声の理由とは

airbnb
(写真=PIXTA)

 マンションの空き部屋などを宿泊用に貸し出す「民泊」は、2008年に開設された仲介サイト「Airbnb」がその火付け役といわれ、現在、世界190以上の国・地域で利用されています。

 自分の家を貸し出したい「ホスト」が、物件の場所や写真、貸し出し料金をサイトに登録し、利用者である「ゲスト」がそれを見比べながら好みの部屋を選んで泊まるというシステムです。日本でも2015年にAirbnbコミュニティが経済活動により創出した利益は2,363億円、経済効果は5,207億円とされています(Airbnb発表)。

法律適用の判断難しく

 しかし日本における民泊の存在は、法的にグレーゾーンにあるのが現状です。

 例えば、民泊が「旅館業」に当たるかどうかという点が問題視されています。旅館業法では「人から宿泊料をもらって宿泊させる営業行為」を行えば旅館業にあたるとされており、役所へのさまざまな確認作業や保健所への許可申請などが必要となります。「営業行為」であるかどうかについては、Airbnbの物件で宿泊が継続して行われているかなどの条件を確認しなければ、その判断が難しい現状です。

 国内有数の観光地・京都市で行われた調査では、Airbnbを含む民泊募集物件が2,702件あり、そのうち、旅館業法上の許可を得ていると確認できたのは7%にあたる189件だけでした。68.4%にあたる1,847件は無許可営業の可能性が高く、市の担当者は「ワンルームマンションなど営業許可が望めない物件は、営業中止を求める」と厳しい態度で対処する考えを示しました。

根強い業界の反対

 京都市の厳しい対応の背景には、既存の旅館・ホテル業界の根強い反対があると考えられています。

 防災や防犯、衛生面などで定められた基準に従っていなければ、旅館業を経営する許可は出せないと定めているのが旅館業法です。これをクリアしていない民泊は、安全・安心面で懸念があるというのが反対派の主張です。

 また、その許可を得るための設備投資や申請手続きに必要なコストをかけている宿泊業者から見ると、その努力をしていないAirbnbは不公平に映るようです。「不公平」という面では、税金の問題もあります。物件にかかる固定資産税額が自宅と営業用で全く違うことや、宿泊業者は法人として納税する必要があるからです。

周辺住民も「ノー」

 住民側にも、民泊に「ノー」を突きつけるところが出始めています。たとえば、東京で人気の居住エリア・有明の超高層マンションの管理組合は住民のAirbnb等を利用した民泊としての貸し出しを禁止する措置をとりました。「不特定多数の人の出入りによるセキュリティ問題」のほか、ロビーやスポーツジムなどの共用施設も利用されてしまうことで、マンションのブランド価値が低下する懸念があったそうです。

 足立区の高層マンションでも、共用部の「ただ乗り」は管理費を支払っている住民が不利益を被るとして管理規約に民泊を禁止する条文を追加することになりました。

大田区の先例、そして今後

 そのような中、東京都大田区では2015年末にAirbnbなどの「民泊」を一定の条件で認める条例案が可決されました。

 条件とは、居室の床面積が25平方メートル以上であることや出入口が施錠可能であること、滞在期間が6泊7日以上であることや滞在者名簿を保管することなどで、治安悪化を懸念する周辺住民の声に応えた内容といえます。

 2020年の東京オリンピックに向けて国内の宿泊施設が不足することが予想されており、ホテルを新たに建設せずに宿泊客を増やせることはメリットといえそうです。

 しかし、この取り組みも、歓迎されているとはいいがたいのが現状です。同区の区議会議員ですら「民泊は都市計画の抜け道を与えることになる」「維持してきた町並みを悪化させる要因になる」と懸念を述べています。

 Airbnbをはじめ、民泊施設が増え続けていくのはほぼ確実といえる中、単なる「規制緩和」や「例外設定」では無秩序な利用拡大が起きてしまいます。何が「ダメ」なのかをはっきりさせておくことが、この「民泊問題」解消への第一歩となるのではないでしょうか。

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