夏以降にむけて準備を! 8月の<中村克彦のテクニカルコラム>
今、気になる相場の話題をみずほ証券の中村克彦さんにわかりやすく解説してもらうこのコラム。
連日暑い日が続いていますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。夏休み中という方もいらっしゃるかもしれませんね。相場の世界でも“夏枯れ相場”といって、市場参加者が少なくなりがちな時期でもありますが、秋の総裁選や年末相場にむけて戦略を立てておきたいところ。これからの日本株の見通しについて中村さんに聞いてみました。
この夏注目の2つの「旗」

第100回という節目を迎えた全国高等学校野球選手権大会が始まりました。全国3781校のトップに深紅の大優勝旗が贈られます。一方、2018年に入り日経平均株価はペナント型の三角もちあいを形成しつつあります。これは高値と安値が収れんしたのち、上下どちらかに大きく放れるチャートパターンです。
記録的猛暑が続く今夏は、2つの旗(甲子園と兜町)の行方に注目したいと思います。テクニカル面から今後の見通しを探ってみましょう。
―― 今月もよろしくお願いします!
三角もちあい~5回以上「もみあい商い」は縮小へ、その後の商い増大は放れの前兆
代表的なチャートパターンの1つに三角もちあいがあります。これは相場の勢いが一服したあとに高値と安値が収れんし、踊り場形成のパターンです。要するに、需給面での売り手と買い手の均衡を示しています。
―― 優勝ペナントのような三角の形!これは覚えやすいです。
三角もちあいで特に重要なのは、この形になる前の株価トレンドが継続されやすいということです。
つまり、踊り場に入る前の株価トレンド(A→B)が三角もちあい(B→G)の過程で継続され、再びトレンド(G→H)が発生します。
特徴としては、最低でも5回以上もみあうなかで商いは縮小していきますが、株価の放れと同時に商いは増大します。
また、その放れの振れ幅(G→H)は、三角もちあいでの最大振れ幅(B→C)とほぼ同じとされています。
―― チャートがこの形になったら出来高に注目!ということですね。
日経平均株価~商い増大は上放れの兆しか
では、日経平均株価を振り返ってみましょう。
北朝鮮リスクで揺れた2017年9月安値(A)を起点にすると、18年1月高値(B)で上げトレンドが一服したのち、三角もちあいのパターンをたどっています。仮に足元の動きが5波(F→G)とみなせば、5~7月の商い縮小も定石通りといえます。
また、25日線、75日線、200日線が収束しています。これは、短・中・長期の損益分岐点が22300円前後に集まり、需給のしこりはほぐれていることを示唆しています。
なお、例年8月の日本株は市場参加者の減少から夏枯れ相場ともいわれています。売買低迷から株価も伸び悩むことが少なくありません。
一方で、「出来高(売買代金)は株価に先行する」という相場格言もあります。
7月末の東証1部売買代金は3兆円前後まで膨らんできています。三角もちあいの基本はトレンドが継続されやすいパターンです。今回は上げトレンド(A→B)から始まった三角もちあい(B→G)であることから、今後は3,500円近く上放れることも想定されます。
―― 教科書通りとすれば、かなり大きな振れ幅もありうるということですね。
別の側面から見てみましょう。
その価格帯で買った投資家が、どれだけいるのかがわかる「価格帯別売買代金」です。
2018年以降の価格帯別売買代金をみると、22250~22500円がボリュームゾーン。3本の移動平均線の収束ポイントと重なり、当面の下値めどとして意識されそうです。
一方、23000~23500円は比較的少ないです。商いをともないながら同水準を駆け上がると、チャートパターンにおける三角もちあいの上放れのサインに。売り方の買い戻し等も巻き込み、さらに上げが加速することもありそうです。
なお、2017年末の日経平均株価は22764円で、18年1月こそ勢いよく上昇したものの、その後は横ばいの動きが続いています。ただ、見かたを変えれば、値幅面と日柄面から調整十分ともいえ、テクニカル面での過熱感はほぼありません。
―― さらに一段上へのぼる準備はできている…というかんじでしょうか。
今秋9月の自民党総裁選挙では、安倍首相の3選見通しが台頭しつつあります。今後、追加の景気対策や金融緩和の継続が打ち出されば、今年売り越している海外勢が見直し買いに転じることもあるでしょう。長期政権の歓迎ムードが広がり、日本株は年末にかけて息の長い上昇相場となることも。18年の日経平均株価は7年連続高となりそうだ。
―― やっぱり株高のほうが嬉しいので期待しちゃいます。
夏バテにも負けず頑張っていきましょう!今月もどうもありがとうございました!
三角もちあい(さんかくもちあい)
株価チャートが一定の値幅のなかで上下する状態を「もちあい」といいますが、その値動きがだんだん小さくなっていく状態を三角もちあいといいます。上値抵抗線と下値支持線が三角形のようになることからこのように呼ばれています。買い方と売り方の力が収れんすると相場の転換点が訪れます。
>>【連載】これからの相場をテクニカル視点で読む! 中村克彦のテクニカルコラム
毎月更新!直近の相場を、テクニカル分析を使ってわかりやすく解説!
>>基礎からわかる「テクニカル分析」入門 レッスン一覧へ
テクニカル分析をじっくりと学びたい方はこちら
【動く中村さんはこちら!】
相場のポイントを動画でも詳しく解説しています。みずほマンスリーVIEWは毎月・ストックボイスは毎週火曜日に更新されるので、投資の参考にぜひ活用してみてくださいね。
メール送付にあたってのご注意
本企画にかかる質問メールは、お金のキャンパスのスポンサーであるみずほ証券株式会社(以下「みずほ証券」といいます。)に送信されます。みずほ証券は、本企画で得たお客さまからの質問内容を今後の配信記事に反映するほか、登録された個人情報を、ダイレクトメールの発送等、金融商品やサービス等に関する各種ご提案やご案内のために利用することがあります。詳細は、みずほ証券「お客さまの個人情報の取り扱いに係る利用目的」にてご確認ください。
【おすすめ記事】
・日経平均株価とTOPIXの違い
・ジブリが放映されると株価が動く? ジブリ世代の株式投資術
・証券会社の歴史とビジネス
・テクニカル分析とファンダメンタルズ分析の違い
・株式相場と目利き― 兜町カタリスト櫻井英明のここだけの株話