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連立与党が勝利、経済対策の策定へ ~参議院選挙の結果について

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(写真=PIXTA)

・ 7月10日に投開票が行われた参議院選挙は、自民党、公明党の連立与党で安倍首相が勝敗ラインとしていた改選議席の過半数を上回る70議席を獲得し、非改選議席をあわせた総議席数でも過半数を上回る結果となりました。

・ さらに、憲法改正に前向きな勢力の議席数は憲法改正の国会発議に必要となる総議員の3分の2を超えました。もっとも、ただちに憲法改正が実現するとは考えづらく、当面は経済政策優先の政権運営が維持されるとみられています。

・ 安倍首相は積極的な財政政策で景気の下支えを図る見通しです。こうした動きにあわせて月末の日銀の金融政策決定会合で追加緩和が決定されるかどうかも注目されています。

改憲勢力で総議員の3分の2を確保も、当面は経済優先の政策運営か

 7月10日に投開票が行われた参議院選挙は、自民党、公明党の連立与党で、安倍首相が勝敗ラインとしていた改選議席(242議席中121議席)の過半数61議席を上回る70議席を獲得し、非改選議席をあわせた総議席数でも過半数を上回る結果となりました(連立与党の非改選議席は76議席)。

 さらに、今回の選挙の結果、連立与党に憲法改正に前向きな、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党や無所属議員の議席数を加えると、憲法改正の国会発議に必要な総議員の3分の2(162議席)を超えました。すでに連立与党は衆議院でも総議員の3分の2を獲得しているため、憲法改正の発議が視野に入った状況といえます。このため、今後、安倍首相が悲願とされる憲法改正に注力することで、経済政策が後回しになってしまうのではないかという懸念もあります。もっとも、憲法改正について、国民レベルでの動きが盛り上がっているとはいえないこと、改憲勢力のなかでも各論では考え方に違いがあること等から、ただちに実現するとも考えづらい状況です。むしろ、低迷が長引く経済情勢をふまえると、当面は政権として、引き続き経済政策に注力する可能性が高いと考えられます。実際、安倍首相は7月11日の会見で、今回の参院選の結果について、「アベノミクスを一層加速せよと、国民から力強い信任をいただいた」として、経済優先の政策運営を継続する考えを示しています。

2【OC】連立与党が勝利_図1出所:各種公表資料より作成

 経済政策に関して、安倍首相は会見で、12日に石原経済財政・再生相に経済対策の準備に入るよう指示すると述べました。8月初旬にも対策の具体的な内容をとりまとめ、秋の臨時国会に裏付けとなる2016年度第2次補正予算案を提出するとみられています。具体的な内容や金額規模がまとまっていくのはこれからでありますが、首相の会見によると、対策の柱は財政投融資等も活用したインフラ整備、復興支援・防災対策、奨学金の拡充、働き方改革等になる見通しです。金額規模に関しては、財政投融資等を含めた事業規模ベースで10兆円程度が1つの目安とみられています。

 一部では、7月28日~29日に開催される金融政策決定会合で日銀は追加緩和を決定すると予想されているものの、金融政策だけでは景気の押し上げに限界があるとも考えられています。一方、タイミング的に財政・金融政策が歩調をあわせる形となれば、金融市場では好感される可能性があるため、その動向が注目されています。政治的な基盤が安定しているため、積極的な政策を打ち出しやすいこともプラスであると考えられます。もっとも、財政・金融政策はあくまで改革のための時間を買う政策であって、持続的な成長のためには成長戦略の実行が不可欠です。アベノミクスに対する期待が薄れつつあるなか、経済対策で規制緩和や労働市場改革といった構造改革に関連する施策がどの程度打ち出されるかといった点も、今後を考えるうえでのポイントとなるでしょう。

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