Home / マーケットを知る / Brexitを背景に、ドル円は1ドル=100円割れをトライ中

Brexitを背景に、ドル円は1ドル=100円割れをトライ中

Brexit
(写真=PIXTA)

【先週(7月4日~8日)のレビュー】米指標は強い内容が多かったが、リスク回避を理由に円の堅調さが目立つ展開

 先週の為替相場は、円が全面高となりました。英国の欧州連合(EU)離脱決定(Brexit)に端を発したリスクオフムードを理由として円買いの流れが強まり、これに投機筋の1ドル=100円割れを狙う動きが便乗している構図です。目先、ドル円相場の100円割れを警戒する必要がありますが、100円割れ水準は底値圏とみられています。

 6月23日の英国民投票を受けて、翌24日にかけて急速に高まったリスク回避ムードは、その翌週(6月27日~7月1日)には落ち着きを取り戻すかの動きをみせましたが、先週(7月4日~7月8日)には改めてリスクを意識する動きとなりました。英国の複数の不動産ファンドが解約停止に動いたほか、イタリアの大手銀行の不良債権問題等が材料視されました。米6月雇用統計をはじめ、発表された米重要指標は強い内容が多かったのですが、リスク回避を理由に円の堅調さが目立つ動きとなりました。1ドル=100円という節目割れを狙う投機的なフローも加わったと思われ、結果、円は全面高となりました。

 ユーロも上値が重い動きとなりました。上記イタリアの銀行の不良債権問題に加え、米指標の良好な内容もドル買いからのユーロ売り材料となりました。対ドルで1ユーロ=1.100ドルの節目を巡る攻防となっています。

 また、Brexitにともなう英国経済への不透明感が改めて意識されるなか、英ポンドの売りが目立っています。ポンド相場は対ドルでは約31年ぶりの安値、対円では2012年以来の1ポンド=128円台をつける場面がみられました。

【今週の見通し】比較的手掛かり材料が多い

 今週は比較的手掛かり材料が多いです。本邦サイドでは週末に行われた参院選の結果の消化に加え、バーナンキ前米連邦準備理事会(FRB)議長の来日が予定されています。米国ではGDPの約7割を占める消費関連指標(7月15日:6月小売売上高)やFRBの2つの責務(デュアルマンデート)の1つである物価指標(7月15日:6月消費者物価指数)に注目が集まります。また、同じく7月15日には中国の6月鉱工業生産や同小売売上高、4-6月期実質GDP成長率等も発表されます。さらに注目されるのが13~14日開催の英中銀金融政策委員会です。前述の通り、Brexitに絡んだリスク回避姿勢がくすぶるなかで、英中銀が自国経済をどう評価し、どう行動するかへの関心が高まっています。すでに銀行規制強化の凍結を発表しており、追加緩和は8月との発言も聞かれていますが、市場の追加緩和期待は高いようです。

トレンドは円高方向を示唆、1ドル=100円割れを警戒

 Brexitに対する懸念は依然根強い状況です。先週は「英国不動産市況の悪化からファンドが解約停止に踏み切り」「イタリアの銀行が不良債権問題に苦しんでいる」状況が嫌気されました。サブプライム問題がこれを組み込んだファンドの解約停止(パリバショック)から表面化し、その後の金融機関の破たん(リーマンショック)につながった経緯を彷彿とさせたのかもしれません。ただ、当時と比較して金融機関のリスクに対する備えや規制はかなり強化されていることや、Brexitは突然のバブル崩壊ではなく、国民投票という予定に沿ったイベントであることから、金融・政治当局による備えもあること、等から基本的に「Brexitは第2のリーマンショックではない」と考えられており、徐々に市場の動揺も沈静化に向かうと考えられています。

 ただ、ドル円のトレンドは明確に下向き(円高ドル安方向)の展開になりました。7月1日から7月8日まで毎日高値を切り下げる動きを見せています。この流れに投機筋が便乗し、節目である1ドル=100円割れをトライする流れとなっているようです。目先は上記Brexitリスクもくすぶるなか、1ドル=100円割れを警戒する必要があります。

 1ドル=100円割れ水準はセリングクライマックス・安値形成局面とみられています。ポジションの積み上がりやこれまでの値幅に対する過熱感、介入警戒感や過度のリスク回避姿勢の後退等により、中長期的な視点からは100円割れ水準の滞空時間は、あったとしても短期にとどまると考えられています。

【関連記事】
そもそも「株」ってなんだ? 世の中を豊かにした人間の英知 「株・株式会社」
「円安と円高」についてちゃんと説明できますか? 外貨投資のリターンとリスクとは
金融サービスを変えるフィンテック
大手製造業の社内体制変革に注目――GE、シーメンス、日立
中国不動産、2016年も政府の支援策が続く見通し