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新興国は徐々に最悪期を脱する動きも 中国・ブラジル・インドほか

中国は構造改革を進めつつも安定成長を目指す方針、商品市況は反発

 2016年の新興国経済は、国際通貨基金(IMF)予想(16年4月時点)では前年比+4.1%と15年の同+4.0%から伸びが拡大しています。しかし、10年平均成長率(前年比+5.8%)は下回るとみられます。この理由としては、中国の経済成長率が鈍化してきていることが大きいと考えられます。また、中国の資源需要の鈍化や商品市況が下落していることから、資源国の景気や財政悪化が目立ちつつあることも影響しているでしょう。

 今後についてですが、中国では全人代が3月16日に閉幕しました。鉄鋼や石炭部門の国有企業再編など、供給サイドの改革が始まるでしょう。輸出の悪化に加えて、改革の推進によってどの程度景気が悪くなりそうかを見極めながら、景気支援を図ることになりそうです。積極財政が強化され、インフラ投資や雇用安定などが支援されます。投機的資金への監視強化や為替相場への介入によって、人民元の下落傾向が弱まっていますが、預金準備率引き下げなど、リフレ政策が実施されることになるでしょう。

 ただし過大な期待は禁物です。潜在成長率が+6%台に低下するなか、金融リスク防止等を図る必要があるからです。ただ、中国の景気対策への期待や産油国の生産調整に向けた動きにより商品市況が安定することで、資源国の景気の悪化傾向に徐々に歯止めがかかることが期待されています。

外貨準備増や変動相場制の導入で外的ショックに対する余裕が増した

 先進国では、日本や欧州で金融緩和的な環境が続くとみられます。米国の利上げについては、景気動向や内外金融市場の動きに配慮して、より慎重なペースになるとみられます。

 当面、先進国の低金利環境が続き、新興国の海外からの資金調達が大きく悪化する可能性は低そうです。加えて、アジアを中心に、外貨準備が豊富で経常収支が黒字の国が多いため、変動為替相場制のもと、外的ショックに対する余裕も増したといえるでしょう。

 以上をふまえると、新興国経済はロシアやブラジルなどの資源国を中心に、最悪期を脱する動きが見込まれます。

 リスクとしては、中国人民元安が挙げられます。中国は人民元を安定させる考えを示していますが、輸出競争力の低下や外貨準備の減少を受けて人民元安を再び容認するならば、市場の反応をしっかりと見極めた対応がとれるかがカギになります。

 その地ならしに失敗すれば、金融市場がまた大きく変動するかもしれません。また、原油の生産調整が進まず原油価格が急落するような場面が生じれば、資源国の景気が悪化する可能性があるため要注意です。さらに、米国の利上げペースが想定よりも早まる場合には、新興国に投じられていた資金が米国に流出する可能性が高まりますから、留意しておく必要があります。

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